「ずっと想ってるんだからテレパシーみたいなものでビビッと伝わってもいいと思いません?」

「は?」

テレパシーとはなんなのか、そもそもたまたま会った草薙殿に何故こんな風に問いかけられているのか全て謎だった。

「テレパシーっていうのは、何も言わなくても相手に伝わることを言うんです!」

そんなものがあるのなら是非とも使いたいと思った。

ずっと、愛しい人の側に居るのに決して振り向いてはくれない愛しい人に、それを使いたいと思った。

「…あったらいいですね、そういう便利なものが」

「ですよね!池田さんもそう思いますよね!」

「そうですね、それこそ殿に普段言えない不満の数々を送りたいものです」

そう言うと草薙殿は笑った。自然に出る彼女の笑顔が好きだと実感する。



何時でも頼られれば助けられる場所に。

何時でも疲れれば休められる場所に。

何時でも声をかけられれば聞こえる場所に。

何時でも彼女の近くに居たのに、何故彼女は違う場所を見ているのだろうか。



叶わないと分かっている。

無理矢理彼女の気持ちを向かせようなどとは思わない。

芯の強い彼女だから、

そんなことは無駄だと分かっている。



それでも。

この無垢な笑顔を見る度に思う。

こうして少しだけでも笑ってくれさえすれば、自分の心は満たされる。

それだけ彼女を愛している。






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