ランダムで選ばれた二人とうちの子一人の小話。三毛弟=登良編。(全部で6種類。)


みつる、ゆうた

教室でうつらうつらとしていると、唐突に驚きを孕んだ声がした。

「登良ちゃん危ない!」
「へっ?」

名前を呼ばれて意識が覚醒した。効果音が付きそうなほどに顔を上げると狙ったかのようにゆうたの腕が登良の顔にヒットした。

「っ!!」

声にもならぬような悲鳴を上げてぶつけた場所を抑える。痛みで足をばたばたと床に足を叩きつけて痛みを逃がしてから改めて痛いと主張をすれば、ゆうたは謝罪をする。光と振り付けの会話をしてる時に勢い余ったようだった。

「もうちょっと、別の場所でやって……でも、目が覚めたよ」
「うん、ごめんね。」
「ううん、こっちこそ。振りの話をしてたの?二人して?」
「――っていうか、登良ちゃん。どうして1年B組でうとうとしてたの?」

光に言われて、登良はえ?と首をかしげる。…A組じゃないの?と問いかけて周りを見回すが確かに掲示物が違う。そういえば移動教室だったと思い出して登良は慌てて隣クラス――もとい自分のクラスに飛び込んで、教科書をひっつかんで走りだした。


スバル鉄虎

武道場で型の演舞を行っていると乱入者がやってきた。

「にゃんにゃん!いる?」
「ひえっ!!」

乱入者の声に驚いて飛び上がり近くにいた鉄虎の後ろに隠れる。え?と困惑する鉄虎の背中から乱入者のほうを見る。明星スバルがこちらを見ていた。登良と視線が合ってっ軽い挨拶がスバルから放たれた。相手がわかってようやく登良はそこで安堵して、鉄虎越しに挨拶をした。

「やっほやっほ、にゃんにゃん。」
「…こんにちは。明星先輩。」
「親分、どうしたんスか?俺の後ろに隠れて。いつもの明星先輩っスよ?」
「驚いた。ごめんね、鉄虎。」
「今大丈夫?練習中?」

鉄虎と登良は顔を一度見合わせてから首を振る。部長の大将は今日は用事があると言っていたので、二人してこうして明星スバルを招き入れた。スバルは嬉しそうに武道場の中央で腰を下ろして、ねぇねぇにゃんにゃん。と話しかけた。鉄虎は首をかしげながら、どういうことだと問い合わせるので、俺だよ。と登良が言う。

「ほら『三毛』に『縞』に兄も『斑』だし俺も『虎』だしね。字は違うけど音は一緒だし。」
「それで…にゃん。っスね」

考え込む鉄虎の耳に登良は口を寄せた。それに明星先輩は、言っても聞いてくれないし。そう耳打ちをして、鉄虎はすぐに納得する。確かにそうだ。と夏の頃を思い出して、鉄虎はへの字に口を曲げた。登良は俺に用事みたいだから鉄虎は離れてもいいんだよ?というけれど、大丈夫っス!と笑うので、じゃあ俺の横にいて。不安だから。と伝えて二人でにっこり笑ってから、スバルと向き合う。

「今日のご用事はなんですか?」
「今度のライブにちょっと教えてほしいことがあってきたんだ。」
「そうでしたか。で、依頼料はいかほどに?」
「えっ!?親分お金とるんスか?」
「正当な手順の依頼ですから。もちろん兄からもとりますよ?」

然るべきことはやってないと関係性は壊れますから。ニッコリ笑って登良は金額を展示する。鉄虎もスバルもうわぁ。と声を漏らした。結構えぐい額と鉄虎とスバルは声を上げるが、登良はにっこり笑ったまま金額を揺らさない。しかるべき方法でお待ちしております。にっこり笑うと、鉄虎がぽつりと鬼かと思った。なんて言った。


紅郎忍

部活で紅郎と組み手をしている間に登良の視界の隅で友人を見つけた。組合を終わらせるように紅郎から一本を取って、手早く一礼してから登良はそちらに向かう。

「忍。こんにちは。俺に用事?」
「そうだった。」
「この間雑誌をもらったのでござるが!ここに登良殿が!」

忍が雑誌を突き出すので、それを見ると、夏の空手の大会で出ていたものだった。…あぁ、うん。俺出て、演舞の部門で準決勝敗退したものなので、紙面の特集の隅に書かれていたものだった。どうしたの?と投げかければ、やっぱり登良殿でござるか!?なんて改めて驚かれた。

