拍手ありがとうございます



大したモノではございませんが、お礼のssです。ニルティエですよよろしければ召し上がってくださいませv



     ★★★



不器用で愛らしい。



 時計を見れば深夜だった。



 割合すっきりとした目覚めに、けれども気だるい身体に嘆息をつきつつ額に張り付いた前髪を掻きあげようとすると、



「…ハンカチ?」



 前髪の代わりに白いハンカチが額に張り付いていた。



(誰かが冷やしてくれたのか…?)



 記憶では部屋のドアはロックしてあったと思ったが、はっきりとした記憶はない。



 とりあえず、誰かの親切を素直に受け取っておくことにした。



「大分、熱引いたか…」



 情けなくも風邪を引き熱まで出した己に自己嫌悪し、汗でぐっしょりと濡れたシャツを着替た。



 とうに空になった容器を片手に飲み物を補給しにキッチンブースに行けば、ピンクのカーディガンの背を向けなにやら作業中の人物に出くわした。



「…ティエリア、おまえ深夜になにやってんだ?」



 カタッ 周りに気付かないほど熱中していたのか、声をかけるとティエリアはびくっと大きく肩を揺らし、ナイフを取り落とす。



「ロ…ロックオン・ストラトス…っ」



「ぷ。おまえさん、声が裏返ってるぜ」



 珍しいティエリアの様子に笑いながら足元に落ちたナイフを拾い上げ、渡そうと見た先には



「…リンゴ?」



 無残にも原形を留めないほどにバラバラにされた、恐らくはリンゴであったはずの物体がまな板にゴロゴロ転がっていた。



「これ、は…」



 明らかに動揺しているティエリアのまえで、転がったリンゴの一欠けを指先で摘まんで口のなかに放る。



 渇いた喉に染み渡る甘さ。



「おまえ、大切な食料を粗末にすんなよ」



 地上にいるときならまだしも、宇宙では補給も一筋縄でいかない。



 配給も決められたメニューと量で済ませているのだ。



 それが、まな板のほかにボウルに3杯分刻まれたリンゴの数は、トレミーに乗艦している人数分はくだらないだろう。



 ロックオンがもう一欠けリンゴを摘まんだところで、いきなりティエリアががしっとその肩を掴んだ。



「ティエ…ぅんぐ!」



 驚いたロックオンが見たのは、大粒の涙で潤んだ紅い瞳。



 しかし、声をかける間も与えられず、口のなかにティエリアが握っていたらしいリンゴが押し込まれた。



「貴方など…ずっと、寝込んでいればいい!」



 とんでもない捨て台詞を置いてブースを去った後ろ姿を、リンゴを銜えたまま呆然と見送った。



(なんなんだ一体?)



 いつも不遜な態度を崩さないティエリアを泣かせてしまうほど、傷つくことを言っただろうか、とロックオンは口に入ったリンゴを取り除く。



「…これ…」



 ふと視線をリンゴに落とすと、ティエリアが口に押し込んだそれは、皮をV字に切った…形は歪で耳であろう皮の片方が欠けてはいたが…うさぎの形をしていた。



 ボウルやまな板のリンゴを観察してみると、この形になるまでの進化の過程が見えた気がした。



「けど、なんでティエリアがこんなことしてたんだ…?」



 首を傾げつつ、一番出来のいいそれは持ったままで進化の過程のリンゴを食していると、ドアが開く。



「ロックオン?寝てなくていいの?」



「ミス・スメラギ…」



 はふ、と欠伸を噛み殺した戦術予報士がロックオンの手元を覗いて、目を眇めた。



「ティエリア、ちゃんと出来たのね」



「…どういうことですか?」



「ふふ、ティエリアったらあなたの部屋のまえでウロウロしてたから、風邪にはうさぎリンゴを食べると早くよくなるって吹き込んでみたのよ」



 いつの間にそんなに仲が良くなったの?と尋ねられて、そういえば最近態度がやわらかくなったな、と気付いたロックオンにもやはり理由は判らなかった。



 そうしてスメラギに唆せられる形でキッチンブースに引き籠ったティエリアは、なかなか出てこないから心配して声をかけても睨むだけで、誰も近づかせなかったらしい。



 完璧主義者のティエリアにはこのおびただしい量の失敗を晒すのは許せなかったのだろう。



 ロックオンにも完璧なきれいなうさぎリンゴを食べさせようと、こんな遅くまで努力していたのだ。



「なんでもやってのける子だけど、意外と不器用なのよね。あなたにちゃんと渡せたみたいでよかったわ」



「…そうか…」



 正確には押し込まれた、のだが、事の顛末を話すと呆れられそうなので黙った。



 適当なことを吹き込んだスメラギもスメラギだが、深夜まで自分のためにうさぎリンゴを作成していたティエリアに言った己の言葉に、ロックオンは内心深々と溜息をつく。



(まさか俺のため、だとは思わねえだろ…)



「まあ、明日からはしばらくリンゴサラダとジュースからは逃れられないでしょうけど。じゃあ、おやすみ。熱が下がったからってフラフラしてたら駄目よ」



 棚からボトルを一本取り出したスメラギは、そうロックオンに釘を刺して出ていく。



 残されたのは、下手くそだけどよく見れば愛嬌のあるうさぎと自分。



 掌のうさぎリンゴを見下ろし、真剣にそれを作っていたティエリアを想像した。



「あぁ…ったく、可愛い奴だなっ!惚れちまいそうだ」



 くしゃり、と髪を掻き、笑ってはいけないのに吐き捨てるように言った口元が緩んだ。



 泣くまで傷つけてしまったティエリアに、どう謝れば赦してくれるのだろうか。



 これが恋人であるなら、蕩けるほど甘い言葉を囁いて、腕のなかに抱きしめてしまえば…うっすらと頬を染めて渋々でも赦してくれるだろうに。



(それなら、してしまえばいい)



 単純だろうかと思う。



 それでも、一度芽生えた想いをなかったことにするには、ティエリアの涙と愛らしい行動が心に焼き付いてしまっていた。



「なあ、どうしたらいい?」



 ロックオンはティエリアの瞳のように紅い耳をしたうさぎに、ちょん、と口付けて問いかけた。



 強がりだけれど本当は脆くて可愛いあの子を、自分の腕のなかに抱く方法を。



     ★★★



 お読みくださり、ありがとうございましたw



 ティエニールな恋人になるまえの過程の話を書いてみました本篇の時間軸で言えば、19話のあとくらいかな、なんて?



 SSではほとんど、ティエリアにはニールと呼ばせていたので、ロックオンと普通の呼び名がなんとも初々しいvそして、このあと兄貴ティエを狙い撃ちに行っちゃいますvv←



 ちなみに、自分的にリンゴはサンふじと王林が美味しいと思います!




ぜひ一言よろしくデス★書いたあとは狙い撃ってくださいね♪お返事はブログにてw(もちろん拍手だけでも嬉しいですv)
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