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拍手をどうもありがとう☆ 「ねえ、さっき勝ったあの子、バーディだっけ?人の話聞いてなさ過ぎて、よく怒られているでしょう」 レグラス=フォードが統括との面会を終え、無事帰路に着いた後のことだ。ミゼットはタリウスに話し掛けた。 「おっしゃるとおりです」 これまでに幾度、そのことでバーディに雷を落としたことかと、タリウスは苦笑する。 「過集中っていうの?ひとつのことに集中すると、周りが一切見えなくなるみたいだけれど」 「過集中?」 ミゼットの台詞をタリウスは目から鱗が落ちる思いで聞いていた。人の話を聞いていないのは、てっきり注意散漫だからだと思っていた。 「集中し過ぎて、逆にまわりが見えなくなっているということですか」 「ええ。さっきみたいに強みにもなるけど、度が過ぎると命を落としかねないから、ここを出る前に、まわりが見えるくらいには矯正したほうが良いんじゃないかしら」 続く言葉に、タリウスは言葉を失った。 「その、つもりですが…」 「ごめん。出すぎた真似だった?」 「いえ、すみません。そもそもあれを強みと思ったことがないものですから」 驚いて二の句が継げなかったのだ。 「そう?鈍感なことって大事よ」 確かに、それについてははつい先程、嫌と言うほど痛感した。 「逆に、ダルトンなんかは繊細過ぎて、時々扱いに困るもの。ま、あれはあれで、重宝してはいるんだけど」 「重宝しますか。どんな具合に?」 「そうね、とにかく慎重だし、普段と違うことに、ほんの些細な異変にも敏感に反応するから、こちらも警戒出来る」 「慎重…」 「初めは、いつも不安そうな顔をして、何でも逐一確認するから、てっきり自信のなさのあらわれなのかと思ったけど、違ったみたい。センスあるわ」 「そう、ですか」 それきりタリウスは閉口した。 「どうしたの?」 「いえ、なんと言うか…もう、いっそあなたが教官をやったほうが良いのでは」 「ええ?!」 予想外の台詞にミゼットの目が点になる。 「自分なんかより、よほどあいつらのことを見ていますよね。そうでなくても、誰がバーディで勝つと思いますか」 「あれは、只の勘よ。それに、近くにいすぎると逆に見えないことだってあるわ」 「ダルトンとは毎日顔を合わせていますよね」 「いや、まあ、そうだけど」 ようやく面倒な賓客が帰ったと思ったら、こんなところに厄介な伏兵が潜んでいるとは。ミゼットは腹の中で親友に助けを求め、それが叶わないと知ると、困り果てて天を仰いだ。 ~Fin~ 2021.8.21 「先見之明」の後で。ねーさんに絡むタリ。 |
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