衝動









「カガリ・ユラだ」

転校してきた少年は笑顔でそう告げた。
男にしては小さな体と男とも女ともとれる中性的な顔立ちは男ウケしそうだとアスランは内心思った。
男子高であるこの学校には教師の中にも女性が居ない。
その為か、中には男に走る生徒も少なくない。
被害者となった生徒をアスランは知っていた。
その被害者の中に彼もまた入るのだろうとアスランは思った。


午前中の授業が終り昼休みになってアスランの予想は的中した。
一人の生徒が転校生を教室の外に連れ出したのだ。
弁当を持ってきていないことを理由に購買にでも連れ出したのだろう。
購買に向かう二人を見ながらアスランは持参したパンを口に含み、そう憶測した。
けれども、別の考えも頭に浮かんでいた。
その考えの方が可能性が高い事をアスランは知っていた。だが、それはアスランが気に掛けるべきことではなかった。
浮かんだ考えを打ち消すように緑茶を飲み、アスランは教室を後にした。


屋上に続く扉を開けてアスランは目を細めた。
太陽の光が眩しかったからではない。
屋上の隅に見覚えのある金髪が見えたからだ。
購買にではなく此処に居るという事は、やはりアスランの予想通りだったのだろう。
それならば、連れ出した生徒も彼と一緒に居る筈だが、屋上には彼とアスランしか居ない。
どういうことだろうか。
そう考えて、アスランは馬鹿馬鹿しいとため息を吐き出した。
そんなことは自分が考える価値もないことだ。
一人になる為に来た屋上ではあったが先客が居るならば仕方がないと踵を返そうとしたところでアスランはその動きを止めた。
微かに声が聞こえたからだ。
もしかしたら自分に話し掛けているのかもしれないと耳を澄ますが、言葉と呼べる言葉は聞き取れない。
震えている後姿を見て、やっとアスランは彼が泣いているのだと悟った。
それは意外な姿だった。
自分が見てきた被害者は泣く行為に至る前に精神をきたし、口も聞けない状態に陥る者ばかりで涙を流す人間を見たのは初めてだったからだ。
声を掛けるべきか、出て行くべきか、アスランは迷った。
出て行くのが優しさなのかもしれない。けれども、興味がアスランの考えを揺さぶった。
転校生は綺麗な顔立ちをしていた。その泣き崩れた顔はきっと酷い顔をしているだろう。
その顔を見てみるのも面白いかもしれない。
そう思って、アスランは転校生に近づき声を掛けた。

「どうしたんだ?」

掛けた声に震えていた体が動きを止めた。そして金の髪を揺らして転校生が振り返った。
濡れた琥珀の瞳がアスランの瞳を捉える。捉えられたアスランは言葉を無くした。
長い睫毛、涙で濡れた瞳、泣いたために赤く染まった顔。
何かがアスランの中でプツリと音を立てて切れた。
転校生が何か言うために開いた口をアスランは彼の後頭部に手を回して己のそれで塞いだ。
遅れて抵抗を示す体を空いた手で抑え込む。片手で抑えられるほど彼の力は弱く、体は細いものだった。
やがて抵抗を止めた体を地面に押し倒し、アスランは唇を開放した。
上気した顔を見て自分の体が熱を上げるのをアスランは知覚した。


































男の彼にアスランは欲情していた。











カガリは男装している女の子です。
一応、そんな設定です。









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