見上げれば青い空。

どうしてこんなにも憧れるのか、分からなかった。

俺たちは地を這いずり回って生きるもの。

翼はあれど、天への道は遠く、せいぜい人の世を見下ろす程度。

それでも十分だと思っていた。

人間たちよりはあの空に近づけるから。



あの空の向こう、何か大切なものを忘れてきてしまった気がする。

青い、青い、ただ青いだけで何もないあの空の向こう。

ほんとは忘れているだけではないのか?

何もないなんて、ほんとは嘘だ。

そうだ、俺は知っている。

輝く楽園が確かにあったことを。



遥か古、神の住まう処あったその楽園は、

今は主を失い、真夜中を彷徨う。

光あれども、それはまことの光にあらず。

疑うことを知らぬ聖き者たちが信じるは偽りの光。

いと輝けるものは、聖性を失いし神に絶望し、

数多の同士を集めて翼を黒く染めた。



今は昔。

それは地の底に伝わる御伽噺。

青い空の向こうに閉じ込められた、ありもしない魂の記憶。


(『MISSA BREVIS』)






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