1.
紅を引いたかのように、朱に彩られている唇。 声 を出すまいとぐっと噛みしめているのに、時折 堪えきれずに薄く開いて、微かな喘ぎを漏らす。 筋肉は鍛え上げられ硬く引き締まっているのに、 それを覆うきめ細やかな肌質と白さが、美術作品 を鑑賞するかのような、そんな感慨をもたらせる。 この行為は、許されていいものなのだろうか。 もう何度も何度もこうして肌を合わせているの に、今日は殊更に、そんな慄きと戸惑いを感じる。 皆を導く存在として、里の頂点に立つ人を組み 敷き、陶器のごときその肌に痕を刻み、身体を貫く。 崇高な存在となった彼に強いるこの行為は、彼 を 穢すこととなりはしないのか。同じ性で睦みあう ことすら、本来は背徳の行為といえるのに。 今の立場になり、彼にも葛藤があったはずだ。 しかし彼は伸ばした僕の腕を、振りほどくことは しなかった。 引き寄せた腕を振りほどかずに、この胸に その 身を預け、深い口づけに応えてくれた。 |
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