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    【光のもとで / とある大学の昼下がり Side 環】
    
     今、俺の視線の先にはちょっとイイ男がいる。
     「ちょっとイイ」が指すもの――顔、運動神経、頭、性格。ほか、身長。
     因みに、「ちょっと」という程度副詞は俺の負け惜しみ。
     顔も頭も運動神経もいいのにおごることのない性格。基本、何があってもいたって温厚。
     そんなイイ男、御園生蒼樹(みそのうそうじゅ)が若干険しい顔で資料探しをしていた。
    「そこの忙しそうなお兄さん」
     ふざけた調子で声をかけるとこちらは向かず、「何?」とだけ訊いてくる。
     いつもなら人の目を見て話すやつがこんな態度を取るとは――余程忙しいのか?
     俺は明日が提出リミットのレポート作成中。対する蒼樹はすでに提出済み。まるで学生の鏡のようなヒト。
     その鏡のようなヒトは、本を手に取りパラパラと中を見ては書架に戻し違う本を手に取る。
    「なんの資料探してんの? さっきからあっちこっち書架を行ったり来たりして」
    「あぁ……」
     蒼樹は次なる本に手をかけつつ、視線のみをこちらに向けた。
    「教授と秋斗先輩に頼まれてる資料集め」
    「なるほど……」
     蒼樹の脇にはつい先日入荷したばかりの真新しいカートがあり、上段中段下段に分けて本が並べてある。
     あれ? でも、三段全部に本があるっていうのは――?
    「ねぇ、先輩と教授の資料集めにしては分量多くない?」
     カートを見ながら訊くと、
    「どうせなら自分のも、と思って」
    「自分のったって、お前明日提出のは終わってるだろ?」
     蒼樹はしっかりとこちらへ向き直る。
    「高校のときから思ってたんだけど……。環って、実は五分前行動とか苦手だよな?」
    「え? あぁ、集団行動の中でならできるけど、自分オンリーだと結構甘い。……それが何?」
    「つまり……レポート提出期限が明日までなのがソレだけっていう話で――」
     蒼樹は俺が書いているレポートを指し言葉を続けた。
    「今月末が締め切りのレポートはほかに三つあるって話」
     言われて手帳にざっと目を通す。
    「げっ……」
    「明日以降になるけど、もしよければ一週間前のアラート役、買って出るけど?」
     真面目に訊かれてうな垂れたくなる。
     これが嫌みならまだいい(いや、あまり良くないけど……)
     こいつは友人として真面目に心配しているのだから、邪険にもできなければ口答えもできない。
     そして俺はお願いするんだ。
    「頼んます……」
     と。
     
          
     (覚えている方は少ないかと思いますが、「環」とは、蒼樹とは高校と大学が同期の鈴代環(すずしろたまき)のことです)

     イラスト:涼倉かのこ様



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