この演習林に迷い込み一週間が経過しようとしている。

時は秋。
演習林でキノコ狩りを強行中だ。
ご察しの通り、無許可である。

マツタケが出るらしいという噂を真に受け、小遣い稼ぎに一狩り行こうぜという阿呆軍団に唆され、そんな輩が来ることを想定して毎年配置される運動部臨時警備員、またの名をCP9……一体何の頭文字なのかは不明……の目を掻い潜り、
演習林へ侵入するまでに当初の半数が脱落、他、虫がダメ、野宿がムリ、海のほうが好き、ハンバーガー食べたい等の理由により、一人減り、二人減り、気がつけば何の収穫もないまま二人ぼっちで一週間だ。

すでに担当教諭や友人という名の保護者諸君には、学務課より注意勧告が伝えられているはずだ。
余裕で繋がるスマホには怒涛の着信履歴。
怖い。
割と楽しいけれど、飽きたのでもう帰りたい。


「ねえ、ポートガス君。そろそろ帰ろうよ。海派の君たちに山系統のあれこれは、むつかしかったのだと思うよ」

「……俺、小せぇ頃は山派だったから」

「曖昧な知識ほど恐ろしいものはないよ……いいじゃん、アカッポは採れたし……これ、バター炒めにするとおいしいよ」


面倒なので手っ取り早く食欲に訴えかけようと試みる。
案の定グッときたらしく動きが止まったため、追撃のために小さく「そして白米……」と呟くと、ぐぬぬ……と目をつむり眉間にしわを寄せて呻きだした。

わかりやすく葛藤している。
永遠に続くと思われる彼の成長期とそれに伴い止まることを知らない食欲は、もはや白米の無い生活に耐えられなくなっているはずだ。
私も食べたい。

それに、この演習林ではマツタケは採れない理由がある。
実は侵入直後から薄々気づいていたが、他の食材が採れるかもと思い、黙っていたのである。


「でも……まだマツタケ採ってねえもん……」

「ムリだよ……だってここ、松林じゃないもん……生えないよ……」






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