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【食伊/ちょこへ/木勘/竹くく/孫さも】
以下の文章は孫さもです。
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孫兵のどこが一番好きかと聞かれたら、迷わずに瞳だと答える。じっと見つめる、静かに伏せられた視線。けして健康的とは言えない白い肌を、鮮やかに彩る長い睫。綺麗な茶色の瞳がゆっくりと手元にある忍たまの友の頁を追っている。自分のすぐ真下にも忍たまの友が広げられてはいるのだけれど、残念ながらその文字列を追う気にはなれなかった。
「左門」
苦笑するように孫兵がこちらの名前を呼びながら、伏せていた視線を上げた。じっと見つめていたせいで視線は簡単にばちりとぶつかる。真正面から見る瞳は伏せているそれよりもどこか柔らかさを増している気がして、心臓がとくんと音を立てた。
「左門が見るのは僕の顔じゃないでしょ」
「孫兵がきれいだからいけないんだ」
呆れたようにとんとんと忍たまの友を指さす孫兵に間髪いれずにそう返す。なにか続けようとしていたはずの孫兵の唇は、なにも紡げないまましばらく固まって、それから少しして思いっきりよくため息をつかれた。ため息とともに伏せられた睫毛がふさりと揺れてきらきらと光がこぼれていくみたいだった。
「――左門はそういう言葉、どこで覚えてくるの?」
「思ったことを言ったまでだ」
孫兵を見ていたいから、こんなの見てる場合じゃないんだ。
そう続けると、なんともいえない顔をした孫兵はやっぱり大きく一つ息をつく。その指先がぱたんと忍たまの友を閉じて、また視線がぶつかる。心臓が大きく跳ねたのは、孫兵の瞳が柔らかさ以上になにかを隠している色をしていたからだ。
「まったく、僕も忍たまの友を見てる場合じゃなくなったみたいだ」
そういって伸びてきた指先を、拒む理由なんて持っていない。
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4、静かに伏せる
capriccioさまより「目の色五題」をお借りしております。
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