やきもき ―久御―





カウンターの一席に陣取って、グラスを傾けること十五分。

……アイツは何を話してるんだか。



「マジでぇ? 高橋さんってばサイコー!」

「おいおい。そんなに笑わんといてぇやあ」

「だってさぁ。いや~さすがにその告白は無いよ~」



数席先のスツールに座る男と向き合って、大口開けてルイは笑っている。

客の恋愛話に花を咲かせているようだが、

単なる客相手によくそんなに笑えるよな、コイツ。



「……眉間に皺、凄いですよ。久御さん」



覗き込むように腰を屈めた新堂が、正面で頬杖を付いてきた。



「そうか? 気のせいだろ」

「へいへい、そーですか。って、嫌なら車で待ってりゃイイのに。

しかもウーロン茶って……ま、車だから仕方ないんだけど、なんつーか」



似合わないとでも言いたそうだな。



「しっかし、ルイも鈍いよなぁ」



それには同調したくなる。本当に……アイツは鈍感と言うか、天然というか。



「お! そろそろ時間じゃん。ルイ、上がって良いぞ」

「はーい。じゃ、着替えてくんね」



客にのみ手を振って、ルイが裏に消える。

こっちには見向きもしない。

……あのバカ。後でお仕置きだな。





 



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