夕暮れ時。
もうすぐその姿を完全に山の向こうに隠しそうな夕日が、僕達の帰り道を赤く染めていく。


僕の隣には、今日の買い物のことを幸せそうに笑っている、愛しい愛しい僕の恋人がいた。


「今日はありがとうございました。沖田さんが買ってくれたこのかんざし、ずっと大事にします。」

「………うん。」

「…沖田さん?どうしたんですか?どこか具合がわるいんですか?」


彼女が心配そうに僕の肩に触れようとした時、急に胸から苦しさがこみ上げて、僕は激しく咳き込んだ。


「沖田さん!!」


手を抑えながら激しく咳き込み、ついには座り込んでしまった僕のもとに駆け寄る彼女を僕は手で制した。
やがて咳が治まると、僕は、彼女をじっと見つめた。


「?」


いきなりじっと見つめられて訳がわからない、と言った様子で、彼女は僕を見つめ返す。


「キミは、僕と居て楽しい?」

「……え?」

「いっつも意地悪ばっかりして、いつも具合が悪くなった僕の看病のせいで、いきたいところにも行けないし、いつ死ぬかも分からない僕と、キミは居て楽しい?」


もう言い出すと止まらない。言いたいいだけ言った僕のことを、彼女はしばらくじっと見つめていたが、やがて、屈託の無い笑顔で笑った。


「また、二人で一緒に買い物に行きましょうね。」


沈みかけの欠けた夕日が彼女の柔らかな笑顔を照らす。その笑顔は、今の言葉が嘘ではないことを語っていた。





守ってあげたい。




たとえこの身が朽ちようとも、その笑顔が二度と壊れないように。



心から、そう思った。



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