web拍手、ランキング投票のクリックありがとうございます! 【光のもとで / 恋する決意 Side 桃華】 静寂の中、花をじっと<見つめる。 花の顔、枝ぶり、それぞれの表情をいかすにはどういけるべきか……。 思いを巡らせ花と向き合う。 今日の花材はアネモネ。 はかない恋、薄れゆく希望、恋の苦しみ、辛抱、待望、期待、可能性――。 苦い思い出が付随する花だからこそ花言葉を覚えている。 あの男を想って何度いけただろう……。 苦しくて切なくて、胸が張り裂ける思いだった。希望の光など差したことはない。 辛抱、待望、期待――想像すら難しい可能性を夢に見た。 やがて夢見ることすら苦しくなって、私は「想い」に蓋をした。 ――もう、恋なんてしない。 「想い」と決別したのは、あの男が中等部を卒業した日のこと。 「懐かしい……」 自分が発した言葉を意外に思いながら、なおも花を見つめる。 今はこの花を見ても辛くはない。 けれど、変化はそれだけではなかった。 この心は、私への断りもなく勝手に恋をした。 あの男とは正反対の、別の意味で望みの薄い人に。 相手はクラスメイトのお兄さん。 大学院にいるということは、少なく見積もっても年の差は八歳。 きっと、私はあの人の恋愛対象になれないだろう。 妹の同級生としか見られない。そんなことわかってる。 でも、向けられた笑顔に囚われた私にはなす術もない。 胸が高鳴る。 また苦しい想いをするかもしれないのに……。 あの人は、誰に対しても優しく微笑むのだろう。 そうは思うのに、「可能性」を夢見て淡い期待を抱く。 その目に映りたい、笑顔を向けてもらいたい、と――。 あんな辛い想いをしたのに、まだ私は夢を見ようとしている。 でも……あの人になら「好き」と言えるかもしれない。 あの男には一度として伝えることができなかった想いを。 あの人になら伝えることができるかもしれない。 不完全燃焼ではなく、きちんと完結できるなら……。 そんな恋なら後悔はしない。 「しない後悔」は、もういらない――。 イラスト:涼倉かのこ様 |
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