僕の彼氏




僕の彼氏は、プライドが高い。
冗談じゃなく、エベレスト級って言っても過言じゃないと思う。
他人から怒られるのも注意されるのも嫌いだし、ちょっとあると言い方キツく反撃してくる。
でも怒られるのが嫌だし、間違ったりするのも嫌だから人知れず努力して完璧になろうとしている所は、とっても可愛いと思う。

僕の彼氏は、甘えん坊だ。
それでいて寂しがりでヤキモチやきだ。
僕がちょっとトイレに行くだけでも寂しがるし、そわそわとして着いて来たがる。
普段は男らしい仕草を自然とするクセに、寝る時は僕に腕枕じゃなくて僕に腕枕された方が嬉しそうにするの、本当に可愛いと思う。

「何?」
「んーん。何でもないよ。」

いつもの休日。
てきぱきとお家映画時間の準備をする耀司くんの背中を見ていると、見過ぎていたのか怪訝そうな顔をして耀司くんが振り向いた。
このお家時間だって、耀司くんはどう過ごして良いのか最初は分かってなかった。
お昼寝だってしたことなかったし、沢山映画のブルーレイとかを持ってるわりには時間無いからって寝る前にちょっとずつしか見てなかったし。
会社ではチャラい俺様みたいな感じなクセに、面倒臭いくらい真面目で。

当時の僕は耀司くんのことを好きでもなんでもなかったのに、どうしても放っておけなくてついつい【悪いこと】を教えてしまった。
お布団じゃなくて敢えてソファベッドを使ったお昼寝から、寝ながら観る映画にポップコーンとお茶。
つまりTHEお下品なナマケモノ生活だ。

最初こそ信じられないって顔をしていた耀司くんだったけど、お昼寝という行為そのものの魅力にすっかりハマってしまって、今や自分から率先してお昼寝の準備をする始末だ。
単純で可愛い。

正直に言うと、もう耀司くんが僕の腕の中で気持ち良さそうにすよすよと寝たその日から僕は耀司くんにオチてたりする。

だってさ、考えてもみてよ。
どう考えてもノンケ勝ち組陽キャな、自他共に認めるそこらのアイドルよりもキレイで整った顔をした男がだよ?
同じ男の………でもどう考えても絶対好みじゃないだろう陰キャの、どこにでもいる顔をした男の腕の中で無防備に寝てるんだよ?
好みじゃなくても普通にオチるわ、そんなん。

「康介!」
「うわっ!びっくりした、どうした?」

そんな風に回想に浸っていると、少し不機嫌そうな顔の耀司くんが少し大きめな声で僕を呼んだ。
どうやら放っておかれたと思って拗ねているらしい。
なにそれ、ちょっと可愛過ぎじゃないか?
思わずわしゃわしゃと犬にするみたいに頭を撫でれば、耀司くんは嬉しそうに目を細めて笑う。

「考え事か?」

そのまま全身を使って甘えてくるもんだから、ほんと可愛い。
声がちょっと不機嫌そうで複雑な感情なのも、可愛い。
すり寄って来る頭や首筋に何度もキスしながら宥めてあげれば、ぎゅうぎゅうと僕を抱き締める腕の力を強めてくる。
ちょっと苦しい。
でも、嬉しい。

思えば僕がここまで好きだと表現してもらえたのは、一番最初に付き合った彼氏だけなような気がする。
結局、その人は僕ではない人をあっさりと好きになって浮気してどこかに行ってしまったけど。
でも何故だろうか。

「うん。耀司くんのこと、考えてた。」

彼は絶対に、大丈夫だと信じてしまう。
勿論、この好意に胡坐をかくだけのつもりはないけれど。
それでも僕は、彼から捨てられるまでは自分からも好意をちゃんと告げていこうと思う。
子供みたいな無邪気なこの笑顔を、ずっと見ていけるように。



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