名前変換ができないので、夢主くんの名前は セツナ でお願いします
ミイラ取りがミイラになる。これはよくある例え話だ。
ミイラというのは、主に『何かを成した人』であったり、『高貴な身分』の者であることが多い。つまり、ミイラが眠る棺の中には財宝も共に眠っていることが多い。
その財宝目当てで墓を掘り返す罰当たりな連中というのは少なからずいる。
そういう連中はたいていの場合、墓に仕掛けられた罠なんかで死んだりする間抜けが多いが。まさか自分がそちら側になるとは、思ってもいなかった。
「……っ」
邪悪だとされていた竜に、トドメを刺した。好き勝手に近隣の村や町を襲い、家畜や人を殺し、金品を集めては眠る。そんな身勝手な竜に、竜殺しの毒を仕込んだ剣で心臓を貫いた。
確実に殺したと、そう、油断していた。
じゅわぁ、と頭の左側に被った何かを振り払うが、熱い。とにかく熱い。まるで焼けて爛れたように。「ァ、ぐ、」邪悪とされていた竜退治。最後に気を抜いた。やられた。「ショート王子っ」「さわ、るな」回復してこようとする僧侶を押しのけ距離を取る。
さっきから視界がおかしい。歪んでいく。
『オ前モ苦シメ。竜トシテ』
「、」
『愛シイモノヲ殺シテ、壊シテ、絶望シテ、最後ニハ殺サレテ、死ヌガイイ……』
そう遺して竜は死んだ。バキン、と紫の結晶の塊になった。
ふらつきながらその水晶を覗き込むと、自分の左側が醜く爛れて、耳の辺りに何かが生えていた。まるでさっき殺した竜の角のような……。
それを自覚した途端、バキ、と音を立てて小手が壊れた。負った傷やここまでの酷使のせいじゃない。俺の。腕が。膨張して。人間以外のそれとして膨らんでいく…。
(セツナ)
戦えない非戦闘員だからと置いてきた、竜退治に行くと言った俺を最後まで心配していた存在を思い出す。
その鎖骨の間に刻まれた焼き印。奴隷の印。
俺にぶつかった奴隷を拾い上げたのは、本当にそのときの気分で、たまたまだった。
うるさい親父への対抗心というか。抵抗心というか。お前の思い通りにはなってやらねぇよっていう、そういう行動の一環。
最初はただそれだけだった。
けど。
そう、簡単に言うなら。絆されたんだ。痩せっぽちのその体に。そのくせ懸命に仕事をこなそうとする姿に。王子に拾われた自分は運がいいからと、笑って、俺のただの気紛れでしかない、いつ捨てられるかもわからない立場だとわかっていながら、あいつはいつも笑っていた。
ああ、絆されたよ。その焼き印らしく奴隷たらんとする、自分を道具として使い潰してほしいと言うお前に、そんなことできないって、絆されたよ。
だから。その焼き印を、それを取り払うことはできずとも。竜退治という功績を上げれば、クソ親父だって、アイツと一緒になることを認めざるをえないはずだと。世論がそうさせるはずだと。そういう算段だった。
………セツナが俺に向けて手を振っている。それなのにその顔にモヤがかかっているように思い出せない。
その間にも、体はどんどん人から離れて膨らんで、着ていた服も鎧も全部駄目になって、俺が、人間でなくなっていく。視界が高くなって、背中から翼が生えて、口が裂けて、牙が生えて、すべてが、人から離れていく。
自分が何者だったのか。
ここで何をしていたのか。
どうしてここにいるのか。
思考のすべてが曖昧になっていく。
目の前には人間。「そんな、ショート王子…!」「竜の呪いだっ」「誰か、伝令を送れ! 走れ!」人間。うるさい。人間。
うるさいものは。黙らせなければ。
ズン、と紫の鱗と爪が生えた手で人間を踏み潰し、一歩、また一歩と、尾で、牙で、その生命を砕きながら、洞穴の外を目指す。
うるさい音がここまでしている。人間の音。音。音。うるさい声。声。声。
ただ、それでも頭の中で、
ショート、
と、
呼んでくれた、その音だけが。その声だけが。心地よい響きとして、最後まで頭の中にあった。
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最近出たジャンプの『新・新・十傑』というんでしょうか
キャラ人気発表もあったヒロアカのカラー絵、そこにいた焦凍が好み過ぎたので妄想して書きました!
全体的にファンタジーチック、あと短くするためにちょっと端折ってますが、それでも合計3話あります
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