D.Gray-man神田夢
教団の朝は…遅い。
というよりは朝も昼も夜もない。
私は既に太陽が顔を出し切った午前10時に目が覚めた。
ふぁ~と大きな欠伸を噛み殺すこともなく、寝ぼけた顔で食堂のジェリーの元へ向かった。
「あら~。今日も遅いのね」
「うーん…野菜ジュース…ちょうだい」
「はいはい。目が覚めるくらいにがーいやつ、作ったげる!」
「ふつーのでいいのよ、ふつーので」
そんな冗談を言っていてもまだ頭は寝ている。
大きなグラスにたっぷり入ったグリーンの液体。
それを持ってテーブルに付くと、目の前にリナリーが現れた。
かわいらしいパンケーキの乗った皿を持っている。
「おはよう」
「おはようリナリー。朝からかわいらしいもの食べるのね」
「そっちのほうが健康そうよ?」
「ほめてくれてありがとう」
「ところで、なんで最近朝遅いの?」
「へ!?」
突拍子もないリナリーの質問に、私は危うく野菜ジュースをユカにぶちまけるところだった。
寸前のところで、グラスを掴み、テーブルに置くと、何事もなかったかのように、こう答えた。
「最近、読書にハマってて」
「うそ」
「えー。即答じゃん…」
「だって、貴女が本とか嫌いなの知ってるもの」
「う…手ごわい、リナリー…」
「神田でしょ」
「…違うわよ」
「なに、その間は」
「ちょっと考えただけよ」
「神田ね。最近、神田、丸くなったと思ってたのよ」
ふふふ、と笑いながらパンケーキを頬張るリナリー。
私はできるだけ顔を赤くしないように平常心で野菜ジュースを一気飲みした。
今日に限って、苦い。
「野菜ジュースは恋のように甘くないのよ~!」
「うっさい!黙れ、ジェリー!!!」
※ ※ ※
そういえば、ユウとの関係が皆に広まったのって…
結局はジェリーのせいなんじゃ…
懐かしい日々を思い出す。
そんな今日も、既に午前10時を過ぎていた。