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拍手してくれた貴方のためのお礼その36(09/12/07) 「今まで書いた事の無いポケモンTFを書いてみるテスト3-1」 ずっと”普通”にあこがれていた。 普通に友達と遊んだり、普通に学校通ったり、普通に恋したり。 そして、普通に結婚したかった。 「マリア、どうしたの?顔色が優れないみたいだけど」 私が夜風に当たっていると、横から一人の少年が声をかけてきた。 煌びやかな服に身を包み、気品を感じさせる振る舞いを見せる彼が、本当に心配をしている表情で私のことを見つめている。 「リック…何でもないの。ただ、ちょっと」 「調子が優れないのなら、無理する必要は無いと思うよ」 「一応私も主役だし、抜けるわけには」 「でも、主役だからこそ倒れたりしたらみんな心配しちゃうだろ?仮にも、この国の大事な”お姫様”なんだから」 「ん、それはわかってるつもり。わかってるから、ちょっとぐらいは無理するの」 「いや、まぁ、いいんだけどさ」 少年、リックは軽く頭を掻きながら、口をとがらせた。 そしてゆっくりともう一方の手を私に差し伸べた。 「それじゃあ、行こうか。”お姫様”」 「…うん。わかってる。”王子様”」 私が、彼の差し伸べた手をぎゅっと握ると、2人揃って歩き始める。 お互い、手をつないでいるのと逆の手で、それぞれ冠とティアラをすっと直す。 しばらくすると周りでにぎわい騒いでいた大人たちから一斉に歓声が響いた。 私たちの門出を祝福する、心からの歓声が。 でも、どれだけの大人たちが気付いたのだろう。 彼らの歓声にこたえる私たち2人の笑顔が、ぎこちなく、心からのものでなかったことに。 比喩でなく、私はこの国の”お姫様”だった。 国といっても、おとぎ話に出てくるような、煌びやかなお城の、高貴な存在じゃない。 それでも、周りの庶民よりはるかに贅沢な暮しをしている。 …いや、贅沢な暮しに束縛されている。 自分で好きな人を選ぶこともできずに、ただ親の言われるまま、国の繁栄のために、政略的な結婚をさせられる。 そんな私たちが、どうして心の底から笑うことなんてできるんだろう。 どうして大人たちはそんな私たちのことを祝福してるんだろう。 別にリックのことは嫌いじゃない。 リックも私のことは嫌いじゃない。 だけど、どこか私たちはお互いへの思いに素直になれなかった。 今の感情を、今の関係を、大人たちに押し付けられている気がしたから。 そういう意味では、私たちはお互い、いい理解者だったとも言える。 お互いのことはよく知っていて、お互いの気持ちもよくわかっていて。 確かに、他の誰よりも相手のことを考えていて。 でも、それが相手のことを好きなんだっていう風に認めることを拒んでいた。 それを認めた瞬間に、私に自由が無いことを認めることになるような気がしていた。 「もっとご自分に素直にならなければ、取り返しのつかないことになりますよ?」 口をとがらせてふくれっ面を作る私に、彼女はさらに言葉をつづけた。 「昨晩の両陛下や諸侯の方々の祝福される顔はご覧になりましたでしょう?」 「見たから、余計に素直になれないの。利用されているみたいで」 「…まぁ、全く利用していないと言えば、嘘になりますでしょう。しかし、目的が目的です」 「分かってる。そこまで分かっていて、そこまで自分に言い聞かせていて、だけど、だから素直になれないの」 「それは…困りもので御座いますね」 「何かさ、そういう魔法ないの?素直になれる魔法」 宮廷魔術師である彼女に、私は何気なくそう問いかけた。 「あるにはありますが、人の心を操るのは禁術で御座います」 「ひょっとして、使ったら捕まる系?」 「左様で御座います。そうなれば、私が次に太陽を見るのは5年後ぐらいになりますでしょう」 「そっかー…そんな迷惑はかけれないなぁ…」 私は窓辺に肘をついて外を眺めながらつぶやいた。 そんな私の様子を見て、彼女が声をかけてきた。 「最近、婚儀のことでお疲れのことと存じます。たまには以前のように森で気分転換でもなされては如何でしょうか」 「そう…ねぇ」 彼女の言葉を聞きながら、私は眼下に広がる森を見つめた。 