※拍手ありがとうございました!以下はフレン夢になっております※ ※まだまだ拙い文章力しか持ち合わせていませんが、よければ閲覧して下さい※ ※ドリーム嫌いな方は読まないようにして下さい※ 28. オレが信じられない? 「あ、フレン。」 「やあこんにちは。」 「こんにちは。」 お互いに小さく会釈しあってにこっと笑い合う。 何やら幼稚園の頃の挨拶のようで可笑しいが、フレンと付き合って十数年この挨拶だけは変わっていない。 何故だか朝でも昼でも夜でも「こんにちは。」だが、癖なので仕様がない。 ちなみに今はとっぷりと日の暮れはじめた宵の口。 何故かフレンの手にはコンビニの白い袋が抱えられている。 「何買ってきたの?」 「肉まんとあんまんとピザまんとブタさんまんシリーズ、かな。」 「た、大量だね。」 「うーん、カレーだけじゃ足りないからさ。」 「お、おかず代わりか……。」 フレンは小さな頃から大食漢。 なのにも関わらずかなり細身だ。 傍から見ると人が良さそうな上、柔そうな紳士であるが、実のところ彼はフェンシングでは結構名が知れている。 「まあまだカレー出来てないだろうから、少し公園で暇潰そうか。これでも食べて。」 「いいの?ユーリ怒るよ。」 「料理の途中で手を出したほうがユーリは怒るから。」 いや、怒るというよりも焦るのでは、と言いたかったが、特殊型料理下手の自覚がない彼には言っても無駄だろう。 公園は私たちの家の丁度中間地点にある。 遊具も二つ三つな上、どの遊具も錆びだらけというしょうもない公園だが、近所に遊び場なんてここくらいしかない。 都会に住むというのは子どもにとっては不便なことこの上ない。 私たちは例外なく錆び付いた円形のドームが穴ぼこになったような遊具の中に入ると、近くにある街灯の小さな明かりを頼りにビニール袋の中から中華まんを取り出した。 はい、と手渡されたのは可愛らしいブタの形をしたピザまんだった。 ちなみにフレンは特大サイズのあんまんを既に食べ始めている。 何やら物凄く幸せそうだ。 「最近どう?」 「んー……ぼちぼち。フレンたちはどう?」 「僕もぼちぼち、かな。」 「ぼちぼちですか。」 などと軽く談笑しながら中華まんを頬張っていると、フレンがこっちを見ていることに気付いて口を止めた。 「な、何?」 「美味しそうに食べるなと思って。」 「フレンだって食べるの好きだよね?」 「好きだけど、本当は食べてるの見る方が好きなんだ。」 「……見られるのは好きじゃないです。」 「ごめん。」 フレンは苦笑しながらもちゃんと視線を外してくれた。 年頃の女として中華まんを口一杯に頬張ってる姿を見られるのは、やはり恥ずかしい。 幼馴染とはいえ、美形なら尚更に。 そしてその美形が初恋のまま現在まで続いているのだとしたら余計にだ。 なんだかこうして二人で遊具の中に入っていると幼いころに戻ったみたいだ。 夢の中で過去の映像が映し出されている中、今の自分の意識だけがしっかり反映されているみたいに現実味がない気がした。 こうして会うのがとても久しぶりだからだろうか。 「そういえば、一ヶ月ぶりくらいだね、会うの。」 「そうだね。最近忙しかったから。」 「私も。時間が欲しいよ、全く。」 「時間は作らないと出来ないよ。」 「会う努力しないと会えないってこと?」 「そうそう。」 「うん、そっか……でも今日会えたよね。運かな?今日何位?」 「今日は1コマ目から授業があったから星座占いも血液型選手権も見てないんだ。」 「うーん………残念。」 「あはは……どうにも君は鈍いんだな。」 「鈍い?」 むっとして自分より少し高い位置にあるフレンの顔を睨みつける。 鈍いというのはどう考えてもこの場面においては褒め言葉じゃないし、フレンの苦笑を見ても私が何らかの失言をしたのが分かる。 ただそれをはっきりと言わずにオブラードに包んだ物言いをしたことに少しかちんときた。 言いたいことがあるならはっきり言え、という意味をこめて私はじーっとフレンを睨み続ける。 暫く困ったような顔をしていたものの、私の無言の責め苦に観念したのか溜め息をつきつつ口を開いた。 「今日は会う努力をしたから会えたってことだよ。」 