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今晩は。こんな時間までどうしたんですか? 眠れないようなら、温かいミルクでも入れましょう。ぐっすり眠れますよ。 …おっと、いけない人ですね。 こんな夜更けに、そんなに愛らしい表情で男を見上げるなんて反則ですよ? ………っ! 身体が冷え切っているじゃないですか! まさか…。そんな、いつから、ここに立っていたんですか? こんなに白い顔をして……。 …っ、少しだけ、失礼します。 決して貴方を傷つけることはしないとお約束しますから、今だけ。 貴方の手を取ることを許して頂けますか? 私の熱が、少しでも貴方に伝わるといいのですが。 ああ――いけません。 お願いですから、その先の言葉は、言わないで。 言わぬが花――という言葉が、この国にはあるでしょう? 秘めた想いは、秘めたまま。 貴方には、貴方の生きるべき世界がある筈です。 そして、私も……じき、日本をたちます。 この逢瀬も、この温もりも。 ただ、一夜の夢として――永遠に、この夜に閉じ込めることにしましょう。 さあ、最後のお願いです。 ――Close your eyes . My beloved princess. ≪遙かなる時空の中で5 アーネスト・サトウ≫ |
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