*** T hanks F or C lap! ***


柔らかい指がそっと、オレの手を撫でた。

「大事な手だから、もっと大切にしてね」

そう言って、オレの手を宝物でも扱うように何度も撫でる。

「手だけじゃない。木吉くんの足も、体も、全部を大切にして」

オレなんかよりもよっぽど細くて小さい、首なんて片手で掴めそうな彼女。

「……ああ」

声は震えていなかっただろうか。震えそうになる指先に力を入れることで、逆に震えていないだろうか。

「ふふ。そう言って、口先ばかりにしないでね」

オレを見て、弧を描く目が薄ら濡れているのを知りながらも手を引いた。

「他には何もないかしら?」
「ええ、特には何も」

濡れた目は、何度か瞬きを繰り返してその水分を消し、またいつもの顔に戻る。

「それじゃあ、部活がんばって。また何かあれば言ってね」
「はい、ありがとうございました」

『先生』

保健室を後にしたオレの手には、撫でられた感覚と淡い体温が残っているようだった。



【木吉鉄平】
 
『触らないで』
title by 確かに恋だった
skin by spica



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