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「あ、勝三郎、カーディガンのボタンずれてる」

含み笑いをしながら言うと彼は自分のカーディガンを見つめその後顔を思い切り逸らす。

私はすっと手を伸ばして彼がかけ間違えたボタンを一つ一つ外して再びちゃんとボタンをかける。

「珍しいね。こんなミスあまりしないのに」

彼が一つ溜め息をつく。

「疲れてるんじゃない?部活が大変とか…大丈夫?」

「別に問題はない」

そう、と呟いて手を離す。その手をいきなり彼に掴まれて、何かと思い見上げれば触れるか触れないかの口付け。

「な…!?こ、ここ何処だか分かって…!?」

学校だよ、と呟いて周りを見渡せば誰もいない。次、移動教室だったかな、とぼうっと考える。

咄嗟に口元に持っていった手を離して無防備になった唇を彼の唇に当てれば今度は彼が驚く。

「次、移動教室!」

そうにっこり笑いながら、彼の手を引いて教室を出て行く。

唯一の目撃者である教室はしん、と静まり返った。


 
 
 
 



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