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ある日の御堂さん#1

雨が、降ってきた。
昼から空は厚い雲に覆われ薄暗かったが、夜ともなればさらに暗さは増している。
こんな日はあの夜を思い出す…克哉が、私のマンションの前でぬれそぼっていたあの夜。
腕を取ると、泣いていた克哉。私の名を呼んでいるのに、目の前にいる私を見ない。

抱きしめてみれば芯から冷えて濡れているのがわかる。
この男を泣かしていいのは私だけだ。
この男を濡らしていいのは私だけだ。
私を呼ぶのなら、私を欲しがればいい。どうして、ひとりで、こんなところで泣いているんだ…!

そんな思いをしたのも、もうずいぶん過去になってしまったが。
いまでも佐伯克哉が私のそばから消えていかないか時々心配になる。
雨よ、私のこの、理不尽な不安を洗い流せ。
あの夜のように私を彼に結びつけろ…!


「孝典さん、お帰りなさい。」

愛しい声が背後から鼓膜をくすぐる。
振り返れば、佐伯克哉がそこにいる。

「お帰り、克哉。」

私たちは連れ立って私たちの部屋に帰る。
暗闇にまぎれて、お互いのぬくもりを、掌で伝え合いながら――



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