お礼ページ<遙か3*弁九弁編>



いつもお前の掌の上なんだ。


「もう…充分だ弁慶」

おや、と目の前の麗人は目を細めた。盃をぺろりと一舐めしてからふっくらと微笑む。

「僕に付き合ってくれるんじゃなかったんですか?」
「言った。確かに言った」
「源氏の君が言の葉を違えて宜しいのですか?ねぇ、九郎?」

ふふ、と微笑するその顔が今は虐めているようにしか見えない。
九郎は真っ赤な盃をするりと板の間に滑らせ、くすくすと嗤う軍師へと押しやった。可笑しげにそれを見遣った軍師は、自らの盃を傾けるとこくりと一息に呑み切る。

「甘酒でも用意すれば良かったかな?」
「悪かったな。甘ったるいのが好みで」
「今日は良く呑めた方ですよ。少し強くなったんじゃありませんか?」
「いや、そうでもない」

目が回る、と額を抑えて九郎は天を仰いだ。はあ、と吐き出された息には濃く酒気が混じっている。
勧められるままに呑んだ結果なのだから仕方がない。自分自身を恨めしく思いはするが、酔いの所為かふわふわと気分は上々だった。
苦手な辛い酒もいつもより呑めた。そんな事一つで妙な自信が湧くのは何故だろう。
ぼんやりと埒もない事に思いを馳せていると、不意に鼻孔に薬香が薫った。

「っん……ん」

顎を掬われ、肩を抑え込まれた。
口付けされたと頭が理解した時にはもう遅い。油断した隙にするりと舌が滑り込んできた。それと同時に舌を伝って熱い酒が咥内へと侵入を果たす。とん、と軽く押されて、板の間に倒された。
いつも物腰の柔らかい彼だが、その実、薙刀を棒きれのように扱う事が出来る程の力がある。
組み手で負けた事はないが、気を抜けば今のように直ぐに抑え込まれてしまう。
九郎は思わず酒を呑み込んだ。
カッと、胃の腑が焼かれるような感覚。それに堪らず眉を寄せると、弁慶が顔を離した。離れ際ぺろりと九郎の唇の酒気を舐める。

「折角のお酒も台無しだ。君にちょっと触れただけで甘ったるくなってしまう。――九郎が甘いのばかり呑むから」

どんな理屈だ、と怒鳴ってやりたかったのに、酔いが急激に回ったらしく、舌が上手く動かない。べんけい、と幼子のように舌っ足らずに名を呼んでも本来の意味は為さない。
くすり、と微笑する気配に視線を上げた。

「君の所為で、僕まで酔いが回ってしまった」

ふんわりと笑って、軍師は頬に触れた。

(もう、好きにしろ)

九郎は投げ槍気味にそう毒付いて、ぱったりと瞼を閉じた。



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