泣かないで:RL

「レオナルド。何かあったら俺は、外にいるからよ。」
安心しきって眠りについたレオナルドに、そう声を掛けて、俺は外に繋がる扉を開けた。
ひんやりとした空気が、体を抱きすくめてくる。窓越しに部屋の中を見ると、赤々と燃える暖炉を背に、レオナルドは小さく胸を上下させていた。
(良かった…!)
扉の脇の壁に体を預けると、俺はそのままへたり込んでしまう。レオナルドが戻ってきた安堵感が、一気に襲ってきたからだ。
どんなにか辛かっただろう。苦しかっただろう。レオナルドの感情を思うと、急に涙が溢れ出てきた。
ウッドデッキに完全に腰を下ろしながら、俺は自分の額を手で覆い、涙が溢れるに任せる。すると、
「…ラファエロ?」
そっと扉を開けて、エイプリルが顔をのぞかせる。彼女は、俺が泣いているのを見て、困ったような笑みを浮かべた。
「…大丈夫? レオナルドが見たら、何で泣いてるんだって、驚かれちゃうわよ?」
エイプリルが差し出してくれたハンカチを受け取り、俺は頬を濡らす雫を拭き取る。しかし、涙は止まってくれなかった。
「悪ぃエイプリル、今は無理だ…!」
恐らくこれは、レオナルドへの想いなんだろう。安堵感と、レオを大切だと思う感情が綯い混ざって蕩けて、溢れ出しているんだ。
凍えないうちに戻ってね、と言い残し、エイプリルは部屋の中へと戻っていく。残された俺は、ようやく止まってきた涙を拭い、体を起こした。
暗い空からは、大粒の雪が舞い落ちてくる。音もなく降り積もるそれは、不思議と心を落ち着かせてくれた。
(…お帰り、レオナルド。)
小さく呟いた言葉は、白い吐息となり、冬の空に溶けていった。



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