『リニスがみてる』 1 「フェイト~♪」 「フェイトちゃ~ん♪」 なんでこうなったんだろう。 フェイト・テスタロッタ人生最大の危機に直面中です。 学校帰り、校門で待ち伏せしていた姉さんのアリシアと、幼馴染みで恋人のなのはと一緒に帰る事になったのは良いんだけど。 左腕には、なのは。右腕には、アリシアが抱きついていて。 歩き辛いと言うより腕に当たる、ふにふにした物の感触が非常に辛い。 主に理性と言う意味で。 私の中で繰り広げられている欲望と理性との戦い。 頑張って理性! っと、エールを送りながら状況を打破するべく、両腕に抱きついている二人に理由を問う。 それが最悪の展開になるなんて予想出来てさえいれば、何もしなかったのに……。 「ア、アリシア。な、なのは。 あの、その、何で抱きついてるのかな?」 「ん~、お姉ちゃんの特権♪」 「恋人の特権だよ~♪」 「二人とも答えになってないよ~」 「フェイトちゃんは、なのはに抱きつかれるの嫌?」 「はぅ! そそそそんな事ないよ!!」 最上級の笑顔で答える二人。 全くもって答えになってない、項垂れる私に上目遣いで問うなのは。 不安に揺れる瞳、少し傾げた頭、えぇと、私の理性破壊する気満々ですねなのはさん? そんな事を考えながらパブロフの犬よろしく否定する私に、良かったと微笑み更に胸を押し当てるなのは。 ナニコレ、誘ってるんですかなのはさん? 食べちゃって良いんですか? 「フェイト、なのはの胸見過ぎ!」 「え?」 「ふぇ?」 「いくら恋人だからって、フェイトにはまだ早いからね!!」 「ななななに言ってるのアリシア!? わわわ私、そそそそんな事考えてないよ!?」 「ふ~ん、じゃあ何を考えてたの?」 「べ、別に何も考えてないけど……」 どうやら私は、なのはの胸を凝視してたらしい。 アリシアに言われて慌てて視線を逸らしたけど、痛い一言を貰った。 はい、ごめんなさい。でも考えるくらいは許してほしい。 というか、二人がこんな事しなければ私だってそんな事思わなかったし、なのはの胸だって凝視しなかったんだけどなぁ。 「ふぇ、ふぇいとちゃんのえっち!!」 「な、なのは!?」 「ふぇいとちゃんがそんな事考えてたなんて思わなかったよ!」 「ち、違うよ、なのは」 耳まで真っ赤に染まった顔で、そっぽを向くなのはに慌てて否定するんだけど。 私も同じくらい真っ赤になっているから説得力なんで微塵もないも同然だ。 「何が違うの? なのはの胸ずっと見てたよね? はやてちゃんの様に見てたよね?」 「うぐっ!? み、見てたのは否定出来ないけど、はやての様には見てないよ!」 「ふぅん。じゃあなのはの胸触りたいって思わなかったんだよね?」 「っ!? いや、その、それは……」 「思ったの?」 「ぅ……」 「思ったんだよね?」 「……」 「フェイトちゃん?」 「はぃ、ごめんなさい思いました」 案の定あっさりばれてしまった私に畳み掛ける様に問うなのは。 視線を泳がせる私は黙秘を決め込んでいたが、なのはの圧力であっさり白旗を上げてしまう。 仕方ないんだ、なのは怒ると怖いんだよ? 決して尻に敷かれてる訳じゃないよ? 誰にしているか分からない言い訳を心の中でするフェイト。 色々と、一杯一杯である。 「ん~、フェイトちゃんがどうしても触りたいんだったら、良いよ?」 「え?」 「だってフェイトちゃん触りたいんだよね?」 「それは、その……」 「なのはだって恋人に求められ嫌な気はしないんだよ?」 「ほ、ほんとに?」 「うん、恥ずかしいけどフェイトちゃんになら良いよ」 「なのは……」 なのはに問いただされ、しょんぼり凹んでいる私。 その様子を見たなのはは、少し赤みが引いた顔で触って良いよと言い出した。 まさかそんな事を言われるなんて夢にも思ってなくて間の抜けた返事しか返せず、口をぱくぱくさせるのが精一杯だ。 というか、なのはさん。私そこまで思ってなかったんですが。 いや、そりゃー触りたいかどうかと聞かれれば私には答えは一つしかないけど。 だからといって私達にはまだ早いと言うか、大人の階段上っちゃうよね!? 一足飛び過ぎるよね!? でも別に嫌な訳じゃなくてですね。 「お取り込み中悪いんだけど、私もいる事忘れてないよね? 