メディックはひどく不機嫌だった。
先日受領し無事に完遂された、とあるクエストが原因である。
『レベル30以上のパラディンに会いたい』
要求自体は可愛いものだ。彼らのギルドには元々パラディンが居るし、彼女は第一線で剣(と、盾)を振るっている。
樹海探索を続けていれば、レベルはおのずと上がるもので、他のクエストのように不条理な苦労をさせられることもなかった。
しかしメディックは、依頼人の病弱な少年が気に食わないというのだ。
「あの子の依頼、なんかおかしいと思わない?」
「何が?」
問いかけられて、ソードマンは首を傾げた。
世界樹の迷宮に挑む冒険者に会いたい。その風格を肌で感じ、冒険譚を聞いてみたい。
自分自身の子供時代と照らし合わせてみれば、気持ちは分かり過ぎるくらいに分かる。
「子供らしくて普通の頼みごとだと思うけどな」
「それだよ、普通過ぎる。本当に死期の近い少年なら、あんな依頼は出さない。
死にたくないなら、『レベル50以上のメディックをお願いします』の方が確実じゃないか」
「あ」
そういえばそうだ。盲点だった。
「ま、もらうものはもらってるから、依頼人の事情なんかどうでもいいんだけど」
そんなことを言う割には、メディックの表情はちっとも晴れていない。
■高潔な聖騎士に憧れて…/拍手ありがとうございました!■
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