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【食伊/ちょこへ/木勘/竹くく/孫さも】
以下の文章は食伊です。

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 柔らかな寝息がこもる、朝方の長屋。なにに目覚めさせられたのか、緩やかに促される覚醒のままに目を開けるとまず最初に飛び込んできたのは茶色の毛先だった。そこからゆっくりと辿る、乱れたふわふわの茶色の髪に包まれた顔、しっかりと閉じられた瞳を彩る睫毛、寝息を紡ぐ小さく開いた口、それからその少し下の、鎖骨のあたりにしっかりと残る昨日の情事のあと。
 誰が、なんてそんなの、自分がつけたに決まっているのだけれど、なぜか見てはいけないものを見てしまったような気がして、慌てて目をきょろきょろと泳がせた。伊作が起きていたらなに考えてるのさとか、照れてるの?なんて、からかわれたり笑われているところかもしれないけれど、残念ながらというべきか、よかったというべきなのか、伊作の瞼が開く気配はない。
 そういえばふたりでくるまっていたはずの布団はいつの間にか伊作の方に大部分を持っていかれていて、だけどそれをわざわざ取り返す気にはならなかった。いつの間にか上がっていきそうな体温に慌てて首を横に振る。昨日散々欲をまき散らしたというのに、伊作が目の前にいて、その中の少しの艶めかしさに反応しそうになるなんて、若いという言葉だけでは片づけられないような気すら、する。

 深呼吸をして、落ちつきを取り戻す。

 もう一度伊作の方に視線を落として、そうしてなぜか布団から投げ出されていた伊作の手を、そっと繋いでみる。伊作は安心しきっているのか、それとも昨日少し無理をさせてしまったからか、起きる様子はなく、指先に力も入らない。それでもきゅっと握るとほんわかと暖かな体温が伝わってきて、その優しい熱が身体じゅうをめぐっていくと、ぱちりと開いてしまったと思った瞳がゆっくりと睡魔に白旗を上げようとしているのがわかる。だからその流れに逆らわないようにそっと、ゆっくりと目を閉じた。

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2、泳ぐ
capriccioさまより「目の色五題」をお借りしております。



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