|
ありがとうございました! ●届け、電波! 「ねぇ、りせちゃん。何やってるの?」 携帯電話を持ちながらあちこち歩き回るりせちゃん。 必死な顔でその画面を見ているものだから、周りが見えていなそうで危なっかしい。 「電波、探してるんですよー! この辺電波なさすぎ!」 うろうろ。うろうろ。 「あー・・・確かに山の中だと電波ないこともあるよね」 「里中先輩のはどうなんですか?」 「私のはちゃんとあるよ」 「えーっ」 「あ。私もある」 「天城先輩も? えーっ、なんで私のだけないのー?」 ゆるくカールの掛かった長い髪が、りせちゃんの動きにあわせてせわしなく揺れる。 身振り手振りが大げさなぐらい大きいけど、でも、その大げさなぐらいの表現が可愛いのだと、誰かが言っていた。 確かに、可愛いよなー。なんてぼんやり観察。 「先輩たち、どこのメーカーのを使っているんですか?」 「私たちはここの」 そう言って二人揃って携帯を見せる。 「そっか、そっちのメーカーなら使えるんだ。今度買い換えようかなぁ」 ため息混じりに項垂れて、携帯を閉じたりせちゃんは、それはそれは残念そうで、そこまで何を送りたかったのだろうと思わず興味が引かれた。 あんまり、こういうのって踏み込むべきじゃないって分かっているけどこの時は興味が勝ってしまった。 「ねぇ。なにをそんなに送りたかったの? それとも電話したかったの?」 「メールを送りたかったんですけど・・・」 「へぇ、誰に?」 「・・・興味あります?」 あ。しまった。ちょっとしつこかったかな。 りせちゃんはちょっと意地悪く笑ってこちらを見ている。 内心・・・実は、彼に送るのかなって、思ってた。 そう。我らがリーダーに。 リーダーはすごくモテる。 それこそ学校内外、老若男女問わず。 そりゃね。 あれだけ容姿が整ってて、勉強もスポーツ出来て、優しいし、面倒見はいいし、料理も上手いし、こんな人本当にいるの?ってくらい出来た人だけど。 りせちゃんが、リーダーを好きなのを知ってたし、多分雪子も好きだし、直斗くんも・・・ちょっと鈍そうだけどたぶん好きだと思う。 だから、少しでも気を引きたくてメールとか電話とか頑張っちゃう気持ち、分かるけど。 「べ、別に・・・」 私は興味がなさそうなフリをして視線をそらす。 でも、りせちゃんはそれで流してはくれなくて。 「先輩に、今度の日曜日に遊びに行きませんかー? って、メールしようと思ったんですよ」 「えっ!」 雪子が驚いたように声を上げる。 私は多分そうだろうなと思っていたからそんなに驚きはしなかったけど、やっぱりそうなんだって、少し、少しだけだよ? 気分が重くなった。 「そんな! だめだよ!」 雪子がむっと眉を寄せて反対する。 「なんでですかー? 誘うくらいは良くないですかー!」 「だ、だって! 忙しいよ、きっと!」 「そんなの送ってみないと分からないじゃないですか!」 「ううん。送らなくても分かるよ! 絶対ダメ!」 美人が怒ると怖いなーなんて、他人事のように二人のやり取りを見てしまったけれど、内心、雪子を応援している自分がいて苦笑した。 「千枝もそう思うでしょ!?」 尋ねている割には、強制的に「うん」と言いたくなるくらい強く同意を求められて私は困り果てた。 だって、こう言うのって個人の自由じゃん。 他人がどうこう言える事じゃないし・・・。って、回答に困っていると、りせちゃんが一つ提案をしてきた。 「じゃぁ、みんなでいっせいにメールしません?」 「いっせいに?」 「そう。遊びに行きましょうって内容のメールを『いっせーのーせ』で送るんです。こうしたら誰も抜け駆けにならないし、先輩が誰を選んでも恨みっこなしって事にしましょうよ」 「ぬ、抜け駆け・・・」 いざこう言われると、みんなライバルなんだなーなんて実感してしまう。 「いいわよ。それでやろうじゃない」 「ゆ、雪子・・・」 なにやら興奮しているらしい雪子はりせちゃんの挑発に簡単にのってしまった。 「里中先輩もいいですよね?」 「え! 私も送るの?」 「当然ですよ! 私を誤魔化せると思ったら大間違いですからね」 『みんな』って言われた時に、もしかしてと思ったけど、やっぱり私も入るのね・・・。 しかも、バレてるし・・・。 私はため息を一つ吐く。 「じゃぁ・・・とりあえず場所移動しない? りせちゃんここじゃ電波入らないんでしょ?」 「直斗くんはどうするの? みんなって事は直斗くんも入るんでしょ?」 「もちろんですよ! 移動もするし直斗も呼びます! 抜け駆けなしですからね」 すでに二人の間には火花が散っている。 私はやっぱり乾いた笑しか出なくて、とりあえずかわいそうだけど直斗くんを呼ぼうと携帯番号を呼び出したのだった。 WEB拍手お題 配布元:Abandon |
|
|