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「ジョージア先生!?」

ある日の仕事帰り、いつもどおりひとり城門を出たところで、チェイスは感嘆の声をあげた。かつての師が目の前に現れたからだ。

「なんとなく気になって、様子を見に来た」

つまるところ、師は偶然この場に居合わせたのではなく、あえて自分に会いに来たということだ。

「すいません、卒校したっていうのに、ご迷惑をお掛けして」

「迷惑だと思っていたら、わざわざ来ないだろう」

「せんせい」

思ってもいなかった言葉に涙腺が緩みかける。そんな自分を制すかのように、師が顎をしゃくった。

ともあれ、ひとまず場所を変えようと、その足で酒場へ入った。

「うちの隊で盗難事件があったことをご存知ですか?」

「ああ」

「先生は自分が犯人だと思いましたか?」

「いや」

師は間髪いれずに否定した。じわりと胸が熱くなる。

「お前はそんなことが出来るタマではない」

が、続く言葉にチェイスは吹き出した。途端に涙がこぼれた。

「こら、俺が泣かしていると思われる」

言いながら、親指の腹で涙をぬぐってくれた。

「です…ね」

今度こそたまらなくなって、チェイスは手のひらで顔を覆った。バシバシと背中をはたかれながら、ふいに思う。こんな日が来るなんて、あの頃は思いもしなかった。

「金に困っているのか」

「いえ」

「本当に?」

「本当言うと、少し前までは困っていました。隊費の…支払いのことで」

「そのことを誰かに話したか」

「もちろん、隊長と副長に…」

「その前には?」

「いいえ」

チェイスの答えに、師は吐息した。

「確かに金絡みのことは言いづらいかもしれないが、困ったことがあったらまわりを頼れ。同じ班の人間に話せないなら、別の部隊の奴でも、俺でも良い」

「はい」

「経験上、ひとりで抱え込むとろくなことにならない」

師は葡萄酒でグラスを満たしながら言った。

「確かに。ドーンにしてもカヴァナーにしても、ああなる前に言ってくれれば良かったのにと思いました」

「あいつらのこともそうだが」

脱衣盗難事件はともかく、本科生失踪事件は士官学校史上まれにみる大事件である。だが、自分とて決して他人事ではない。

「これは人付き合いが苦手な俺自身の教訓でもある」

「一体何があったんですか」

「聞きたいか」

「はい。もちろんです」

「昔城門にいた頃、大層図々しい先輩がいた。その名は、エレイン…」

そこで師が語ったのは、お節介は世界を救う。そんなお話。


~Fin~ 2026.9.25 
チェイスくんをなぐさめる会開催中。



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