どうして俺は生きてるんだろう。

もう何も残ってない。

どうしてこんなことになった?

いくら問いかけても答えは出ない。

目の前には荒れ果てた大地が広がり、唯一聞こえるのは独裁者の演説だけだった



Parallel Paradox



京子ちゃんを護れなかったとき、俺は世界に絶望した
生きてても何の意味も無くて、毎日死にたいとばかり考えてた

でも、お兄さんが生きろというから
京子ちゃんが最期に願ったから
俺は逃げるのをやめて生き続けた

骸と出会って、好きだと言われて。
言われるたびに京子ちゃんのことを思い出して辛くて。
だけどはっきりと拒絶することも出来なくて。
嬉しかったんだ。こんな俺を好きだと言ってくれることが。
怖かった。骸に嫌われたらと思うと。

ずるずると断れないまま月日が流れて。
ザンザスを倒して、俺が正式にボンゴレの次期後継者に決まり、一定の猶予期間が与えられた。
18になったらボンゴレを継ぐ。それまでの3年間は好きにして良い。
それが9代目の優しさだということは直ぐにわかった。
本当なら、次期ボンゴレボスに決まった以上、これまで以上に修行や教育を受けねばならないはずだから。

9代目の好意に甘えて日本に来た
京子ちゃんを失ってからは初めて訪れる日本
どうしても謝りたかった
護れなくてごめん、お兄さんを巻き込んでごめんと。

俺が入れられたのは私立アッシュフォード学園という学校だった
学校に通うのは小学校低学年以来で。
もし日本が占領されなかったら、こんな風に山本や獄寺君と授業を受けて、友達になったのかもしれないな、なんて思った。
そして、ある日、ルルさんに会った

ルルさんと居ると、まるで自分がただの1生徒だと錯覚した
2人でいるときだけはボンゴレのことを忘れられた
少しずつ、だけど確実にルルさんは俺の心を占めていく
そして、気づいた
もう誰も好きにならないと決めたはずなのに、特別な人は作らないと言ったはずなのに。
俺にとってルルさんは特別で、誰よりも大切な人になっていたことに。

最初はそれを認められなくて。
必死に抵抗して、違うと思い込もうとした。
だけど、そんなことできなくて。そんな簡単に変えられる程、この想いは軽くなくて。

どうしようもなくなった時、ルルさんも、俺を好きだと言ってくれた
嘘だと思った。俺なんかを好きになるはずが無いって。
だけどそれは現実で。凄く嬉しいはずなのに、また失うと思うと怖くて。
そう伝えたら、死なないと約束してくれた。
「俺は死なない。それでも心配だというなら、お前が俺を護ってくれ。」
それはまるで、魔法のように俺の心に溶けていって。
この人とずっと一緒にいたい、生きていきたいと思った。



だけどルルさんは死んだ

世界に嘘という名のギアスをかけて


死なないと言ったのに、護らせてさえくれなかった



あの人は俺にギアスをかけて、戦いから遠ざけた



もう二度と会うことが叶わなくても
もう二度と俺が戦うことが無いように


そんな願いをのせたギアスは避ける間もなく俺を支配し、あの人の胸を剣が貫くまで俺の記憶を消し去った



テレビいっぱいに映し出された貴方の最期に、どれほど涙しただろう
どれほど恨み、悲しみ、絶望したか。貴方はきっと知らないでしょう。
永遠に解けるはずがないギアスをかけた貴方は、俺がショックで記憶を取り戻したなんて、思いもしないはずだから


どれだけ時がたったかわからない。
悪逆皇帝ルルーシュの死後、世界中が協力して、いい方向に動いていたのは確かで。
人はそれを優しい世界と言ったけど、そんなもの、俺にとっては絶望でしかなくて。
それでも俺の記憶を消し去る前に、優しい世界で生きて欲しいとあの人が言ったから。
あの人が作った世界だから、命を立つことも出来なくて。
俺に出来るのはただ、あの人の代わりに優しい世界を見守ることだけだった。

大切なひとの居ない世界は、色が無くて、なにがあっても気持ちが揺れることなんて無かった。

そう、あの時までは。



それは突然現れて、全てを壊して。



残されたのは荒れ果てた大地と、独裁者の語る声だけ。




「やあみんな、僕が新しいこの世界の王、白蘭だよ。よろしくね♪」




何が起こったのかわからなかった。

だって、ほんの少し前までは。ここは緑に囲まれて、みんな笑って暮らしてた。


俺にはもう二度と手に入らない、幸せな時をすごしてたのに。



どうして、あの人が命を賭けて作った世界が、一瞬で荒野へとかわってしまった?



モニターに映る男は、俺とあの人が初めて別な姿であったとき、共に倒した男だった


「なん、で…」


どうして、白蘭が。どうして。どうして。どうして。
復讐者につれていかれたはずなのに。


「パラレルワールドって知ってる?」


携帯端末から聞こえたのと同じ声が、荒れた荒野に響き渡る


「僕はその知識を共有できるんだよね。だから、脱獄なんて簡単さ♪」


その声は、酷く楽しそうで


「さあ綱吉クン。今度こそ、トリニセッテをいただこうか」


背筋に嫌な汗が伝った




ごめんなさい。ごめんなさい。
貴方の残した世界を護ることさえも、
俺には出来そうに有りません



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