拍手ありがとうございました!!




朝の逡巡(ウェカマジェ)






ウェカピポは体内時計は正確できっちり決まった時間に目が覚める。
日が昇って少しする頃にはどんなに疲れていようが目が覚めてしまう。
惰眠を貪ったりするのは性に合わないし、ウェカピポも早く起きることを苦には思っていなかった。
今日もいつもと同じように目を覚ましたウェカピポは右腕に違和感を覚えた。
ずっしり重い。
寝起きではっきりしているとは言えない頭で寝違えたか何かしただろうかと考える。どこか痛い訳ではないがこれでは鉄球が投げられない。
のろのろと右腕の方向を見ると見慣れたもじゃもじゃ頭が毛布に埋まっていた。
言わずもがな、昨晩は隣のベッドで寝ていたはずのウェカピポの相棒である。
目が覚めてきたのでよく観察してみれば、どうやらマジェントはがっしりとウェカピポの右腕に掴まって眠っているようだ。そういえばいつもより布団の中が暖かい気もする。
マジェントの朝は遅い。
自分で起きてきたところを見たことがない。大抵ウェカピポが叩き起こす。本気で殴るまで起きない時もある。
そしてその見た目通り、凄まじい低血圧だ。起きても普通に動けるようになるまで少しかかる。
ウェカピポはこれを苦に思っていた。
つまり、今右腕に掴まっているマジェントを起こしたところでしばらくはこのままでいなければいけないということである。どうしたものか。
ウェカピポは爽やかな朝に似付かわしくない溜め息を吐いた。
そもそもなぜこんなところにマジェントがいるのか。
昨夜ウェカピポは、彼が隣のベッドに潜り込むのをきちんと見た。寒い寒いと大騒ぎをして布団にしっかりとくるまっていたはずだ。
布団に入ってからもあんまりうるさかったものだから、思わず叱り飛ばしたのではっきり覚えている。
この宿のベッドは大の男が二人で寝るにはかなり狭い。ウェカピポ一人でものびのびとは眠れない。
ウェカピポとしては相手が大の男で無くても、例えグラマラスな美人であっても二人で寝たいとは思わない狭さである。現にマジェントは半分ベッドからずり落ちている。
そうまでしてなぜこんなところで寝ているのか。ウェカピポにとって、実に不可解だ。
ふと、先日マジェントに言われた言葉を思い出した。
「俺が女ならあんたと寝たいと思うぜ。」
そう言ったマジェントはずいぶん酔っ払っていた。
酔っぱらいの戯れ言、と思ってその時は適当にあしらったのだがもしかしてあれを実行したのでは?いや、あれは女ならという仮定での話である。
マジェントは女にもなっていないし、昨日は酔ってもいなかった。あの話はきっと関係ないだろう。
そろそろ右腕が痺れてきた。
マジェントは起きる気配がない。
こいつはいつもウェカピポが起きてから朝飯を作ってやって、きちんと身なりを整えたころに、殴り飛ばしてようやく起きるのである。
ウェカピポの目覚める時間に起きる訳がない。
とりあえず考えることをやめたくなったウェカピポはマジェントを蹴り飛ばすことにしたのであった。






一言あればこちらから。
拍手返信は遅いですがブログにてさせて頂きます。



一言あれば。(拍手だけでも喜びます!)
あと1000文字。