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+ Rosy Chain + web拍手の送信ありがとうございます! それでは、お礼作品・Rosy ChainのShort Storyをお楽しみくださいませ。 こちらの作品は第七章、第五話と第六話の間のお話、 視点は昂貴の友人・浅井くんです。 * * * * * * web拍手について * 全五話のうち、ランダムで一話が表示されます。 ページ下部の送信ボタンを押して戴くと、ランダムで一話が表示されます。 連続で十回まで送ることができます。 Rosy Chain Side Story 06.Suffering Days * Kazuyuki Asai * ことの起こりに、俺の責任が無いとは言わない。 何故って、できるならば知りたいなと思ったのは事実だからだ。 けれど、まさか、こんな受難の日々が待ち受けていようとは。 たった一本の電話。 聴き慣れた着信メロディを鳴らす携帯電話に表示された名前を見て、俺は、特になんとも思わず通話ボタンを押してしまった。 それを受けてしまったのが、そもそもの間違いだったんだ。 今更悔やんでもしかたないことなのだが…… せめて、この状況の異様さくらいは、認識しておくべきだったと思う。 あいつの電話嫌いは充分に知っていた。よほどの緊急時でない限りメールで済ませる奴なのだ。それなのに、電話がかかってきたということに疑問すら抱かなかったとは。 まぁ、電話嫌いと言っても、電話すれば受けるし、留守電を聞けばメールを送ってくるし(それでも電話をかけてこないあたりがミソなんだけど)、あいにく出られない状況だった場合は、その旨を明記したメールが来る。 たとえ用件が大学やゼミに関する連絡や確認事項だとしても、それはゼミの連絡網代わりのメーリングリストで伝えられる。 だから、電話という手段を採るはずがないのだ。 しかもあいつは今、三年も片想いをしていた女性と、つきあっているわけではないにしろ恋人同然の関係になり、半ば同棲しているようなものなのである。そして大学は夏休みとくれば、思う存分いちゃついているに決まっている。 果たして、あいつは、そんな時に俺に電話なんぞかける奴だろうか。 やはり――おかしいと思うべきだったんだ。 ……しかし、人間には能力の限界というものがある。 まして、自他共に認める凡人である俺に、予知能力などあろうか。 そして本日、俺が疲労困憊となった原因は、なんの前触れもなく、実にありきたりで、どこにでもあるような―― 『そういえば今、俺、実家に帰ってるんだけどな……』 ――という一言から始まった。 * * * * * 『風澄のマンションに居たから俺は先に帰ったんだけどさ、その時に風澄が『メールしてね』って! 帰省中だぞ帰省中。それなのに『メールしてね』って、俺はもうこの一言だけで理性の箍(たが)が外れるかと思ったね!』 いや、今のおまえは既に理性の箍が外れていると思う。 『それでさ、うちの姉と風澄の話をしてた時にメールが入ってたんだよ。『家には無事ついた?』って。風澄に気にかけられてるよ俺ー! 俺は風澄が居れば大丈夫だー!』 いや、まったくもって大丈夫じゃないと思う。 『メールを送ったら、すぐに返事が返ってきたしさー。土産が楽しみだって。俺はそんな風澄に逢うのが楽しみだー!』 いや、楽しみなのは土産であっておまえじゃないと思う。 『文末には、『おやすみなさい』って書いてあったんだぜ! いや~もう、可愛いだろっ!』 ……。 確かに、可愛い。 しかも、それがあの絶世の美少女となれば、なおさら可愛い。 とてつもなく、可愛い。 だけどな。 「だからって、いちいち俺に惚気んな阿呆っ!」 『別にいいだろー、おまえしか風澄と俺のことを知らないんだからさー』 「用件はそれだけか? 切るぞ、即行切るぞ、瞬く間に切るぞ!」 『まぁ待て。とりあえず今日はいいが、問題は明日だ。せっかくだから明日の夜は俺からメールを送ろうと思うんだが、普段から一緒にいるぶん、あらためて考えると何を書いたら良いやらサッパリだ。どうしよう』 「どうしようじゃねぇ、そんなこと知るかっ! 自分で考えろ! 研究者の基本は自学自習だ! おまえの得意分野だろ!?」 『それとこれとは違うだろー? こればっかりは失敗したくないんだって』 「おまえは初めて彼女ができて浮かれている中学生か!?」 