「名前も学院の名前も書いてあるし。」
「やっぱり登良殿なんでござるね!ここに性別が女って書いてあったので、登良殿もしかして…と思って…!」
「……その雑誌、どこの?」
「登良、お前も落ち着け。」
「落ち着いてられないですよ。大将。この写真投稿主見てください。」

そう言って指さした先には撮影者の名前として三毛縞斑と書いてった。紅郎が確認すると、確かに間違いなさそうだと考える。ですよね。登良がそういって踵を返して歩き出そうとするのを紅郎が視界の端にとらえた。

「おい、登良。どこに行くんだ?」
「兄へお礼参りです。」
「目が笑ってない礼参りはやめとけ。おいそこの。一緒に止めてくれ!」
「拙者!?え、とあの!登良殿!」
「忍。離そうか。」

表情が無である。その顔の怖さに、忍が悲鳴を上げて紅郎の後ろに隠れた。温厚な奴ほど怒らせると怖いというのだが、これほど怒りを出しながら笑うやつは登良ぐらいではないのだろうかと紅郎の思考は一瞬至った。

「兄一人ぐらい消した方が世の中健全に回るんですよ。」
「登良、落ち着け。わかったから。後で一緒に三毛縞のところに行こう。」
「いいえ、身内の問題なので大丈夫ですよ。」

仕事以外で写真を撮ってるんじゃねぇ。金払え。って言ってくるだけなので。と登良は言って、武道場から出ていった。あれは人を殺す目でござる。そうだな。珍しい組み合わせで珍しく登良を捜索するという時間が発生した。


敬人嵐

「三毛縞!貴様はまた!」
「ぴゃっ!?」
「あら、大丈夫よ登良ちゃんじゃなくてママのほうよ。」

グラウンド近所で出会った嵐と話し込んでいたら聞こえた怒鳴り声に驚いたが、それの指示語が三毛縞なこともあったので、登良が驚くわけなのだが何があったのだろうかと音のほうを見ると、生徒会役員蓮巳がそこで恐らく斑のいなくなった方向に向かって念仏のように恨み節をつぶやいている。

「登良ちゃん、見ちゃだめよ。私たちは光ちゃんを待っているのだから。」
「…お前、三毛縞の弟だな?」
「ひっ。……は、はい…」

突然に呼ばれて、登良の姿勢が伸びてそっと嵐の後ろに隠れた。事態を察したのか嵐が落ち着きなさいよねぇ。とこぼす。登良はおっかなびっくりしつつも、嵐に隠れながらどうしたんですか?兄が。と問いかけてみるとどうも校則違反の露店が見つかったらしい。それで今追い詰めたのだが逃げ垂れたらしい。

「……それは、ご愁傷さまでした……?」
「お前からも言ってやってくれ。」
「多分、俺が呼べばやってくると思いますよ?あれは所定の手順を踏めばやってきます。」
「え?そんな呪術的なものなの?」
「…電話して、ワンギリ。コールが帰ってくるので切ってかけ返して要件を伝えれば来ます。俺が困ったって伝えたら間違いなく今回も」
「思ったよりもお前たちも複雑だな。」

呆れられ、そして申し出も断られた。よかったわねぇと言われたけれども、敬人が不服そうだったので嵐と登良はさっさとこの場から離れることにした。


颯馬真

どうしてこのような組み合わせになっているのかと登良は道着に着替えながら思った。部活中に真がやってきて、ゲームのようなアクションの話になったのは覚えて言う。そこで真が拳と刀がどちらが強いかとなって鉄虎がこのマッチを組んだのだと行き着いた。

