偏愛グラヴィティ



偏愛グラヴィティ










結婚式当日。




なんだかんだ色々あったものの、やっとこの日が来たのだと実感する。
隣の部屋で花嫁衣装に身を包んでいるであろう彼女を想像していると…。
「王子、お顔が…」
(どうやら脂下がっていたようだ)
キリッとした表情で俺を窘める白馬に顔を向け、とびきりご機嫌な笑みを見せる。

「喜ぶなって方が無理なんじゃない?」

一世一代の恋なのだから。

そう言えば、呆れとも諦めともつかないため息を吐かれた。
全く、自国の王子に対してどんな態度だと思わなくもないけれど。

「工藤君も、本当に君なんかで良かったのでしょうか」

心底思ってますというような台詞に、それは聞き捨てならないと睨んだ。
俺以上に彼女に相応しく、彼女を愛して、彼女を守れる人間はいないだろう。

何から守るのかと聞かれても少し困るのだけれど。

「俺以上に新一に相応しい人間なんている筈ないだろ」

それでも断言した言葉に、にやりと性質の悪い笑みを浮かべた白馬は

「そうですね、わざわざあんな出来レースまで用意しての周到な婚姻でしたからね?」

なんて意地の悪い物言いをした。

そんな白馬を上目に睨んで、
「お前だって共犯じゃないか」
言えば
「可哀そうな貴方に兄変わりとして少しでも協力してあげたかったんですよ」と答える。

そう、兄変わり。
この失礼且つ無礼な態度の根源はソコにある。
年代が近かった為であろう白馬は、王子である俺の世話係として育ってきた人間だ。
とにかく王族ともなれば親子関係ですら信頼できない世の中で、しかしこの国だけは違った。
王は優しく隔てをしない性格で、王妃はそんな王を支えながらも時には叱咤激励した。

「有難いと思ってるよ。…ずっと昔からの初恋だから」

彼女は全く覚えていない様だったけれど、俺達が会ったのはパーティーの時が初めてではない。
心のどこかで彼女も俺を覚えているのではないかと淡い期待をしたけれど、一緒に過ごすうちに気付いた。

あの時の事を彼女は全く覚えていない様だ、と。
俺を見ても全く思い出す様子は無く、素振りも無い。
共にいれば思い出してくれるのかもしれないと思ってはいるが、果たしてどうだろうか。
元々記憶力の良い彼女の事だ、彼女にとっての印象深い出来事を「忘れた」ということはないだろう。
それはつまり、彼女の中で覚えている程の記憶ではなかったと処理されているのだと思う。

「そういえば、彼女と会った時の話を聞かせて貰った事がないですね?」

回想していたらタイミング良く質問されて、ドキリと心臓がはねた。
好奇心が旺盛な白馬は、身を乗り出してその時の話をさせようとする。
だけど…

「秘密。俺の大切な思い出だから」

言って、逃げる様に「ちょっと様子見てくる」と部屋を飛び出した。






快斗バージョンは、あれからまぁ色々快斗が宰相とかの反対意見を笑いながらぶった切ったりしてやっとこぎ付けた結婚式から。

白馬がちょっと黒めだったという所から始まっている気がする^^

ポロポロ質問を頂いたりしていましたが、白馬は腹黒確信犯ですよ~!

現在2ページ










ありがとうございます!感想など頂けるとよりヤル気を出します←

あと1000文字。