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「秘密の花園」


それは麗音が9歳のある初夏の日の話だった。

麗音はバイオリンの稽古を抜けて、萌花を誘ってふたりの秘密の庭へ向かっていた途中の出来事だった。

「萌花、こっちこっち……」
「待って麗音……、髪の毛が絡まっちゃった」

薔薇のアーチを潜ろうとした時、
萌花の長い髪の毛が伸びてきていた薔薇の蔦に絡まったのだ。

「じっとして萌花」

彼らが「秘密の花園」と名前をつけた庭は、薔薇の花で出来たアーチを抜けた森の奥にあった。
薔薇が咲き乱れる中ほどでふたりは立ち止まり、絡まった髪の毛を麗音が一生懸命に解こうとしていた。

まだ麗音の背丈は萌花の目の高さくらいしかなく、ふたりして俯く姿は本当に可愛らしい。
まるで絵本の中の挿絵のように繊細で美しかった。

下を向く麗音の長い睫を思わず萌花が掴んだ。

「あのさ……、見えないじゃないか。それやめてくんない?」
「だって、羨ましいんだもの。睫がとても長くて綺麗で蝶々みたいだよ麗音」

麗音は上目使いで萌花を見た。

そして、溜息を吐いた……。

「萌花はいつも僕のことを「可愛い」とか「綺麗」とか言うけど、僕は男の子なんだよ。ちっとも嬉しくないや」
「だって麗音はほんとうに可愛いもの。大好きだよ」
「聖駕より?」
「うん」
「空遥より?」
「うーん、空遥は弟だから……」

萌花が言いよどむと麗音の顔が曇ったので、慌てて言った。

「空遥より好きだよ麗音」

萌花が微笑んでそう言うと、パッと麗音の顔が輝いた。

「ほんとうに?」
「うん。ほんとうだよ」
「僕も萌花が大好き」
「世界一?」
「うん。世界一萌花が好き」

麗音はそう言って、天使のような微笑を萌花に向ける。

そして、ふたりは微笑みあった……。

「ほら解けたよ、行こう萌花」
「うん」

ふたりは手を繋いで薔薇のアーチを抜けて、秘密の花園へと向かった。


                     END



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