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ささやかですが、お礼として掌編を用意しましたので、よろしければお読み下さい。
男勇者・カイのパーティーのお話です。
むっつりスケベ
「……はい?」
面食らうフィースに、メルツは重ねて問うた。
「ですから、むっつりスケベ――とは、どういった意味でしょうか?」
――なぜ、それを俺に聞くかなあ。
大真面目に尋ねる箱入り僧侶を目の前に、フィースは頭を抱えたくなっていた。
「あのですね、最初はリンに訊いたんです。そうしたら、恐らくフィースさんの方が詳しいのでは、と言われて」
「リンのやつ……!」
つい口をついて出てしまったらしく、メルツが首を傾げる。
笑いをかみ殺すリンの姿が目に浮かぶようだった。その方が面白そうだ、というだけでメルツを差し向けたのだろう。事実、フィースは困り果ててはいるが、端から見るときっと滑稽この上ないはずだ。もしかしたら、リンがどこかの陰からこっそり見ているのでは――そんな思いに駆られて、フィースは思わず辺りを見回した。
「……何か、気に障りましたか?」
メルツが不安げにフィースを見つめていた。
濡れて艶めく唇。上目遣いの朱い瞳と、やや寄せられた眉が弱々しく見え、庇護欲と嗜虐心をかき立てる。
普段は穏やかな笑みを絶やさない彼女。それがたまに見せる儚げな表情は、フィースの心の柔らかい部分と黒い部分とを刺激する。
無垢な聖職者を、けがれのないままに守りたい。一方で、泣かせて、壊してみたい。
ここは宿屋の男部屋だ。カイは、何の用かは知らないが、先刻ふらっと出て行ってまだ戻らない。
――彼女と、密室に二人きり。
そして一瞬後に、フィースは自らに突っ込んだ。
――むっつりとは、俺のことか、と。
自分に少々呆れながら、フィースはメルツに言った。
「君が気にするようなことは何もないよ」
「だったら、いいんですが」
「そうだな――外にはそんな素振りを見せずに、心の中ではよからぬことをいろいろと妄想するような人間ってこと」
「よからぬこととは、悪いことという意味ですよね」
「いやらしいこと、だな」
「いやらしい――」
メルツの頬がぽっと薔薇色に染まる。彼女はそのまま俯き、固まってしまった。
この程度のことで真っ赤になる娘に、俺の頭ん中の『妄想』を見せたとしたらどうなってしまうのだろう。羞恥で気を失ってしまうだろうか。それとも、理解できずにきょとんとしているだろうか。
――これもまた、妄想か。
フィースは再び自らに突っ込んで力なく笑う。と、メルツが赤い顔のままフィースを見上げ、おずおずと口を開いた。
「でしたら、あの、私も――です」
「……え?」
まさかの言葉に、フィースは絶句する。
「今――いやらしいことと言われて――妄想してしまいましたもの」
「な、何を!?」
「……」
メルツは涙目でフィースを見つめると、「ごめんなさい!」と言い残して部屋を出ていった。
いったい彼女が何を考えたというのか。
なぜ謝られたのか。
まさか、彼女も俺のように、俺のことを妄想したとでも――?
後に残されたフィースがあまりのことに呆けたままでいると、カイが戻ってきた。普段より早口で、カイは尋ねた。
「お前、メルツに何かしたのか」
「いいや、多分、何も」
「……他人には言えないようなことは、していないんだな」
「してない! 断じて!」
「すれ違ったときに、そ――そう見えた。違うならいい。それだけ。……それだけだ」
カイは、そう自分に言い聞かせるように呟き、こちらに背を向けた。その頬は赤く、まるで先ほどのメルツのようだった。普段の彼とは違い、まるで年相応の少年のような恥じらいの表情。
――どうやら、人はみなむっつりみたいだぜ、メルツ。
フィースはカイの背中を見ながら苦笑いした。
おしまいです。
それでは、またお会いできる日を楽しみにしています!
【3D】 管理人 良崎
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