夢のしずく 







いたずらの様に出会い短い時を共に過ごし

この身を投げ出して救った人・・・。



両手を拡げた磔架(たっか)の上で、私のすべての最期に

想いをよせた人・・。



此れほどまでに胸を揺らし、此れほどまでに胸を痛め、

此れほどまで離れがたい人・・・。



貴方は生の領域の人・・


私は死の領域の神・・・





手を携える事は・・交わる事はあってはならない・・・





目覚めた貴方は当たり前の様に私を瞳に映し、

当たり前の様に私の名を呼ぶでしょう・・・それは・・・




何処までも許されない事だなんて気付かずに・・・




貴方は生の領域に還る・・・


私は死の領域に還る・・・・







誰より何より、一番正しい二人の在るべき場所に戻るだけ





それでも・・

それでも・・その手に触れたら・・・



すべてを投げ出して喪う覚悟は出来ていたけれど


それを貴方に負わせる覚悟は出来なくて・・・・。




決めたのは 私




二度と会わない




胸ぐらを嫌というほど強く握りしめ、この身を縮め


何度も・・・・

 
何度も 深く呟く





二度と会わない






かすれた声は嗚咽に変わり、俯く睫毛から雫がゆっくりと

宙に溢れる・・・





伝えきれない想いの様に止まる事を知らずに静かに・・・





この夜が明けたら・・・



誰にもみせた事がない様な・・・・



貴方の為だけに綺麗な・・綺麗な笑顔を作るから・・・


だから・・今は・・・



これ以上はない想いの言葉を・・・


愛しいその名を・・・


呆れるぐらい口にさせて



誰に届く事も・・誰に伝わる事もない・・・


蝶の羽音の様に唇を震わす・・・。




貴方の隣で夢をみて・・


貴方の隣で夢を重ね・・・


そして・・・貴方も私も夢から醒めて・・・



貴方のいない世界で貴方の事を胸の奥底で・・

たった一人・・夢をみる・・・



繰り返し・・繰り返し・・・




消える事のない想いだけを抱いて




限りなく溢れ出る雫のように










*ルキア視点、再録加筆修正作品です。当時は181話を意識して
書きましたが、今の方がぴったりくる気がするミラクル(笑)*





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