「海と空と」


松陽先生は教壇をちょこまかとせわしなく動き回っていた。今日は化学の授業だ。



「水はかなり特殊な物質で固体である氷が液体の水に浮くことが珍しく、他の物質で液体よりも固体のが軽い物質はそうありません。………空が青いのも海が青いのも同じ理由で………海と空は水平線で一体になり一つになっているように見えますが、実際はどこまでも平行で交わることはなく、どんなに海は空に手を伸ばしても届かないのです。………色が青いのも空の色を映しているからで………」

途切れ途切れに先生の声がアタマにエコーした。



いつのまにか授業も終わり、ヅラは銀時に話しかけた。

「なあ、銀時」

「何、」銀時は珍しく起きていた。眠たげで物憂げなせいか半目しかあいていない。

「…今日の化学の授業の話けっこう面白かったな」続けて話しかけると銀時は睫をしばたいた。

「マジで?面白い?今日のは訳わかんなかったんだけど」

「…お前という奴は…真面目に聞かんか」

「途中から脱線してるように聞こえたけどなぁ~」銀時はヅラのデコをぐーでこづいた。

「なんだ、少しは聞いてるじゃないか」

「まあな」

「…先生はロマンチストだからなあ。…まっそこがいいんだけど」

「……2つとも…全然違うのにあんなに似てるんだな…」

「…おう」

相反する存在か。

「俺は……海だな。きっと」

「何が?」

「何でもない」銀時は、またヅラのデコをぐーでこづいた。





「次は川で水泳だな。銀時、何をしてる、着替えに行くぞ」

「タルいんだけどぉ…庭の木蔭にでも行って昼寝しねー?」

風通しのいい木蔭で昼寝か。川で水遊びか。どっちにしても勉強しようとゆう気は毛頭ない。



結局二人は、他の生徒達がクロールだの平泳ぎだの泳いでるのを尻目に川岸でダラダラと水を蹴ったりして遊んでいた。

ヅラがさぼるのは非常に珍しい。



「さっきの話だけど。俺は魚だ。銀時が海なら俺は魚になるぞ。」

何だよ、さっきの聞こえてたんならそう言えって。

「じゃあ俺が空っていったら、どうする?」

「んー…船かな。」間髪入れずに打てば響くように答えた。

「森なら、土だろ。電車なら線路、プリンにキャラメルソース、おすぎとピー子、林家ペーにパー子、他には…」

セットでなくてはならないものを次々と並べてく。



「俺達は何に例えても必ず傍にいるのだ、つくづく腐れ縁だな。はっはっは」

「ああ、そうだな。」



だって、似ているのに並行してまじりあわない存在なんて。

ずっと手が届かないなんて、考えたくもない。



銀時は青空に手をかざした。澄みきった碧がまぶしい。

遙か先に大きな入道雲が見えた。蝉の鳴き声も聞こえてくる。

夏真っ盛り、暑さは当分続きそうだ。


銀時は今はまだ手が届く範囲にいる友人を、目で追いかけた。









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