『確かに、そんなレヴェルかもしれん』 「納得してんじゃねえぇ! そして俺に恋愛テクニックなんぞ聞くなーっ!」 『溺れる者は藁をもつかむと言うだろうが』 「たとえおまえが恋愛という名の海で溺れる者であろうとも、よりによって、俺という藁をつかもうとするなーっ!」 つぅか、それって俺が役立たずってことじゃないか! そもそも恋愛指南なんて、どう考えても立場が逆だ、逆! 「だいたいなぁ、おまえの恋愛経験値は一体幾つだ!? これまで二桁の女と付き合った過去は一体なんだったんだ!?」 『そんなどうでもいい女と風澄を一緒にするな』 「おまえの元カノだろーがあぁ!」 『それもこれも、風澄に出逢っていなかったからだっつーの』 「おまえの脳味噌は市谷さん一色か!?」 『そう言っても差し支えない。誇張ではあるが事実無根でも無いからな』 「言い切るなーっ! おまえは本当に高原昂貴かー!?」 『俺はもう昔の高原昂貴ではない。リニューアル高原昂貴くんと呼んでくれたまえ』 なんだー、なんなんだこいつはー!? と言うか、誰だこの恋愛馬鹿はーっ! 「つぅか、珍しく電話してきたかと思えば、内容がこれか!」 『メールで聞いたんじゃ埒があかないだろうが』 「おまえは電話が嫌いなんじゃなかったのか!?」 『嫌いだよ。まぁ、たとえ電話でも、風澄となら何時間でも喋っていられるだろうな。風澄も電話は嫌いだから、しないが』 「おまえの話題は市谷さんのことしか無いのかー!」 『だから、そう言っても差し支えない。誇張ではあるが事実無根でも無いからな』 どう考えても誇張じゃないよな……むしろ控えめな表現かもしれない……。 『いいだろー、頼むよー、たとえ使い古された方法でもいいからさー』 「わざわざ俺に聞く意味があるのかそれは!」 『まぁ、なんだ、こう、参考までに』 「参考かよ!」 百歩譲って頼りにされているとしても、まったくもって頼りにならない藁だぞ俺は。 そもそも俺に恋愛の指南役を求めるこいつが間違っている。絶対に間違っているっ! 「今日は良い天気だったなとでも書いとけっ!」 『天気ねぇ……あぁ、日常のことか。なるほど』 「なるほどじゃねえぇ! 感心すんなーっ!」 普通、日常のことなんぞ内容を考える前に思いつくだろうがー! 『そうだな、頑張って考えてみるよ。サンキュ。じゃあなー』 頑張るようなことじゃないだろうが、せいぜい工夫するとか、その程度だろうがー! ……と、再び突っ込みを入れようと口を開いた瞬間、俺の耳に、単調な電子音が虚しく響き渡った。 切りやがったのだ。一方的に。 ……あ、あの、超絶マイペース男め……。 釈然としないまま、こちらも通話を切り、待受画面に戻すと、電池の残量を示すマークが一つ減っていた。 携帯を充電器にセットすれば、当然ながら赤いランプが点灯し、充電を開始する。 なんなんだ、この置いてきぼりをくったような気分は。 そして、一体なんだったんだ今の電話は……。 なんか、どっと疲れたなぁ……。 普段こんなにまくし立てたり怒鳴ったりすることがないもんで。やっぱり、慣れぬことはするもんじゃないな。 それにしても、あんにゃろう……これまで一度たりとも恋人のことで惚気たりしなかったくせに、なんだこの変わりようは。 恋をすれば人は変わるものだが、それにしたって変わりすぎだろう! だいたいなぁ、おまえ、これまで他人の惚気話が理解できんだの鬱陶しいだのどうでもいいだのと言ってたくせに、俺を惚気話責めの質問責めにすんじゃねえぇ! この際、着信拒否にでもしてやろうかという考えが頭をよぎったのだが、それはそれで後が怖いのでやめておく。 君子危うきに近寄らずである。 しっかし、こんな日々がこれからも延々と続くのであろうか。 考えれば考えるほど、何故あの時、市谷さんに会わず、さっさと帰ってこなかったのかと頭を抱える俺であった。 とほほ……。 浅井くんの受難(笑)。 愛情だだ漏れ、妄想垂れ流し、そして傍若無人極まりない昂貴でした。 ほんっとに、このひとって……(苦笑)。 First Section - Side Story The End. 2007.10.28.Sun. * Rosy Chain * * メッセージをお願い致します *
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