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「 もう少し、このままで」 けいおんSS
半分開けた窓から、冷たい風が吹き込んでくる。読んでいた本のページが風邪で捲れて、私は思わず顔を顰めた。 頬にかかる黒髪を掻き揚げ、後ろのベッドの上で胡坐をかいている律を見た。 律は、眺めていた雑誌から顔を上げ、ぼんやりと窓の外を見ていた。 「りつー」 声を掛けてみる。反応なし。いつもカチューシャで上げている前髪をゴムで縛り、トレーナーに短パンという服装の律は、どこかすごく遠くを見ているような顔をしていて。 私にはその横顔がひどく大人びて見えた。 そう思った途端、私の胸にざわざわと不安が押し寄せてきた。 何かを達観したような、儚げな律の表情。 そのまま彼女が窓を飛び出して、曇り空の中に消えていきそうな気がして。 私は自分でも驚くぐらい乱暴に本を閉じ、立ち上がった。それでも表情を動かさない律を横目に、開いていた窓を閉め、しっかりと鍵を掛ける。 そこで初めて我に返ったらしい律が、窓の前に立ってる私をゆっくりと見上げた。 「……澪?」 ぼんやりと声を掛けてきた律にため息を返し、私はベッドに腰を下ろした。咎めるように見つめると、律は少し頬を赤くして目を逸らした。 「な、何だよぉ」 いつもとは打って変わって弱々しく律が尋ねる。 「それはこっちの台詞だよ。どうして返事してくれないんだ?」 「え、呼んでた?」 「うん」 「い、いやーそのー、ちょっと、な」 頭をかきながら律。明らかにごまかそうとしているのが声で分かった。 「考え事?」 「ん?んー、そんなとこ、かな」 私が聞くと、律が曖昧に答えた。 「何考えてたんだ?」 「いや、そのぅ……星がきれいだなー、とか?」 「とかって私に聞き返すなよ。大体今日曇りだし、まだ夜じゃないし」 「う、さすが澪しゃん。正確なツッコミ」 「適当なこと言うなッ」 「えー、ホントにそう思ってるぞー?」 ニコニコと笑いながら返す律のペースに、もう私は乗せられてしまっていた。追及する気もなくして、ぷっと吹き出してしまう。 「あー、笑った笑った」 「もう、しょうがないな。律は」 私はそう言って体を少し倒し、律の肩にもたれかかった。 「わっ、澪?」 律は少し驚いたみたいだけど、だからといって私を押し戻したりはしない。そのままの姿勢で、私を支えてくれている。 「律はさー」 少しだけ沈黙があった後、私は口を開いた。 「時々なんか考え事してるみたいな顔してるよな」 「そーか?」 「うん。なんか、すごく遠くを見てるっていうか」 「うーん、あんま自覚ないけどなー」 「そんな律見てるとさ、その、律が儚く見えるというか、どっか遠くに行っちゃいそうに見えるというかで……」 そこまで口にすると、私はしまったと口を噤んだ。喋りすぎだ。 案の定、律は肩に体を預けている私を見てニンマリと笑っていた。 「あ、いやそのなんだ、今のはその……!」 慌てて律から離れて言い訳をしようとしている私を、律はニマニマと見ている。 「澪しゅわんは寂しがりやで心配性でしゅねー?」 いたずらっぽく笑いながら言う律。返す言葉がない。 「な、何か悪いか?……その、友達がいなくなるなんて、寂しいこと……だろ……」 絞り出すような声で、ようやくそれだけ言えた。反論にもなっていない。余計律にからかわれるかもと思いながら顔を上げてみたが、意外にも律は真面目な顔をしていた。 そして。 「馬鹿だな」 そう言うと、私の肩に手を回して、そっと抱き寄せた。 「あたしが、澪を置いてどっか行ったりするわけないだろ」 耳元で律が囁く。なぜか心臓が跳ね上がるような感覚に襲われた。心なしか顔が熱い。 「そ、そんな照れながら言ったって、説得力ないぞ」 ようやく出した強がりはどうやら図星だったらしい。律が思い切りひるんだのが伝わってきた。 「な、なんだよ!澪が寂しがり屋なのがいけないんだろ?折角人が元気付けてやろうと……」 「でも」 遮るように飛び出した私の言葉に、律は頭に疑問符を浮かべたような表情をする。キョトンとしたその表情の意外なかわいさに笑みをこぼしそうになるがそれを押さえ、頬の熱がまた上がるのを感じつつ、私は律の耳に唇を寄せて、言った。 「――もう少し、このままで」 fin. はい、初のけいおんSSだったわけですが、いかがだったでしょうか。りっちゃんといえば元気印が魅力ですが、時々乙女な一面だったり、儚げな表情をしたりするのがまたいいですよね!(ダマレ ってことで生まれたのが今回のお話です。ちょっと短いけど。 いやあ、澪律いいよね、澪律。またその内書いてみたいです。 |
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