パチパチありがとうございますv

今回は本編とは全く関係なく、

大学生になって都会に出た守護者達の

「エスカレーター・シリーズ」♪

 第3弾は「凛と遼」

 第1~2弾も含めランダム表示なので、見たい方はおみくじ感覚でぽちっとしてみてください。

 今後色々増やす予定です。






『エスカレーターの使い方』





 凛は今、ひとつの難関を前に緊張していた。

 都会に出るまで平坦な構内しか見て来なかった駅内に突如、見慣れぬ乗り物が現れたのだ。

 人の多さもさることながら、彼らの流れを観て察するに――――自動で動く階段に乗って、上の階へ向かう道程を楽にするもの、らしい。

 小柄な少年は、前を歩く青年達に引き続き、恐る恐る動く段へと足を踏み入れる。

 乗った途端に自然と体が前のめったが、なんとかふらつきを抑えてしっかり足を落ち着けると、喜色満面の笑みを浮かべた。

「わぁ、凄く便利な乗り物ですね! これなら、足を怪我した時でも簡単に昇り降りができます」

「いや、松葉杖ついてたら危ないからな。そういう時は、エレベーターを使え」

 電車を降りた人々が、殆ど先に行っていたことが幸いしただろうか。

 あまりに子ども染みた言動に、凛の前に乗り込んでいた遼は、ため息を禁じえない。

 とはいえ、時代錯誤な知識しか持たない無知な相手であれば致し方ない。他の連中は能天気に先へ進んでいるようだから、身近にいる己が面倒見る他ないだろう。

 エスカレーターが自動階段、エレベーターが自動昇降機と簡略に説明すると、凛は愛用の手帳にふむふむとメモを加えている。

「でも、エレベーターがついていない駅もあるようですが」

「そんときゃ駅員を呼べ。ちゃんと手助けしてくれる」

 凛は感極まるあまり、瞳を輝かせた。

「駅は、助け合いの場なんですね! 電車にも、優先席がありますし」

「実際に譲る奴は多くないがな」

 小さなことに感動するヤツだな、と思いつつ、遼は苦笑交じりに現実的な見解を告げる。

 対して凛はどこまでも熱心に己の意気込みを説いた。

「僕は、できる限り席をお譲りしたいと思います」

「譲るのは良いが、ちゃんと吊り革か鉄棒に掴まれよ。さっきみたいにコケてたら、譲られた側が遠慮するだろ」

「そ、そうですね。きちんと、自分が立てるスペースを確保してこそ、相手も自分も気持ちのいいものなんですね! 遼様、勉強になります!」

 他人の面倒を見るなんてガラじゃないが、悪意を感じない凛相手には毒気を抜かれるせいか、自然と「仕方ない」という心地に晒される。

 表も裏も感じない様子は、ふと過ぎ去った童心を思い起こさせる。

 昔は弟や従兄弟が欲しいと両親にせがんで困らせた日もあった。

 例えば家系のしがらみ云々に縛られず、ありふれた家庭に育っていれば、ただの親戚筋として年の離れた従兄弟の世話をする日もあったのだろうか。

(……感傷なんざ、らしくねぇ)

「さっさとしろ。電車は待っちゃくれねぇんだ」

「はいっ……うわぁ!」

 降り様にバランスを崩して前に倒れかけたところを、すかさず遼が手を取り、倒れ込まないように支えてやる。

 前を行く同輩達が振り返って、二人の様子を暖かく見守っていた。


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 都会に出た守護者達のエスカレーター・シリーズ第3段。

 今回は意外に相性がいいんじゃないかな、と思う新しい守護者同士の2人。

 遼は守護者の面子の中でも封印と離れて育てられたためか、実は常識人なイメージが強いです。

暴走気味な守護者相手にかなりマトモなことを言ってることが多いなと(笑)

 対して凛はひたすら真面目で健気なイメージ。

蒼黒補完ではいずれ白華と絡めて凛の碁の話なども書きたいです。真珠でもひとつ区切りをつけてあげたい子のひとりです。

 さて残りのペアも数少なくなって参りました。次回もお楽しみに~

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