遠くには私が今いるのと同じぐらいの小さな城が見える。 あの城の中で、リックは今何を考えているんだろうか。 森を挟んだ2つの小さな国が発展するために、結婚させられるという事実に、向き合っているんだろうか。 「…まぁ、確かに。最近城にこもりっきりだったし、ちょっと出てこようかな」 「ストレスを抱えるのはよくありませんからね」 「ん。ありがとう」 私は彼女の方を振り向いて軽く微笑んだ。そしてぐっと背筋を伸ばして窓から空を見上げた。 雲ひとつない、虚しいほどに青い無限の美しさが、私の心に突き刺さる。 一つついたため息が、雲の代わりにでもなればいいのにと、くだらないことを考えて私は自分の部屋へと戻った。 二つの国を分断しているのは、小さな樹海のみ。 歴史上、何度も二国は戦火にさらされ、時に大国にのまれ、時に同じ国となったり、さまざまな過去を経験してきた。 戦後、ようやく自由を求めて戦後に独立した2つの小国。 しかし、小さいがゆえに国として立ち行かなくなるのも、100年待たなかった。 そして時代はやがて、近隣の小国同士が存続のために統合する時代を迎える。 だが、文化も歴史も異なる国同士が一つになるには、それなりの大きな理由やきっかけが必要だ。 たとえば、王子と王女が恋に落ちてしまった、だとか。 理由なんて何でもよかったはずなのに、それはよりにもよって私たちの自由を奪うものだった。 私にだって、リックにだって、誰を愛して、誰といつ結婚するか決める権利はあったはずなのに。 それにしても、森はいつ来ても静かだ。 私の心の中で渦巻いているもやもやした何かの方が、今の私には騒々しいものに感じられた。 清々しい空気を吸い込んで、少しでも胸の内にあるもやもやを吐き出したかった。 昔からよく、何か悩んだりしてはこの森で息抜きしたり、遊んだりしていた。 リックとも、何度も一緒にここに来た。 お互いの悩みを話したり、くだらない会話を重ねたり。 それは何よりも楽しい時間だったのは事実だ。 ここでいつものように時間を過ごせば、気分もまぎれるだろうと思っていた。 だからこそ、見逃すことができなかった。 森の中で感じた違和感に。 「…あれ…ここ…どこ?」 昔からよく、何か悩んだりしてはこの森で息抜きしたり、遊んだりしていた。 この森のことは何でも知っているつもりだった。 何でも知っているはずだったのに、気付いた時にはあたりは知らない光景が広がっていた。 早くなる呼吸と脈拍。頭の中が真っ白になっていく。 でも、私は不安を感じながらも、自然と奥へ奥へ足を踏み入れていた。 何が起きているのか分からず、それなのに足を止める事が出来なかった。 焦りと、戸惑いと、微かな興味を抱きながら、まるで何かに、導かれるかのように。 やがて私の目の前に広がったのは、木々の開けた空間に湧く、大きな泉だった。 「…この森に、こんな所が…?」 見覚えのない光景だった。 この森に自分が知らない場所があること自体が驚きだった。 しかしそれ以上にこんな森の中に不自然に泉がわいていることにも驚きや違和感があった。 私は恐る恐る、自分でも無意識のうちに泉に近づいていた。 …気付いていないわけではなかった。心が焦り、森をかけてきたのだ。 口が、のどが、乾いていないはずはなかった。 そんな私の目の前に、現れた大量の水分。 体が、水を求めていたのだ。 私の知ってるはずの森に、私の知らない泉。 冷静に考えれば、その怪しい水を口にするなんて言う発想は生まれないはずだった。 だけど今の私は何かに導かれるように、泉へと歩みより、手でそっと水をすくい、それを口へと運んだ。 ざらついていた口に、のどに、潤いがしみわたっていく。 でもすぐにのどは渇きに襲われて、私は繰り返し繰り返し水を口に運ぶ。 何度も何度も。 でも渇きは癒されることが無く、それどころかますます渇きを覚え、身体はほてりを感じていた。 ほてりはだるさへと変わり、私の体から自由を奪っていく。 やがて指一本動かすことさえ辛くなり、私はその場に伏せてしまう。 それでも身体は水を求め、私は泉に向かって手を伸ばした。 