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Under the moon right.  (創作 キマグレ雲と星のとき より)  月が真上に登る夜。ホテルから出てしばらく歩くと砂浜があったため、其処に座り込ん だ。月光が海に反射され、神秘的な光景を映し出す。  温かく吹く潮風。それは彼女の長い金色の髪をゆっくりと揺らした。 「隣良いかな、お姉さん」  好青年の声にクリアは振り向いて小さく笑う。 「どうぞ」  青年―セディアウス―はゆっくり笑うと、隣に腰掛けた。 「起きていたのですか?」 「寝てたんだけど、なんだか寝付けられなくてな~。クリアこそ、眠れなかったのかい?」 「えぇ。これからの事を考えていたら眠れなくなってしまって」 「これからの事?」  セディアウスが聞き返すとクリアは「はい」と返事した。 「この旅が終わったらどうしようかって。  初めのうちは故郷のレイディア国に戻ろうかと考えていましたが、私でも何か出来る事 があるなら、そのために尽くしたいと思うようになって……。  セディアはどうするんですか?」  話を振られて、セディアウスは軽く頭を掻くと、 「そうだな~…。旅を続ける事しか考えてないな。色々なものを見たいし」  と答えた。  なんとも彼らしい意見だ。 「でもまだ、ライルの謎を解く旅の途中だろ?旅が終わったらゆっくり考えればいいじゃ  ないか。まだ時間あるんだし」  セディアウスの言葉に、 「そうですね」  とクリアは頷いた。 「それにしても」  セディアウスがいきなり口を開いたため、クリアはキョトンとした顔をセディアウスに 向けた。 「此処の海って綺麗だよな~。旅の途中って事、忘れてしまいそうだ」  月光が、彼の紫色の長髪と、整った横顔を照らす。同い年のはずなのに、彼の方がずっ  と大人に見える。  隣に座っている少女が何も言わないので、 「どうしたんだい?」  って訊ねる。 「えっ!!?な、なんでもないです!」  さすがに「横顔に見とれていました」とは言えないので、クリアは慌てて誤魔化した。  声が上ずっていると、後で気づいたけれども。 「眠くなってぼーとしてるんじゃないか?  夜更かしは、お肌の大敵だぞ?」  遠まわしに「そろそろ寝ないと、明日が持たない」と言ってくれた。直接言ってくれて も良かったのだが、茶化したように言う彼が面白くて、思わず小さく笑ってしまう。 「えぇ、そうします。  セディアも、気をつけて部屋に戻ってくださいね」  そう言って席を立つ。 「あぁ。おやすみ」 「おやすみなさい」  金色の長い髪を靡かせて、クリアはホテルへと足を向けた。  それをしばらくセディアウスが眺めていたのだが、視線を再び海に戻し、 「クリアってわかりやすすぎるな~」  と一人呟いた。  ロビーのエレベーターに入ると「Ⅲ」という数字のボタンを押す。  扉が閉まると、クリアは鏡に自分の顔を映した。  その顔色はほんのり赤みを帯びている。 (まだ顔が赤いですわね・・・。  セディアが気づいていなくて良かったですわ)  心の中で浮かんだ感情に、彼女は首を振って消した。  彼は風歌族で、自分は星歌族。  両方とも、ずっと昔から存在していた一族だ。  親近感を持ってるだけだと言い聞かせて、彼女はエレベーターを降りて、風神族の少女 が眠っている部屋に入っていった。
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