「してないよ。」 「君は冷たいな。僕はわざわざ近くのコンビニ素通りして君ん家の近くのコンビニまで来たっていうのに。」 「…………………………え。」 多少のタイムラグのあと私の中華まんがぼとりと地面に落ちた。 あ、と言う前にフレンの指先が頬に触れて私はびくっと肩をはねさせる。 その指先が口端に移動して軽く唇を拭った。 「……………えっと、」 「ついてた。」 「う、うん。ありがと。」 「ううん。」 なんだかいつもと声が違う。 雰囲気とか息遣いとか、そのまま髪を梳くように滑る指の動きだとか。 どうしようかと地面に落ちて砂まみれになったブタの形のピザまんの鼻のあたりと、フレンの顔を交互に見ながら私はこくんと生唾を飲み込んだ。 「嫌かい?」 「え、な、何が?」 「こういうことされるの……迷惑かな?」 私は口で答える代りに全力で首を左右に振って否定する。 延々片思いをし続けてきた相手にこんなことされて、いやなわけない。 むしろ今は夢見心地だ。 頬を滑る指先の温もりは、ひんやりとした空気の中では一際暖かく、そして心地よかった。 そしてその夢のような暖かさに気づいて、いや、やはりそれが夢かもしれないということに気づいて、私はフレンに尋ねてみることにした。 「ね、ねえ、フレン。」 「うん?」 「それって……あの……」 「好きだよ。」 まるで囁くように紡がれた言葉だったけれど、私は赤面出来なかった。 フレンの手から逃れ、少しだけ距離を開ける。 「フレンってば……今日4月1日じゃないのに……。」 「嘘じゃないよ。」 「だって久しぶりに会って、二人で中華まん食べてるときにそんなあまーい言葉言われても……。」 「……確かにロマンチックじゃないね。タイミング間違えたかな。」 あはは、と軽く笑うフレンにはさっきまでの凄味はない。 むしろ冗談でしたくらいの軽さだ。 ああ、よかった。 やっぱりほんの冗談だったのかと、残念だか安堵だかわからないため息が出た。 「……じゃあ、後日改めて言いなおすよ。」 「……………………………。」 ぎぎぎぎぎとぎこちない動きで首を動かすと一向に表情が変わらないままあんまんを頬張っているフレンが目に入った。 目は合わない。 「…………えっと、フレン……?」 「何だい?」 「えっと、さ…………冗談、でいいんだよね?」 「どうして?」 「いや、そんなこと……どうしてっていうか……。」 「本当だよ。心配しなくても、僕は嘘は好きじゃないから。」 「で、でもさ……今までずっと一緒にいるけどさ、全然さ、そんなのさ………。」 混乱していて一つの語尾を多様してしまっている。 そんな疑り深い私に、フレンはコーヒーで中華まんを流し込んで、また笑った。 「今までは頑張って隠して来たんだ。」 「なんで?」 「言ったら気まずくなるんじゃないかとおもって。」 「……………。」 そりゃあ私が振るなら気まずいだろうけれど、何でそう決めつけるんだ。 確かに告白が100パーセント成功すると言う事はまずないだろうけれど、変な処で控えめな人だ。 しかしその反動が今に至っているとかと思うと、本当に彼は極端だと思う。 「僕が信じられない?」 「…………そういうことじゃないけど、んー……何か混乱中。」 「そっか……」 「でも……。」 「ん?」 「……もう一個ブタさんくれるならOKしたげる。」 「本当?」 「…………うん。好きだから。」 「ブタさんまんが?」 「……もう、信じられない。」 「あははごめんごめん。そっか……そうか、何か嬉しいな。」 私たちは二個目の中華まんを頬張りながら、またいつもと変わらないまったりとした時間を過ごす。 結局体が冷えきるまでそこにいて、よかったらユーリのカレーでも食べていかないとのフレンの言葉に甘えて、私もお邪魔することにした。 ------------------------------------------------ 100のお題から 掲載期間が終わったら100のお題部屋に移動します 落ち?ないです 20101219 |
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