「登良くん、ごめんね。僕の不用意な一言で‼」
「大丈夫です。兄の騒動と比べたら全然軽いです。」
「比較対象そこなんだ……」

真が苦笑を浮かべるが、登良はまぁこういうのは慣れてます。真剣じゃなくて、竹刀ですし。達観した諦めのような一言をこぼし、黒い帯を締め直す。

「大丈夫です。真剣じゃないので、怪我も少ないですし。神崎先輩。始めましょう。」
「いや、始めましょう。じゃなくて。」
「大丈夫ですよ。俺達男の子。ですから。」
「あの登良殿と手合わせできるのはとても有り難い!我の鍛錬にもなる!」
「うん、全く信用できない。」

真に言い切られて登良は困ったふうに笑って、真に耳打ちをする。これに成功したら兄との交渉材料になるので必要なんです。と笑った。それをきいた真も確かにいるね。と笑った。



嵐渉

変態仮面に会ったら逃げろ。そう友也から聞いていた。逃げても逃げてもついてくる、または、先回りされる。誰かに助けを求めようとしても、その手前に日々樹渉は姿を出して妨害する。廊下を逃げるように走っていると、前に嵐がいるのに気がついた。嵐も登良の存在に気がついて手を振る。近くによっていくと、二人の間の天井から、「はい、Amazing!」と軽快に笑う渉が姿を現した。咄嗟の出現により登良は止まることができないと判断して地面をスライディングの要領で渉を交わして嵐の後ろに隠れた。

「あらどうしたの?先輩。登良ちゃんビビってるじゃない。」
「そちらの子猫さんに用事があったんですけどね。どうにも友也くんの入れ知恵かビビられてるので説得のために追いかけて来ました★」

追いかけるの範疇を超えてる。と半べそかきながらに訴えると嵐はかわいそうねぇ。こんな小さな子をいじめて。と完全に登良を擁した。

「用事だけなら追いかけなくてもいいんじゃないの?」
「でも会うとすぐに逃げられるんですよ?追いかけなくては行けないじゃないですか。」
「鳴上先輩が立ち会ってください。お願いします。助けてください……。」
「これだけ泣かれたら仕方ないじゃないねぇ。」

呆れるように肩をすくめて嵐は近くの教室をとるわね。なんて、声をかけて二人を予約をいれた空き教室まで促した。


司斑

「登良く~ん!ママだぞぉ!」

A組に司が入ろうとしていたらそんな声を聞いた。それとコンマ数秒たがわないタイミングで、教室から登良が飛び出した。思いもよらぬ勢いで司は身をひるがえそうとしたが失敗して、ぶつかった。痛いとか声を上げる間もなく登良は司を担いで――俗世に言う姫抱きという格好で廊下を走りだした。事情も理解できない司は目をぱちくりと二回ほど瞬きをしてから登良を見上げる。控え目で寡黙で表情の薄い子だとも思っていたのだが、彼の表情は今にも泣きそうな顔をしている。

「司、ごめん。何も聞かないで!!」

絶叫にも似た悲鳴を上げる姿なんて珍しさを覚えながら、そっと顔を今来た道に向けると、きらきらと笑顔をこぼす,斑が走っていた。その形相が怖くて、これは納得かもしれない。と内心思ってしまった。走りながらもまだ余裕があるのか、司を見つけて笑顔で手を振り返している。その様子が一層に底が見えない何かだとも錯覚した。

「そろそろいい加減にしないと、ママは本気で捕まれるぞお?」
「ひえ。」

声色だけで何かを思ったのだろうか、登良は司に聞こえる程度の小さな悲鳴を上げて、なおも加速した。それでもまだ引き離すことはできずに、後ろを走ってくる。振り返る余裕もない登良は階段を飛び降り距離を稼ぎ、小回りを利かせて走り去ろうとしてもそれよりも余裕をもって兄は走ってくるのだ。もう、無理。と声を上げながらも走っていると、ついに斑は登良の首根っこをつかんだ。走っても意味ないと判断した登良はおとなしく走る速度を徐々に落として最終的に足を止めた。抱えられていた司も理由を求めながらもおろしてほしいと主張すると登良は謝罪をしておろした。

「登良くん、ママに言う言葉があるんじゃないのかあ?」
「司、ごめん。ちょっと目をつぶってほしい。」
「え?」

司の返事を聞く前に、登良は兄の股の急所めがけて鋭い蹴りを一発入れた。おそらく常人の蹴りとは思えない音が一つして、斑が地面に崩れ落ちた。――かのように見えた。斑は笑い立ち上がった。

