時をかける土方家12








原田さん達が町に『妖怪』を捜しに行って二時間くらいは経っただろうか。

その間私達と沖田さんは土方さんの私室にいる。

土方さんは溜まっている書類書きをしている為、

机に向かって黙々と仕事をこなしているが、私達はする事も無くただ話をしていたのだった。



「そう言えばこの事件って最後はどうなるの?」

「はい?」

「だって君未来から来たんなら、結末をしてるんじゃない?」

「あ・・・」



そうだ。今この場所には昔の私がいる。

なら『私』が前世で体験した事になっているはず。



でも、こんな事件は過去で起こったという記憶は私には無い。



どうして?



黙って考え込んでいると、ふと私の前に誰かが座った。

はっとなり顔を上げると、さっきまで私達に背を向けて仕事をしていた土方さんが座っていたのだ。



「何か気になることでも有ったのか?」

「気になると言うか・・・解らないんです・・・・」



その言葉に土方さんと沖田さんは顔をしかめる。



「どういう事だ?」

「確かに私はそこにいる『千鶴』の生まれ変わりなんですが、こんな事件は起きてませんでした」

「起きてなかっただと?」

「はい・・・・もしかしたら・・・私がこちらの時代に来てしまったことで、過去が変わってしまっているのかもしれません」

「・・・・・過去が変われば、未来も変わるんじゃねえのか?」

「おそらくは・・・」

「もしかしてさ・・・下手をすれば来世も・・・未来の君の存在も危なくない?」

「・・・・私もそう思います・・・」

「「「「・・・・・・・」」」」



その場に痛い沈黙が落ちる。



昔見た映画にもそういうシーンがあった。

過去の両親がいる時代にタイムスリップする男の子の映画だ。

両親が結ばれないかも。と危機が訪れた時に男の子の身体が透けていき、

その子の存在が消えかけたシーンを思い出す。



もし、本当に過去が変わってきているのなら、私も消えるのだろうか?

恐怖と不安からか。私の目に涙が溜まっていくが、今泣くのは何かが違う。

ギュッと目を閉じ軽くうつむくと、ポンッと暖かい何かが私の頭に乗せられた。

恐る恐る顔を上げると、穏やかな顔でこちらを見ている土方さんがいた。



「大丈夫だ。心配するな。お前は元居た時代に帰れるさ」

「そうそう。いつまでも千鶴ちゃんが二人もいるなんて、そんな面倒な事はすぐ終るよ」

「沖田さん・・・・面倒って酷いです・・・」

「あははは!ごめんね?本当の事言って」

「うううううぅ~」



戻れるなんて根拠も何も無いが、二人が私を励ましてくれているのは解る。

しかし不安は無くならない。



未来が変わる?



もしも、平成の世で皆に会えなかったら?



もしも、歳三さんに会えなかったら?



もしも・・・・私が生まれ変わらなかったら?





ありえるかも知れない未来への影響を考えると、

怖くて怖くて仕方が無い。



その恐怖心からか、私の身体はカタカタと小さく震えだした。



「あれ?」



自分の両手で体を抱きしめ震えを抑えようとするが止まらない。

抱きしめている腕までもがカタカタと震える。

そんな私を見て、三人は黙り込んでしまう。

どうにか震えを止めようとするが抑えきれない。



「あははは・・・へ、変ですね・・・止まらない・・・」



三人を安心させようと笑ってみたが、上手く笑えたかも解らない。

ギュッと目を閉じ深呼吸をしてみるが恐怖心と不安は取り除けなかった。

先程のような沈黙が室内に訪れる。



そんな空気を変えるかのように、廊下から数名の足音が聞こえてきた。



「土方さん!例の『妖怪』つれてきたぜ?」



そう言ってスッと襖を開けたのは原田さんだった。



「ちょっと訳あってこっちに直接連れて来たぜ?」

「はぁ?こっちにかよ!!」



土方は訝しげながら原田の方を見る。

当然その場に居た他の二人も襖の方を見る。



千鶴も何とか震えを止めようとしながらも、皆と同じようにそちらを見た。

すると、原田の後ろに立っている人物がチラリと少しだけだが見えた。



「っ・・・」



その姿を見た瞬間に胸が熱くなり、

今まで我慢していた涙が嘘のように堰を切って溢れ出す。

そして何かに弾かれたかのように立ち上がった千鶴は、

原田の後に立っている人物に駆け寄ると、男の首に腕を回し勢い良く抱きついた。

すがる様に男の肩に顔を押し付けて、止まらない涙をただただ流すばかりだった。



男の方は、ドンッと体当たりの様に抱きついてきた千鶴に驚く事も無く、

ふわっと優しく包むように抱きしめの、口元に笑みを浮かべる。

そして、泣いている千鶴の背を優しく安心させるように撫でる。



「うっ・・・うっ・・・」



その男の優しい手の感触に、

さっきまでの恐怖心や不安は全て溶けて消えていったのだった。







その場にいる誰もが驚いている中、

『妖怪』と言われている男が千鶴に抱きつかれたままの格好で、

ゆっくりと顔を覆っていたサングラスを外す。



「はあ??」

「へ~」

「えっ?」

「マジかよ・・・・」

「・・・やっぱあんたか」



『妖怪』として騒がれた男は、

この場にいる誰もが良く知っている顔をしていたのだった。












お待たせしました!

やっと続きをUPしました~

皆さん毎度毎度拍手でコメントありがとうございます!



さてさて!やっと『妖怪』と呼ばれていた人物との再会をいたしました!

もう皆さんお分かりですね?

そうです!この男は、あの方ですw

良かったね~千鶴!!



次回は、この男の視点の話になりそうですね!

まだまだ続きます!

次回も良かったら読んでやってください!

うp主の薄桜鬼熱はなかなか冷めませんww



2012/11/2




ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)
お名前 URL
メッセージ
あと1000文字。お名前、URLは未記入可。