ありがとうございましたv
励みになります。
以下過去のssで、すみませんが、感謝の気持ちを込めて。

Some Day My Satan Will

 5月に入ったある日。世間は大いに賑わいを見せた。
そんな喧騒とは裏腹に。プレハブ校舎屋上で佇むポニーテールの少女が一人。
誰かがゆっくりとした足取りで、階段を上って来る音を聞きながらも、
その目は真っ直ぐと、一点を見つめていた。
飄々とした足取り近づいて来たかの人物は、
彼女の毅然とした態度を見て、緩やかに口元に笑みを浮かべ
だが、すぐに表情を引き締めると、顔つきとは対照的な態度で、
誰かがお昼を食べるのに人数分足りないからと置いていった、
飲み物の木箱をひっくり返して作った、椅子の上にゆるやかに腰をかけた。
ぎしりと音を立ててきしんだ木箱に眉を潜めつつ、
まだ一点を見据えたまま、動かない少女に声をかけた。
「何を待ってるんだい?芝村のお姫さんは?」
のんびりとだが何もかも見抜いているような、
それでいて、おどけたような響きを持った低い声が、舞に答えを求めている。
「待っているだと?」
ポニーテールが翻り、夕日の朱と茶色い瞳が鋭さを増しながら、紫色の瞳を捕えた。
一瞬、まぶしそうに細めた紫の瞳は怒りと、哀しみをたたえた色を映し出す。
「そうだ。その瞳。お前ら一族は、みんなその瞳でものを見る。
楽観と自信と、絶望の中の希望を見る目。嫌な目だ。」
「絶望も何も無い。そこにあるものを、そこに現われる者を待つ瞳。
かわいくないねえ。お姫様が王子様を信じて待つ瞳じゃない。」
どこか吐き捨てるように言い放つ男に、舞はふと目を細め、慈愛の表情を浮かべた。
「ふん、我らにも御伽噺がある。…瀬戸口、そなた達が信じる御伽噺とは違うがな。
確かに私は、いや、我らは待っていた。
だが、ただ待つのはやめた。
ただの人であることをやめ、いつか現われる者のために、力を振るう為。その為に、
ただの人であることを放棄したのだ。それが、我らの御伽噺だ。
そしてその者が現われた時。それこそが、世界の選択だ」
凛々しい瞳はよきゆめ、未来を待つ瞳。
毅然とした態度は、白馬に乗った王子様を迎えに行く行動力。
「王子様を待ってるだけじゃなくて。
王子様と手に手をとって、戦うお姫様と来たか。ロマンチストじゃないねえ。」
瀬戸口はあきれたように髪をかきあげた。陽に透けてブラウンの髪が金色に光る。
先ほどまでの絶望を含んだ色は、瞳から消えつつある。
…それが芝村なのか。それともこの姫さん特有のものなのか。
そんな事はどうでもいい。どうでもいい事で。
カンカンカンカン、元気よく階段を上がってくる足音に
はじめて舞は、はっとして、顔を赤らめた。
足音だけで判るかい、まあこのギャップが面白いと言えば面白いねえ。
すぐに近づいてくるであろう、その人物の方へ体を向ける。

夜明けが来た事を告げる足音。

「舞こんなとこにいたの?…あれ瀬戸口君…。」
足を組んで少しかがむようなかっこうで、ほお杖付いた瀬戸口が、片手をあげて見せる。
その近くで、舞が少し顔を赤らめて、ぼそぼそと何事かを呟いた。
少し癖のある髪を揺らして走って来た少年は、
小首をかしげてその青い瞳を、
瀬戸口と舞と交互に向けたあと、腕を組んだ。
「…2人っきりで何してたのさ?」
舞と瀬戸口はズッコケタ。
「たたたたわけっ!な、なな何を想像したのだ、貴様は!」
えー?と口元に笑みを浮かべながら、速水は舞に近づき、いきなり抱き寄せた。
「なななんっな!」
「はあ、だってようやく舞に会えたと思ってさ。」
「おいおい、俺がいない時にしてくれよ、そういうことは。一人身にゃあ目の毒だ。」
肩を竦めて立ち上がった瀬戸口に、舞を抱きしめたまま、速水は笑った。
「早くどちらかに決めればいいんだよ。僕は舞一筋だけどね。」
そのセリフには、眉を少しだけ上げて見せ。両手を挙げる。
背格好の変わらない仲良い恋人達をみて、心の中で愚痴る。
…この様子なら、爺が言うまでもないが。老婆心と言う奴だ。
…おっさんよりは充分若いけどな。
どこかで大きな猫が妙なくしゃみをしていた。

「…いいか?お前さんら、忘れるなよ。ラブ、だ。」






この日5人目の絢爛舞踏受賞者が、熊本に誕生した。
その後のことはわからない、が。
お姫様が待っていた王子様は。絢爛豪華たる光輝をもって現われた。
魔王にあらず。HEROとして。
手に手をとって未来への階段を駆け上がる為。
運命に打ち勝つ為。
彼女の御伽噺のタイトルは。

いつか、王子様が。(お姫様が)。
―――その答えはYESである。




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