拍手ありがとうございます。以下お礼SSをお届けします。





雪宮が考えた新作連載を少しだけ公開しています。

この話が実際に連載されるか、いつ開始になるかは確定していませんので、ご了承ください。













There is wonderland~ようこそぼくらの世界へ~






私は後藤桐子、高校を卒業し、家を出て現在とあるマンションで一人暮らしをしている。

会社から近いという条件が気に入り、借りたマンションだ。

「ただいま、チロ」

「にゃあ」

マンションの部屋へ帰って来ると、私は最近一緒に暮らし始めた猫のチロに帰宅を伝える。

チロはいわゆる捨て猫だ。この近くの公園に、ダンボールに入れられ捨てられていた。

会社帰り、偶然彼を見つけた私は、そのまま自宅へと連れ帰ってしまった。

このマンションは別にペット禁制では無い為、動物を飼えないわけでは無い。その日のうちに一応大家さんへ電話をし、ちゃんと許可も貰った。

玄関でヒールを脱ぎ、そのまま寝室へ向う。

自宅の間取りは、キッチンとリビング、他に部屋が二つ。浴室とトイレがあり、女の一人暮らしには十分過ぎる程の広さだ。

寝室として使っている部屋で着替えをしている間、チロはリビングで大人しく私が来るのを待っている。

子猫の大きさでは無いので、もう大人な猫なのだろう。灰色の毛に覆われた体と、エメラルドグリーンの瞳が特徴の雄猫、それがチロだ。

着替えを済ませリビングに戻り、一人で待っていたチロを抱き上げる。

「今日もいい子にしてたみたいね」

「にゃあ」

まるで私の言葉を理解しているように、鳴き声をあげるチロ。私はそんな彼の喉元を撫で、すぐにフローリングの床へ下ろした。

チロは本当に手の掛からない良い子だ。しつけにもそんなに手こずらなかったし、いつも私の帰りを大人しく待っている。

平日は私が仕事のため、休日くらいしか外に出してあげられないが、彼はそれに何も不満は無いみたいだ。

こんな優秀すぎる猫を、どうして前の飼い主さんは手放してしまったんだろう。






夕食とお風呂を済ませ、パジャマに着替えた私は寝室でチロの相手をしていた。

否、彼の相手をすると言うより、相手をしているのかもしれない。

「今日ね、部長に怒られちゃったんだ」

猫じゃらしを揺らしながら、会社であった出来事の愚痴を零す。なんと寂しい女だろうか。

ごろごろと寝転がり、猫じゃらしを追いかけているチロに話しかけている時点で、私はかなりダメな女。

親元を離れて二年以上、今年成人式を終えた私は、大人の仲間入りをしている。先日誕生日が来たので、今は二十一歳。

普通なら合コンへ参加したり、夜は外へ出掛けるのだろうが、毎日会社で仕事をこなすだけで精一杯だった。

「はあ……仕事なんて無い世界に行けたら、どんなに幸せなんだろうね」

「にゃ?」

「そんな世界無いよね。明日は休みだし、久しぶりにどこか買い物にでも行こうかな」

チロを抱き上げ、彼専用の寝床へと連れて行く。時間は既に夜の十一時、明日が休みなのでいくらでも夜更かし出来るが、やはり睡魔には勝てなかった。

「おやすみ、チロ」

「にゃあ」

寝る前の挨拶をチロにし、私は寝室にあるベッドへ潜り込んだ。

今日も一日よく働いた。土日はのんびりと過ごそう、そんな事を考えているうちに、私の瞼はいつの間にか閉じていた。






何だろう、顔の傍で何かふわふわしたものが動いている。くすぐったい、そう思い手で払いのけるが、またすぐにそのふわふわは私の頬に触れる。

またチロがベッドに上がりこんできたのだろうか。だとしたら早く下ろさなきゃ、シーツに毛がついてしまう。

重たい瞼を持ち上げ、必死に目を開けようとした瞬間、私の頬に今度は生温かいザラリとしたものが触れた。

「……っ!」

その感触に驚き、慌てて目を開けるとそこには見慣れた天井は無かった。

いつものクリーム色の天井では無い、灰色の天井がそこにはあった。

「おっ、ようやく起きやがった」

突然聞こえて来た男の人の声に、私は慌てて声がする方へ視線を向ける。

するとそこには、ナイフで切られた痕のようなものがいくつもある、ぼろぼろの黒い長袖を着た男性が居て、私をじっと見下ろしていた。

「だ、誰!」

驚いた私は飛び起き、自分の身を守るように両腕で体を抱きしめ、見知らぬ男の人と距離を取ろうと後ろへ下がった。

だが、すぐに背中が壁に当たった事に気付き、混乱する頭で目の前の人を見つめる。

灰色の少し癖がある髪に、少しきつい印象を与えるエメラルドグリーンの猫目。そして何より、私の視線を釘付けにしたのは、彼の頭上にあるものだった。

彼の頭上には、髪の色と同じ灰色の猫耳が生えていた。

一瞬コスプレか何かかと思ったが、そうでは無い。その耳はピクピクと動いている、つまり本物ということだ。

「誰とは失礼な、ゴトウキリコさん? 俺はあんたの事で知らない事なんか無いんだぜ?」

そう言って、口元に意地の悪い笑みを浮かべる男の人。何でこの人私の名前を知っているのだろう。

「あんたが望んだんだ、毎日仕事に追われて大変だから、仕事の無い世界に行きたいってな」

彼の言った言葉には、覚えがあった。それは昨夜チロに零した愚痴。まさかとは思いながら、私は恐る恐る口を開く。

「あ、なた……チロ、なの?」

「ご名答」

私の言葉に、目の前の男――否、チロはニヤリと笑みを浮かべた。






拍手お礼SSです。
こちらの話は、思いついた物を書いているので、連載が実現するかも危うい話です。
皆さんからのご意見などで、連載になる可能性もあります。
それでは雪宮でした!









コメントなどありましたら良かったら送っていただけると嬉しいです♪
お名前 URL
メッセージ
あと1000文字。お名前、URLは未記入可。