Clap
「違いのわかる男」おまけ
「ふぁああ」
街の入り口にある門の上に寝転がって、ナッシュは大きくあくびをした。ぽかぽかと心地よい日の光を浴びていると、どうも眠くなって困る。
腕の中では、襲い来る眠気に負けたチェリンカがナッシュの胸に頭を預けながらすやすやと寝息を立てている。
相変わらずチェリンカの身体は、ナッシュとは違う生き物のように柔らかい。こんなに華奢な身体では、この高さから落ちたらただではすまないだろう。ナッシュは背筋を走り抜けた寒気に身体を震わせて、チェリンカを抱く腕に力をこめた。自分一人の時ならともかく、今だけは眠るわけにはいかない。
「ん……」
くっつきそうになる瞼をごしごしとこすっていると、腕の中で小さな声があがる。
「チェリンカ?」
目が覚めたのだろうかと小さく声を掛けるが、チェリンカはもぞもぞと動いただけで、またすぐに寝息が響いてくる。どうやらこめられたナッシュの力に反応しただけらしい。
「――――――――」
腕の中に踞る安らかな寝顔に、ナッシュは小さく息を吐いた。アルハナーレムの助言のおかげで仲がこじれずにすんだが、やはりチェリンカを見るとドキドキと胸が痛い。こうして一緒にいて嬉しいと思うのに、この痛みが自分にしかないと思うと何故だかまた泣き出しそうになる。
と、誰かがやってくる気配がする。
「ん?」
顔を上げると、反対側から顔見知りの黒猫が歩いてきた。
「なぁー……」
黒猫は目が合ったナッシュに一声鳴こうと口を開け、腕の中のチェリンカに気付いて慌てて声を引っ込めた。
そして、ナッシュたちの手前でちょこんとかしこまると、どうだ?と青い目で見上げてくる。
「そうだな。おまえ言ったとおり、全然違う」
見つめてくる黒猫にナッシュは苦笑した。
「一緒で嬉しい。けど、これはちょっとつらい」
腕の中のチェリンカを見て複雑な笑顔を浮かべるナッシュに、黒猫はにぃいと三日月のような目を細めた。