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「ねえねえ、ミゼット。包帯ある?」

シェールと二人、自宅近くの森を散策していたときのことだ。森の奥から、少年がぴょんぴょんと片足跳びでやってくるのが見えた。先程から姿が見えないと思ったら、いつの間にか随分と遠くまで分け入ったらしい。

「家に帰ればあるけど、一体どうしたの?」

「うん、今さっき釘を踏んじゃって」

「釘?やあね、釘は錆が出るからちゃんと手当てしないと危ないわよ。見せて、どこ?」

「足の裏の、ここ」

シェールはその場に靴を片方脱ぎ捨て、ひょいと足を上げた。見れば、親指の後ろあたりから出血している。

「あらら、これじゃ歩けないでしょ。肩を貸してあげるから、つかまって」

「いいよ別に、ひとりで平気」

「つまらない意地を張って、もし転びでもしたら、それこそ目も当てられないじゃない。ほら、遠慮しないの。何ならおんぶする?」

「は?無理だよ。ミゼットにおんぶしてもらうほど、僕もう小さくない」

心外だとばかりに、シェールがむくれた。

「ちょっと馬鹿にしないでよ。昔はエレインのことおぶって走ってたんだから」

「うっそ!なんで?」

「訓練だからよ。あんたも、もし士官学校に入ったらやらされるわよ」

「えー?!自分と同じくらいの体重の人をおんぶして走るってこと?スッゴいキツくない?」

「スッゴいきついわよ」

火事場の馬鹿力もそう何度も発揮出来るわけではない。正直、若い頃ならいざ知らず、今となっては出来る気がしない。と言うか、やりたくない。

「だから、大概どっちが重いの、太ってるのって話になって、揉めるのよ。でもって、その日の夜からいきなりダイエットとかしちゃって、翌日お腹が減って全っ然力入らない、みたいなことになるわけよ」

「うそでしょ?」

信じられない、そう言ってシェールが笑い転げた。思い返すと、自分でもおかしかった。

「本当よ。現に私の部下も同じこと言ってたもの」

「うそだ。そんなのちょっと考えればわかるじゃん」

「そう思うでしょ?当たり前のことがわからなくなるくらい、わけがわからない世界なのよ」

今となってはよくわからないが、とにかく理屈ではないのだ。

「ふうん。でも、そんな話初めて聞いた」

「そう?」

「ねえ、もっと聞きたい」

「いいわよ。あんたのママとは、四六時中一緒にいたんだもの。いくらだってしてあげる。本当、あの頃は大変だったけど、今思えば一番楽しかったかも」

「なら、もう一回やりたいって思う?」

「思わない」

「なんで?」

「それは、自分の目で確かめなさい」

不敵に笑うと、シェールがへ?と言って後ずさった。


~Fin~ 2021.5.17




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