「ファウルカップはズル!!」
「ズルじゃないぞお!常日頃に備えてるだけなんだなあ!」
「司。逃げよう!」
「なにがどうなってるんです?」
「いいから早く!」

そして夢ノ咲学院を巻き込んだ大規模な鬼ごっこになるのであった。




みか奏汰

兄から出された宿題を片付けるために学院中を走り回っているとみかと出会った。両手いっぱいに本を抱えてふらふらと歩くみかに、声をかけた。

「あ。登良くんやん。」
「こんにちわ。手伝いましょうか?」
「今、忙しいんちゃうの?」
「期限には余裕があるので、これぐらいならお手伝いします。半分ください。」

えぇの?とっても助かる。とみかから半分以上を譲り受けて隣を歩く。とても申し訳なさそうにしていたが、鍛錬の一つと返答するとみかはそうならええんやけど。と遠慮がちに返事をした。今度のライブについてや校内アルバイトについて話をしていると、どこからか声が聞こえてきた。

「なんや、歌?」
「…かみさ…深海先輩の声がしますね。」

また噴水で歌っているんでしょうか?。まだこの時期ですから風邪は召されないでしょうけど。
考えるようにつぶやいて、近くの窓から中庭のほうを見ると、奏汰が歌っているのが見えた。

「ほんまやねぇ。きれいな声をしてはるね」
「そうですよね。」

二人で窓の外で歌う奏汰を見てると奏汰がこちらに気づいたようで手をひらひらして登良の名前を呼ぶ。登良は小さく頭を下げて、おん?知り合いなの?と聞かれたので、兄と深海先輩は幼馴染なので俺もたまに混ぜてもらってました。よく覚えてないんですけどね。
苦笑を浮かべてると奏汰は登良の名を呼ぶので、登良もはい!と返事をすると、一緒にぷかぷかしましょう~?なんていうお誘いであった。

「後で行きますね!」
「え?登良くん?」
「はい、影片先輩、どうしましたか?」

そのぷかぷか。ほんまにやるの!?とみかは驚きの声を上げるが、登良は居たってまじめな顔つきで、『かみさま』の言葉に拒否も何もないですよ?と登良は不思議そうな顔をする。今何といったのか。聞き間違いではなければ深海奏汰を神と称しただろうか。追求すると、登良は一瞬だけ面食らった顔をして幼馴染の先輩ですからね。と言葉を変えた。

「影片先輩にとっての斎宮先輩のようなものですから、何も考えることはありません。」
「おれにとってのお師さんか、よくわかったで。それなら早く手芸部に荷物もっていかなあかんね。」

みかもなんとなく理解して頷く。早く行こう。と促されて登良は大きく返事をした。






おまけ
斑。(ズ!時空)
弟登良からして三毛縞斑。という存在は、不可解な人間だ。暴力的存在な癖に繊細。大雑把に見えて緻密。相反する属性を持ちながらも立つ姿は異質だとも思えるし、弟というステータスがつくだけであれやこれやと望まないものまで甲斐甲斐しく世話を半ば強制的に与えられるのだ。正確には独自解釈により半ば強制的にもたらされるものであり、天災と何ら変わらないというものが登良の思うところである。
また、今日も今日とてその天災は登良のもとに降りかかる。

「やめて。離して!人拐い!」
「人拐いじゃないぞお、依頼をかけたのに散々無視されてるから強制的に連行するだけなんだなあ!」

それを人拐いと言うんだと言えども、兄には通用しない。むしろ耳があっても飾りなのかもしれない。抱え上げられて暴れども三毛縞斑はぶれることなくしっかり登良を抱え上げ我が物顔で校内を闊歩している。

「愛すべき弟くん!俺と一緒に舞台に上がろう!」
「断ります」

俺は別のユニットなんだから、リーダーに聞かないとわからない!そう突っぱねたが、そちらからも許可をもらってるから!と兄は嬉しそうに笑ってた。弟はげんなりとしてため息をついていた。




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