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感謝の意をこめまして、連載小説のひとつ、「星降る大地に希望の華を」から番外編をvv


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ではでは、どうぞ!!(2014.2.2更新)











「外伝4・前編」












「いい加減、観念して行ってこいよ」

「ですが、わたしが行ったところで、お互いに何も言うこともすることもないのですし・・・・・・」

「お前になくたって、あっちにはあるかもしれないだろ?お前だって、会えば何かしら思うところはあるはずだ」

「ですが・・・・・・」

「とにかく!!すぐに出立用意をするんだ!!これは命令だからな、連翹!!」

忠誠を誓った主である風蘭にそこまで言われたら、さすがに連翹も逆らえない。何より、風蘭が連翹を想ってそう言ってくれているのもわかるからだ。



仕方なく、連翹は数日の後に、久しぶりに春星州へ帰州することとなった。

帰州とはいっても、連翹は幼い頃までしかそこにおらず、桔梗たちに保護されてからはずっと夏星州・・・水陽にいたのだから、懐かしさも何もない。

こうして馬を駆って春星州に来たものの、やはり覚えているものは少ない。

望郷の念などない彼が、それでもこうして風蘭の言葉に従ってここまで来たのには、訳があった。









会わなければならない人物がいた。

連翹を桔梗たちに託し、水陽に避難させてくれた人物。

天涯孤独だと思っていた連翹の、唯一の親族。

そして、風蘭の友人、木蓮の師でもある、人物。





東蓬 梅。





連翹は、梅に会うために春星州まで来たのだ。

木蓮に教えられた道を進み、梅の屋敷まで辿り着くには問題はなかった。だが、彼はすぐさま梅の屋敷に向かうことはしなかった。

「・・・・・・まずは礼儀を尽くした方がいいかもしれないですね・・・・・・」

ぽつりと自らに言い聞かせるように呟くと、彼は目的の場所とは違う道を馬で走る。

彼が向かったのは、元春星州州主であった桃魚 華鬘の屋敷だった。

この時期を見計らってのことなのか、ちょうど今、華鬘は自身の屋敷に帰っているのだ。

執政官となってからは水陽にいることが主となっていたが、時々休息を取るように風蘭が華鬘を春星州へ帰している。ちょうどその時期と、こうして連翹が春星州へとやってきた時期が重なったのだ。

これは偶然ではないだろう。

風蘭に謀られたようで悔しさもあったが、同時に、それほどまでに連翹を気遣ってくれていることがうれしく、またそこまで成長してくれたことに喜びもあった。









連翹が華鬘の屋敷まで辿り着くと、門番は彼の名前を聞くなり、すぐに彼を屋敷の中に通した。

「こちらにおいでになると思っていましたよ、連翹殿」

にこにこしながら出迎えてくれたのは、屋敷の主である桃魚 華鬘。穏やかなその笑みは、知れず緊張していた連翹の心を解した。

「突然押しかけてしまい、申し訳ありません、華鬘さま」

「いいえ、お待ちしていたのですよ、連翹殿」

「待っていた・・・・・・とは?」

「風蘭さまから、おそらく連翹殿は春星州に着いたらここへおいでになるだろう、と伺っておりましたので」

くすりと笑いながら華鬘はそう告白した。

すっかり見抜かれている自分の行動に、いつもとは逆の立場になってしまい、連翹はどうにも居心地が悪かった。



「さぁ、お茶でも飲みながら話でもしましょうか」

応接間に案内されれば、すでにお茶の用意がされていた。

「まずは一服致しましょう。長旅、お疲れ様でした」

「・・・・・・いえ」

優しい笑顔で労ってくれる華鬘に対し、どうも連翹は落ち着かずにそわそわしながら勧められた円座に座る。

こうして客人として迎えられるのは初めてのことで、華鬘の屋敷の家人がお茶を用意してくれたりすることすら、なんだか申し訳ないような落ち着きのない心持だった。そんな様子の連翹を見て、華鬘は笑みを深めた。

「落ち着かないですか、連翹殿」

「そう・・・・・・ですね。いつも風蘭さまの隣におりましたので・・・・・・」

「風蘭さまのお側を離れるのは不安ですか?」

「・・・・・・昔は、不安でした」









いつもいつも、風蘭の側には連翹がいた。

何もかもが突発的で危なっかしい行動ばかりの風蘭の側で、彼に危険が及ばないように先回りして見守る。それが、連翹の役目だった。

そうして、彼がいずれこの国の王となってくれるのを望んでいたのだ。





「昔は、ですか?今はもう不安はありませんか?」

華鬘の優しい問いかけに連翹は苦笑しながら頷いた。

「今は、不安だなどと恐れ多くも申し上げられません。いまやもう、風蘭さまはこの国の王であらせられます。それに、今の風蘭さまには紫苑姫さまや木蓮殿、他の諸官の方々がいらっしゃいますしね」

「たしかに、風蘭さまはここに至るまでに大きく成長された。そこで得た仲間、同志たちは頼りになる方々ばかりですね」

その『頼りになる』風蘭の助言者の筆頭である華鬘が、満足そうに同意する。そうして、優しい瞳のまま、連翹を見つめ返した。

「ですが、そんな風蘭さまのおそばでずっと見守っていらっしゃった連翹殿の支えがあったからこそ、今の風蘭さまがあるのです。いつまでも風蘭さまのおそばに連翹殿が必要であることに、変わりはないと思いますよ」

