どこかで聞いた話でもないが、ふと思い至って優雅に朝食の紅茶をすする相方に向き直った。
 大切なものを見捨てて逃げて死ねずにいる人間とはなんと愚かだろう。
 すると相方は当然のことのようにこちらに冷笑を向けるのだ。

「馬鹿か、どんな大切なプライドでも自分の命が一番に決まっている」
「お前どっかの悪役みたいだぞ」
「盗賊が正義の味方になれるとでも思ってるのか?」

 冗談のように笑う相方を横目に正義の味方なんてこんな平和なご時勢必要もないだろうと頭の片隅で考えた。革命家などというものは、まったく時代遅れだ。

「じゃぁお前は俺が死にそうなときでも見捨てて逃げるか?」

 我ながら嫌味な質問ではあったが彼の短い返答も底知れないくらい嫌味であった。

「当然だ」

 なんとも返答に困り、情のない友人を持ったものだと吐き捨てると、かたりとティーカップを皿に置き、彼はゆっくりと上半身をこちらに乗り出して顔を寸前まで近付けて来る。そして不意に艶のある作り笑みを浮かべられた。

「お前が僕に生きろと望むに決まってるからな」

 なんだかしてやられたような気持ちになり眉を寄せる。

「自信満々だな」
「まぁね」

 ああでも、と彼は何故かわざとらしく思い出したように視線を俺の右上に向けた。

「お前がいなかったら生きていけないかもしれないな」





(赤面の前に溜息をひとつ)




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