「は…腹へった……」



ぐぅう~と。
情けない声と同時に,暗闇の中でもそれと解る音が鳴り響いた。


「ゼル~!せっかく羊数えて忘れようとしてたのに,台無しじゃないか~!!」


隣のベッドからアーヴァインの,これまた言葉程の勢いがない声が響く。


「忘れようとしてたってことは,お前もなんじゃねぇかよ!!
 だ…ダメだオレ耐えられねぇ~!非常食食っていいか!?良いよなっ!?」
「…非常食は非常時に食う物だ」
「スコール。君も起きてたんだね~」
「……起こされたんだ」
「オレの腹の虫くれぇで起きるかよ!お前も眠れなかったんだろ!!」


不承不承身体を起こす。
それを見て,アーヴァインは枕元の灯りを点けた。
明るくなる視界の中,ゼルが力尽きたようにぐったりとベッドに沈み込む。


「交代で≪食べる≫ジャンクションして,獲物狩ってくるかい?」
「…町の外まで行ける気がしねぇ…」
「そんなに空腹なのか」
「だいたいあんな小洒落た店で,腹に溜まるモンが出るわけねぇんだよ…
 くそぅアーヴァイン…よくもあんな店勧めやがったな……」
「女の子達は喜んでたじゃないか~」


アーヴァインは大袈裟に肩を竦めて見せた。
夕食後は,終始笑顔だったリノアの様子を思い出し,思わず大きな溜息が漏れる。


「その前にキミが先走って,敵と遭遇(エンカウント)しちゃったから。
 今日は戦闘する気なかった女子達の機嫌の悪さったらなかったよね~」


その女子達の機嫌を,彼女たちの気に入るような店で夕食を摂ることで収めたわけだが。
普段なら定食屋で丼3杯は食べているゼルの食欲は,当然収まらなかったわけだ。


「お前らだって普段の半分くらいしか食ってねぇだろ。だから眠れてねぇんだろが…
ホテルに戻れば何か食えるかと期待してたのによ…」
「まぁね。僕もまさかレストランもバーも終わってるとは思わなかったからね~」
「俺は言ったつもりだったんだが。…店の前で」
「あぁ…?なんか言ってたかぁ…?」
「言ってたね~『…いいのか?』って。
あれ『ホテルじゃ食えなくなるけど,いいのか?』って意味だったのか~!
ちゃんと言ってくれなきゃわかんないって,スコール!」
「…」
「もぅあん時のことはいいって…飯食わせてくれ…パンでもいい……」


ゼルの口調はどんどん勢いがなくなっていく。
もう一度溜息を吐いて,ベッドから降りた。
ジャケットを羽織り,スツールに掛かっていたアーヴァインの帽子を投げながら告げる。


「アーヴァイン。お前は出られるな?深夜営業の店も閉まらないうちに,行くぞ」


俺がベッドから出たのを見て,アーヴァインも身体を起こしていた。
受け取った帽子を頭にのせ,ジャケットと愛銃を手についてくる。
ゼルが跳ね起きた。


「どっか食いに行くのか!?行くんだよなっ!!?」
「いや,買ってくるから。お前はここで待ってろ」
「オレも行くぜ,じっと待ってられっかよ!!」
「途中で行き倒れても置いてくよ~?」
「倒れねぇって!!」
「静かにしないと置いていくぞ。女子が起きる」


途端に忍び足になったゼルに,アーヴァインが忍び笑いを漏らす。
ルームキーを取り上げ,部屋の灯りを消した。
女子達の居る隣室は,灯りも消え静まりかえっている。


「海岸通りのバーなんてどうかな?君がどの位飲めるのか試してみたかったし」
「…冗談だろ」
「言っとくけどな,オレは酒は強いぜ!親父に付き合って飲んでるからな!!」
「ちょっと待て。いつの間に『飲みに行く』ことになったんだ?」


俺の呟きは,既に先を歩き出している二人には聞こえなかったらしい。

―――仕方ないな…

三度目の溜息を吐いて,俺も歩き出した。




***お腹が空いた***

Squall + Zell + Irvine



-----拍手ありがとございますv-----

あんど,最後までお読み下さりありがとございました。
英題が決まらないので仮題のまま
しかも誰得な話で申し訳ありません(お礼になってない・汗)

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ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。