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【食伊/ちょこへ/木勘/竹くく/孫さも】
以下の文章は竹くくです。

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 竹谷の笑い方が好きだ。太陽みたいだと評される笑みだって勿論好きだけれど、なによりもきょろきょろとよく動く瞳が細められて、柔らかになる瞬間がとてつもなく好きだ。だからつい、そっとその瞳に手を伸ばした。触れる瞼の暖かさが指先からじんわりと心臓に伝わってきて、きゅんと音を立てた。

「兵助?」

 困ったように、だけど拒絶の色を持たない竹谷の声が鼓膜を揺らす。竹谷がそんな笑い方をするの、兵助にだけだよなんて級友は言ったけれど、この笑みが自分だけのものじゃないことは重々承知だ。後輩にはもっと柔らかな笑みを向けること、知っている。だけど、そう、今だけは恋人という立場にいる自分が独占したいと思ったって、いいと思うのだ。

「そんなとこ触って楽しいか?」

 ぱちぱちと竹谷が瞬きをすると、そのかすかな振動が指先に心地いい。いつの間にか伸びてきた竹谷の指先がこちらの手首をつかむけれど、無理に外そうという気はないらしかった。瞼よりももっとずっと熱い竹谷の手のひらの熱は、指先から伝わってくる微弱なものよりも急速に心臓に広がって、やっぱり心臓がきゅんと音を立てて、さらに熱を生む。

「……楽しいわけじゃないけど、幸せかもしれない」

 言葉とともにするりと指先を滑らせて、竹谷の頬を撫でた。竹谷はその言葉に面食らったような顔をしたけれど、すぐにこちらが一番好きな柔らかに目を細めるやり方で笑う。数秒の間見つめって、それからまるで当たり前のように唇を交わした。

「兵助から触ってくれるのは嬉しいけど俺はこっちの方が幸せだな」
「……なにそれ」

 意味がわからないという表情をして見せるとくすりと笑って、もう一度口づけられる。先ほどまで左腕を緩やかに拘束していた右腕はいつの間にか腰に回っていて、くいっと小さな力で引っ張られると逆らえずに簡単にその胸に飛び込む形になってしまう。ちらりと見上げる横顔はやっぱり柔らかに笑っていて、きっとこんなに近づいてしまったのだからもう、きゅんと止まらない心臓の音は竹谷に伝わってしまっているのだろうな、と思うけれど、同じくらいに跳ね上がる竹谷の心臓の音もきちんと伝わってきていて、確かにこっちの方が幸せかもしれないと思った。


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1、細める
capriccioさまより「目の色五題」をお借りしております。



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