+ Rosy Chain +

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こちらの作品は第五章第十話、第六章第一話の後のお話です。

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Rosy Chain Side Story

02.Honey Time

Line
* Kasumi *
 メニューを見てて、思いついたの。
 これならできるかもって。

 * * * * *

 手伝おうかという彼の申し出を即座に断り、準備にかかる。
 いつもは一緒にやるんだけど、これは一人でやらなきゃ意味ないものね。

 昂貴のご所望は、ハニートースト&ロイヤルミルクティー。
 ……結構、こってりしたもの好きよね、あのひとも。

 昂貴に鍛えられて一ヶ月。
 私だって、ちょっとは上手くなったんだから。

 まずはロイヤルミルクティー。
 浄水器でもミネラルウォーターでもなく、水道から直接注ぐ。
 淹れる量の半分をはかったら、お鍋に入れて沸くまで待機。

 ぶくぶくと泡が立ち始めたら、ハニートーストの準備をしなきゃ。
 パンの焼き加減はどんな色だったっけ。きつね色くらいかな?
 でも、ここは昂貴の好みでいかなきゃね。
 彼の場合、薄すぎても、濃すぎても駄目。
 薄いのは香ばしさが無いし、焦げたのはバターが綺麗に乗らないから。
 意外と好みが細かいのよね。

 お湯が沸いたところで葉を一匙入れて、火を消す。
 ジャンピングが終わって、葉が下に沈んだら、ミルクを注いで再点火。

 忘れちゃいけないトーストの準備。
 端っこがパリパリになってきたら出して、縦横に切れ目を入れる。
 バターは要らないかな。このバニラアイスは濃いから、これで充分でしょ。
 切れ目に沿いながら染み込むように蜂蜜を垂らして、全体に伸ばしていく。

 紅茶の葉が浮いて、表面が黒くなってきたら、ロイヤルミルクティーのできあがり。
 コツは、沸騰する直前に火を止めること。
 沸騰しちゃうと、美味しさが逃げちゃうんだって。

 仕上げは、冷凍庫から出したての、お気に入りのバニラアイス。
 綺麗な風合いがつくようにスクープですくって、ざっと乗せて、できあがり。

 ティーセットよりも深いカップと、少し大きめのお皿を用意して。
 そのままでもいいけれど、ここは気分が大事。紅茶をポットに注ぐ。
 ほんとは茶器を温めるけど、ま、そこまでしなくてもいいでしょ。

「昂貴ー、できたよー」
 呼びかけると、リビングで雑誌のページを繰っていた彼がソファを立った。
「お、いい匂いがするな」
「でしょ?」
 ロイヤルミルクティーはともかく、ハニートーストは、初めての上に見ただけでレシピも無く作ったにしては、上出来だと思うのよ。
「いただきます……ん、良いじゃん。美味いよ」
「ほんと? でも、簡単だったからかな……パンを焼いて蜂蜜を塗ってアイスクリーム乗せただけだもの」
 ほんとの、ほんっとーに、それだけなのよね……。
「だから、そこで謙遜すんなって。本当に美味いんだから、自分も食べてみろよ。
 ……って、風澄のは?」
「あ、忘れてた……」
「なぁにやってんだよ、おまえは」
「だって、昂貴がお腹空いてるって言ってたから、早く食べさせたかったんだもん」
「……あぁ、そうか。ありがとうな」
「どういたしまして」
 そこで手招きされて、彼の隣の椅子を引かれる。座れってこと?
「なに?」
「ほら、半分」
「え、だって、昂貴に作ったのに……」
「二人で食べたほうが美味いに決まってるだろ」
「……じゃあ、遠慮なく」
 同じ食器、抵抗なく使えるようになったの、いつからだっけ。
 ボディソープと同じラインのシャンプーとコンディショナーとトリートメントを揃えてもらって、彼も使うようになって。
 今はもう、歯磨き粉も共用。
 キスもセックスも何度もしちゃってるんだから、嫌がったり、疑問に思うことのほうが、おかしいのかもしれないけど。
「……自分で言うのもなんだけど、ほんと美味しい」
「な?」
「でも、なんか複雑だわ」
「なんで?」
「お店の味にそっくりなんだもの。今までのは何だったのかしら……」
「あぁ、なるほど。そりゃ複雑だな」
 結構いい値段なのよねぇ。まぁ美味しいからそれでも注文してたけど、この簡単さを知ってしまった今では、あんまり頼む気にならないわね……まぁ、ケーキも美味しいから、楽しみが増えると思えば良いんだけど。今日なんか昂貴の影響か、ランチもケーキも、チーズのオンパレードになっちゃったし。
「いつか、店にも行ってみたいな。ここは、本物の味をチェックしないと」
「でも、昂貴は入りにくいかも。女の人ばかりだから」
「そうなのか? でも、俺、あんまり気にならないんだよな、そういうの。姉に連れまわされたりしてたし」
「お姉さんって、真貴乃さん?」
「そう。俺に勝るとも劣らない甘味好き。家族揃って甘党なんだ」
「あ、うちもそう。ワンホールのケーキなんて、その日のうちになくなっちゃうもの」
「ティータイム大好き一家だもんな」
 なんて言って、まだ見ぬお互いの家族を想像しては、笑ってしまう。
「……風澄」
「なに?」
「蜂蜜、ついてる」
「え、どこ?」
「……ここ」
 伸ばされた指はフェイント。
 口唇を掠めて、顎を捉えて、拭ったのは舌先。
 抵抗する間もない。
 蜂蜜の味の、優しいキス。

 深い、くちづけなのに。
 味わうように、口内を舐(ねぶ)られているのに。
 どうして、こんなに優しく思えるの……?

 ……蜂蜜って、こんなに甘かった……?

「ごちそうさま。美味かったよ、ありがとう」
「……どういたしまして」

 こっちはまだ、どきどきが収まらないのに。
 あなたは平気な顔で笑う。
 でも、口の中は甘いままでしょ?
 わかってるからね、そんなこと。

「じゃ、夕食の後にもう半分、追加オーダーで」
「はーい、かしこまりましたっ」

 私に、できること。
 こういうところから始めても、いいよね。

Line

秋陽さん大好物(笑)、ロイヤルミルクティーとハニートーストでございますー。
外で食べると高いんですよね。結構簡単に作れちゃうんで、オススメです。
ヴァリエーションは色々あるんですが、これが一番簡単なタイプなのではないかと。

Line

First Section - Side Story The End.

2005.03.12.Sat.

* Rosy Chain *


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