お礼ページ<十二国記*尚六編>



そんな事を言われたら許してしまうだろうが。


隣で急に、あーあ、と嘆息した奴がいる。
チラリと視線を遣れば、暇だな、と両腕に顎を乗せて机に突っ伏している小さな陽色の頭。

「六太、嫌味か?」

視線を遣りながらも筆を滑らせる手は止めずに、尚隆は言った。僅かに含まれた険をさらりと聞き流し、六太は主に目もくれない。

「暇なら朱衡の所に行け。たっぷり働かせてくれるぞ」

御璽をがつんと乱暴に押印し、尚隆はくつくつと笑った。言外に目障りだ、と言ったのが分かったのか――否分かってもらわなければ困る――六太が不意に立ち上がった。しかし部屋を出て行くものと思っていたのに、つつ、と寄ってきた。尚隆の真横に同じようにぴったりと椅子を整える。

「六太…?」

怪訝そうに小さな少年を見下ろす。

「後どれくらい?」

それが何を指すのか一瞬分からず呆けると、六太がつい、と机上の書簡達に視線を走らせる。そして、結構あるな、と一人ごちた。

「六太、さっきから何を…――」

嫌がらせかと眉を寄せた所で言葉が詰まった。

「終わったら起こして」

尚隆の膝に柔らかな髪と一緒に転がった頭。膝から下は椅子から投げ出した格好で、六太は悠然と椅子と尚隆の上に寝転んだ。
既に寝る体制に入っている口からゆっくりとした呼吸が零れる。
尚隆は何か言おうとして、しかし言葉が出て来ず、口をただ開閉させた。が、額を片手で覆い、はぁ、と盛大に嘆息した。

「寝苦しくないのか、それは」

自分の方へ引き寄せてやりながら、尚隆は六太の顔を見下ろす。
うん、とその口が動いた。寝苦しいけど、とそこで一旦言葉を切る。

「…ここが一番寝易いから」

言ってから少し眉を潜めた六太に思わず苦笑する。
そうか、と一つ返して尚隆は再び筆を走らせる。
早く終わらせたいような、終わらせたくないような――――。
複雑だな、と内心で苦笑し、尚隆は改めて書簡に視線を遣った。



拍手ありがとうございましたー!
これお礼になってるのかな!うんうん。いつだって自分勝手さ私は!
知ってたよ!(涙)
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