パチパチありがとうございますv

今回は本編とは全く関係なく、

大学生になって都会に出た守護者達の

「エスカレーター・シリーズ」♪

 第1弾は「拓磨&祐一」

 第2弾も追加しました。

 ランダム表示なので、見たい方はおみくじ感覚でぽちっとしてみてください。

 今後色々増やす予定です。





『エスカレーターは魔所』






 講義間の学食は、昼時でもなければ大学生にとっては格好の休憩スポットとなる場所で、拓磨と祐一は二人、向かい合って、セルフサービスで注いできた茶を啜っていた。

「聞いて下さいよ、祐一先輩。こないだ、電車乗って買い物でかけたんすけど」

 一口で飲み干したプラスチック製の湯呑みを机に置きながら、拓磨はある日の出来事について語り始めた。


 講義を入れていない時間帯に、拓磨は雑誌で目をつけた夕方限定のタイヤキを求めて、初めての駅に降り立っていた。

 帰宅する学生や会社員の流れに押されて、何気なくエスカレーターに乗り込んだところ、後ろから腰の付近をとんとん、と叩かれたという。

『あの、ちょっと通りたいんですけど』

『あっ……すんません』

 振り返れば、拓磨より小柄な女性が、一つ下の段に片足をかけ、今にも昇りたそうな様子でいた。拓磨の隣には別の人が立っており、女性がエスカレーターを昇る妨げになっていたのだ。

 声をかけて来た女性の後ろに明らかに苛立った表情の会社員の顔が覗く。

 隣側に人がずらりと並んで立っている以上避けるスペースもなく、拓磨は慌ててエスカレーターを昇り始めた。

 途端に拓磨側の列だけ、人が一斉にエスカレーターを歩き始める。ここで拓磨は都会に出て初めて、エスカレーターでは片側の列を歩く人用に空ける必要がある、と学んだという。

「エスカレーターって、自動で動く階段じゃないっすか。なんでわざわざ歩く人用の列があると思います? 黙って乗ってりゃ動くんだし、歩きたければ階段を使えばいいだろうと」

 祐一は、一口茶を飲むと、湯呑みを手に乗せたまま、淡々と告げた。

「都会は、忙しなく動く人間が多いからな。一秒でも早く目的の場所に辿り着きたい者にとって、エスカレーターの片側は貴重なスペースなのだろう」

「でも帰りの時にはちゃんと歩かない方の列にいたけど、中身をつぶしたくないタイヤキ持ってるってのに、歩く連中に手提げ蹴られるし……」

「お前は体格が良いから。横幅が狭いエスカレーターだと、通行人とぶつかってしまうんだな」

「なんっつーか……都会って疲れますね」

「あぁ。季封村が少し、懐かしいな」

 柔らかく微笑する祐一に対し、拓磨は過日のことを思い出してか、不貞腐れたように頬杖をつく。

「祐一先輩は、エスカレーター乗るだけ派ですよね」

「あぁ。寝れるからな」

「は?」

 目をぱちくりさせる拓磨を余所に、祐一はあくまでマイペースに茶を啜る。

「一秒でも寝る時間が確保できる。貴重な場所だ」

 のんびりとした物言いに、故郷に帰らずとも気安い雰囲気を感じて拓磨は苦笑した。

 同郷の者とこうした時間を過ごすのは、悪くない。



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 大学生になって都会に出た守護者達のエスカレーター・シリーズ第1段。

 拓磨と年上の守護者だと、兄弟のような感覚になれるのかなぁとぼんやり。

 色々なペアで展開していきますので、次回もお楽しみに~

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