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GINIE ウクライナ編


「おや、どこかで見た顔ですね」
 ランプを擦って出てきた魔人はそういった。いや、本当に魔人なのだろうか。日本式のキモノを着ている。こういう精霊ってアラビアチックな格好をしているんじゃないの?
「心の声がだだ漏れですね。いかにも私はランプの魔人です。さ、願いを3つ叶えてあげましょう」
「なんでもいいの?」
「まぁ、大抵は。私の力にも限度があるので、そこまで大それたのはちょっと」
 偉そうだったり、謙遜したりと忙しい魔人だわ。
「ちょ、ちょっとまってね、今考えるわ」
 私が悩み出すと、彼はよっこらしょと日本式のかけ声を付け加えながらランプから出てきた。足までついて、まるで人間みたいだ。
「なるべくはやく決めてくださいね。世界平和とかそんな漠然としたのはダメですよ」
 彼は懐から扇子を取り出してあおぎ始める。
「え、ええええ? うーん、うーんとね」
 どどーんどどいーんと自分の胸の音が思考を妨げる。うーん、うーん、なにか無いかしら。どどいーん、どどいーん。
 はっ! そうだわ!
「ねぇ、この胸の音を消すことは出来ないかしら」
「もちろん出来ます」
 魔人はぱちんと扇子を閉じる。
「ほ、ホントに消えたの?」
 あまりの単純な動作なので、私は思わず疑って身を乗り出してしまった。ところが、少し動いても、全く音がしない。かすかな布のこすれるおとが聞こえるだけ。
「わっ! 嬉しい! これで音だけでロシアちゃんににげられなくてすむわ!」
「それは喜ばしいことです。ささ、早く次の二つを」
「そんなこと言ってもねぇ、願い事なんてそんなに無いもの」
「お金でも、何でも良いんですよ」
「だめよ、そんな事したらデフレになっちゃうわ」
「おや、意外といろいろなことを考えていらっしゃるのですね」
「そぉよぉ、だって私も一応年長者だし」
「ほう」
 なにか無いかしら。この魔人さんは急いでいるみたいなので、早く帰してあげないとかわいそうだわ。
「じゃあ、そうねぇ、まず、今晩の夕食を作ってちょうだい」
「へ? そんなんでいいんですか?」
「日本食って食べてみたかったのよ」
 私が層言うと、彼はじゃあ台所お借りしますねと言ってキッチンに引っ込んでいった。材料とかは?と尋ねると、そんなもん魔法で出します、と言った。それもそうよね。ここには日本食を作るような材料はないし。
 できあがった日本食はとても美味しかった。
「はぁー、ごちそうさまぁー!」
「では、最後の願いをどうぞ」
「そうね、私の弟と妹を幸せにしてあげてちょうだい」
「ご自分はよろしいのですか?」
「私? 私はそんなに不幸でもないわ」
 彼はきょとんとした顔をした。そしてさっきみたく扇子を閉じた。
「これでばっちりね。今日はぐっすり眠れるわ」
「それは喜ばしいことです」
「って、ああああ!」
 大事なことを思い出した。魔人は願い事を叶えた人間を魔人にしてしまうのでは無かったかしら?
「心配なさらなくても、最後に他人の幸せを願った者は魔人の身代わりになれないと決まっています」
「へ? そうなの?」
 きょとんとしていると、魔人は残念そうに頷いた。彼も身代わりを捜していたでしょうに、残念だわ。
「それと、これは私からのご褒美です」
 彼は扇子を閉じる。なにか魔法を使ったようだが、何が変わったのか私には分からなかった。
「では」
 彼がランプの中に消えると、ランプもどこかに行ってしまった。彼が居なくなった後家の中をくまなくチェックしたけれども、何も変わっていない。
「疲れたわ。牛乳でも飲みましょう」
 冷蔵庫を開けて、私は思わず飛び上がって喜んでしまった。空っぽに近かった冷蔵庫が、食材で一杯だったのだ。






ついでに何か一言いただけると、顔面の穴という穴から水分を出して大喜びすることでしょう。
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