「・・・・・・あ・・・はい・・・・・・」

思わぬ華鬘の言葉に、不覚にも連翹は返す言葉が見当たらずに生返事を返してしまう。

そんな戸惑う連翹の心中を包み込むように、華鬘は何も言わずに連翹の次の言葉を待った。





連翹は、自身の気持ちが混乱していることは自覚していたものの、それをどう華鬘に伝えるべきか、迷っていた。

自らを落ち着かせようと何度もお茶を飲んでは喉を潤した。迷い焦る彼に対面する華鬘は、窓の外の景色を見ながら、ふっと目を細めた。

「・・・・・・懐かしいですね、風蘭さまがまだ玉座に座られる前のことが。風蘭さまが春星州に初めていらしたときは、連翹殿は同行されていませんでしたね?」

「え、えぇ・・・・・・。そのころ、わたしは水陽で投獄されていましたので・・・・・・」

「そうでしたね。そのときは、不安ではありませんでしたか?風蘭さまと離れて・・・・・・」

「いいえ。わたしは風蘭さまを信じていましたし、椿さんもいらしたので、大丈夫だろうと思っていました」

「連翹殿は、心底風蘭さまを信頼しておいでなのですね」

「もちろんです。この剣を拝命されるよりも、はるか昔から」







肌身離さずに持っている、大切な剣。

フウランの花が柄に彫られている、主である風蘭からの信頼の証でもある『花』の剣。

彼が王となったときに、これを渡された。

平民である連翹に王から『花』が下賜されることは非常に珍しいために、賛否両論、当時は色々な声が飛び交ったものだが、今となってはそれも遠い過去のことだ。

貴族や平民だという昔ながらお愚かな垣根を、風蘭と木蓮たちが懸命に取り払おうとしてくれている。そして、連翹が椿たちのように平民でありながら朝廷に姿を見せることを許された者たちが、平民でも貴族と変わらずに活躍の場を広げることができることを証明し続けている。









「風蘭さまや木蓮殿の理想は、きっと遠くない未来に叶えられると思いますよ。平民を朝廷に迎え入れるという、その尊き理想は・・・・・・」

そのふたりのために惜しみなく尽力してくれている華鬘が穏やかにそう告げると、連翹もまた同意するように小さく頷いた。

「えぇ、わたしもそう思います。特に、木蓮殿のご活躍は、日に日に目覚しいものです」

「そうですね。彼はとても有望な官吏です。・・・・・・彼の師が、彼を見込んだように。彼は、彼の師のためにも、理想を追いかけ続けているのですよ」

連翹を気遣いながら話す華鬘に対し、連翹自身も自分の体が強張ったのを自覚した。

隠そうとしても隠し切れない緊張感が、自分の中に電撃のように走っていく。





木蓮の師。

それは、梅という名の平民。

平民の身でありながら、木蓮に様々な知識を与え、そして、平民と貴族の大きな隔たりを訴え続けた人物。

東蓬 梅。それが、木蓮の師の名であり、そして、連翹の唯一の親族だった。







蜂豆 連翹と名乗る彼の本当の名は、東蓬 連翹。

梅と連翹は、遠い昔、この星華国を建国した王、牡丹王の末裔なのだ。

平民として生涯をひっそりと終えた牡丹の血筋は、公に明かされることなく長い時を過ごしてきたが、様々な不運が重なり、梅と連翹たち一族は追い詰められた。

命の危険を感じた梅は、幼い連翹を王族に託した。彼の未来を奪われないように。

連翹には梅の記憶はなく、覚えているのは宮中に引き取られてからの記憶だけだ。

唯一の生き残りの一族であるにも関わらず、国を揺るがす改革の中でも、梅と連翹の運命が交錯することはなかった。

だが、その梅が木蓮の師であり、その木蓮が風蘭の友であることは、運命のいたずらなのかもしれない。







今回、朝廷もやっと落ち着いてきたのを機会に、風蘭は連翹に梅と再会することを勧めてきたのだ。

連翹とすれば、梅との記憶もないので今更会ってどうすればいいのかわからない。とはいえ、風蘭とすれば、唯一の生き残りである親族に会わせたい想いがあるのだろう。

責任を感じているのかもしれない。

梅や連翹が追われた原因は、王族にあったから。

期待以上の結果を出してくれた風蘭に対し、連翹は恨みなど一片もないのだが、このまま梅と会わずにいれば風蘭の気も済まないのだろう。

・・・・・・実際、連翹も逃げていた。

すでに滅んだと思っていた一族に…すでに捨てた名である東蓬一族の者に会うなど・・・・・・。









「梅殿は、とても賢い方です。連翹殿の不安もまた、察せられていると思いますよ」

「そう・・・・・・ですか」

「今日は長旅でお疲れでしょう。今夜はこちらで休まれて、明日にでも梅殿とお引き合わせできるように計らいましょう」

「・・・・・・ありがとうございます、華鬘さま」

梅と会うことに消極的な連翹の心境を知ってか知らずか、華鬘はにこりと人のいい笑みを浮かべてそう告げると立ち上がった。

「では、部屋を用意させましょう。今夜はゆっくりとお休みください。・・・・・・そして、気持ちの整理をされるとよろしいでしょう」

「・・・・・・はい」







気持ちの整理。

それは、記憶のない親族である梅と再会することの連翹の気持ちを落ち着かせるための言葉なのだと、そのときの連翹は受け取った。

だが、華鬘のその一言には、連翹自身も気付いていない意図が含まれていたのだと、後々気付かされることになるのだった。

















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