だけど、届くはずの距離に泉があるのに、私の手は泉に届かず草をなでた。 …単に空振りしただけ?いや、違う…そんな感じじゃない。私は精一杯腕を伸ばしているはずだった。 朦朧とする意識の中、私はなんとか焦点を合わせて自分の手を見る。 だけど、その眼に映った自分の手は、自分の知っている人間の手ではなかった。 初めは、熱のせいで幻覚でも見ているのかと思った。 自分の目の前で、自分の手の指が徐々に短くなっていき、クリーム色のやわらかな毛で覆われ始めていたのだから。 まるで、獣の前足のように。 「何…これ…!?」 思わず心からの言葉が、口をついた。 何が起きているのか、本当に分からなかった。ただ言える事は、私の体が人間のものでなくなりつつあるという事実だった。 手だけじゃない。私の足も同じように変化し始めていた。 指も、脚も短くなり、私の下半身はすっぽりとズボンの中に隠れてしまう。 …いや、脚や腕が短くなっている、というよりも私自身が縮んでいるみたいだった。 私の体は顔を残して服の中に埋もれる格好になってしまった。 私は怖くなって思わず叫んだ…けど。 「誰か…助ケ…タス…キャ、キャウ…キュ、キュウーーーッ!?」 急に何かにのどが押しつぶされ、舌がもつれ、言葉が出せなくなってしまった。 勿論、のどを絞められたわけじゃない。 のどが、口の中が、そして口先まで変化が訪れ、私の口が言葉を発することのできない構造になってしまったのだ。 クリーム色のやわらかな毛は私の顎先までふわっと生えそろい、頭の方からは濃紺の短い毛が覆っていく。 鼻先は顔の前側へとすっと伸びていき、耳は頭のてっぺんまでぐぐっと動いて、三角形になってピンとたった。 そして耳がピンとたった直後、急に体を支配していたほてりとだるさが抜けていき、体の自由がきくようになった。 だけど、私の小さな体は私が着ていた服によって自由を奪われていた。 身動きもなかなか取れない状況、なんとかしなきゃ…そう思った時だった。 不意に私の腰元からボウッという音が聞こえ、私の腰元が熱くなったのを感じた。 やがて焦げ臭いにおいを感じて自分の体を見ると、着ていた服が燃え始めていたのだ。 更に見れば、私の腰元…濃紺の毛で覆われたおしりのところから、まるで尻尾のように炎が”生えて”いたのだ。 「キュウ…!?」 やがて服が燃え尽き、私の体は身動きが取れるようになった。…といっても、どうすればいいのか分からない。 短くなってしまった手足…いや、前足と後足でどう立てばいいのか分からなかった。 だけど、それでも何とか前足と後足両方に力を入れて、四足でその場に立ち、軽く身震いをした。 ふと周りを見渡すと、生い茂る草の背が私の眼の下ぐらいまである。 そして草の向こう側には泉が輝いて見えている。 水は美しく透き通り、湖面は暗く、日の光はよく照らしこんできている。 つまり、湖面が鏡のように反射する要素は完全に揃っているわけで。 それを見れば、私がどんな思いをするのか、既に想像に難くなかったのに。 さっき泉の水を求めた時のように、私はなれない四足でふらふらと泉に近寄った。 そして、ぬっと自分の顔を泉の上に出して、恐る恐る自分の目を開いた。 「キュ、キュウッ…!?」 これが、私っ…!? とでも叫んだつもりだったのに、口から洩れるのは甲高い獣の鳴き声だった。 正しく、水面に映った姿に見合った一匹の獣の鳴き声だった。 4本の足と腹、顎にかけて覆っているクリーム色のやわらかな毛と、背中から額にかけて覆っている濃紺の毛。 尖った耳と、口元からこぼれて見える小さな牙。 だけど何より目を引くのは、頭の上と腰元から大きく上がる炎。 私の心の戸惑いを表しているのか、火の勢いも弱弱しいものだったけど、だけどそれは確かに私の体から発していた。 水面に私なんて映っていなかった。 映っていたのは、一匹のポケモン…マグマラシが悲しげな表情を浮かべているだけだったのだから。 そしてマグマラシの頬が…私の頬が、涙で濡れるのに時間はかからなかった。 続く |
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