誰もいないから良かったけどTPOを考えてよ? それとなのは、フェイトは私のだから!!」 アリシアの冷ややかな視線を受け我に返る私となのは。 そして釘を刺す事も忘れないアリシア、最後のは関係ないと思うんだけど。 私アリシアのなの? 「ちょっと待ってよアリシアちゃん! フェイトちゃんはわたしのだよ! それだけは譲れない!!」 「聞き捨てならないわ! フェイトは私のよ!!」 「フェイトちゃんの恋人はわたしだよ!!」 「姉の方が絆は深いんだからね!」 「姉妹じゃ付き合うことも出来ないよ!」 「女同士じゃ結婚出来ないじゃない!」 「じ、事実婚があるよ!」 「私は毎日一緒に寝てるもん!」 「ず、ずるいアリシアちゃん!!」 「姉の特権だもん♪」 私をめぐっての口論が、私を挟んで繰り広げられている。 悔しそうにずるいずるいと連呼するなのはに対して、勝ち誇った様にご機嫌なアリシア。 というか、毎日一緒に寝てるって、アリシアが私の布団に潜り込んで来るだけなんだけどなぁ。 それにミッドだったら同姓でも結婚出来るんだけど、言うと大変な事になりそうだから黙っておこう。 いつもの分かれ道、なのはと別れて、すっぽり空いた左腕がほっとした様な寂しい様な複雑な気分だけど。 取り敢えず、何とか耐えた理性を労いつつ、我が家に入る。 精神的に疲れた私は、アリシアと別れ自分の部屋に入ると鞄を投げ出し、制服のままベッドにダイブして意識を手放した。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 所変わって、プレシアの部屋。 「っとまぁ、私が見たのはこんな感じでした」 フェイトとアリシアの教育係のリニスは、朝家を出てから、帰宅するまでの二人の様子をプレシアに報告している(日課である) 「フェイト不憫だわ……」 「もぅ、プレシアにそっくり過ぎて可哀想です」 「ちょっ、ちょっと、どういう意味よリニス!?」 「言った通りの意味ですよ? モテるのに恋人もいるのに全く手を出さないヘタレなんですよ?」 「待ってリニス、それの何処が私に似てるっていうのよ!!」 「まんまじゃないですか! 知ってますか? フェイト未だにキスすらしてないんですよ!!」 「べ、別に良いじゃない! 当人同士の自由でしょ?」 「なのははして欲しいと思ってますし、ちゃんとアピールもしてるんですよ? なのに! 分かってるのに何も行動しない!! 呆れてものも言えないです!」 「言ってるじゃない!」 なのはとアリシアに挟まれた事の精神的ダメージで、部屋で爆睡してしまったフェイトを不憫に思うプレシアに対して。 溜め息をつき呆れた様にプレシアに似てヘタレで困ってると訴えるリニス。 まさかそんな事を言われるなんて思っていなかったプレシアは驚愕して反論する。 そしていつもの如く、漫才のような掛け合いで話をする二人。 楽しんでいるリニスに比べ、突っ込んでいる方のプレシアは確実に体力が奪われていく。 精神的な意味で。 「アリシアはあんなに積極的なのに、どうしてフェイトはヘタレなんでしょうか?」 「本当に酷いわ」 「本当に酷すぎます! フェイトは意気地が無さ過ぎます」 「違うわよ! 貴女の言い草が酷いって言ってるのよ」 「そんな事ありません。私は事実を言っただけです」 「少しはオブラートに包んで上げて、じゃないと可哀想だわ」 「フェイトの前では包んでますから大丈夫ですよ」 「なら、良いけど」 遠慮の欠片もなく繰り広げられている、フェイトが如何にヘタレなのかという報告に、不憫になってくるプレシア。 アリシアが積極的なだけに余計に、フェイトがヘタレに見えてしまうのだけど。 それがリニスが熱弁をふるう事に繋がるのだが。 とはいえフェイト大好きなリニスは当人の前では言わないので、一向にヘタレは改善出来ずなんの為の教育係なのか分からなくなる。 この後、アリシアが如何に積極的だったかを熱弁するリニスなのだがそれはまた別のお話で。 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 あとがき 完全にパラレル設定。 ぐだぐだですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです^^ 【2012年2月3日4日】著 |
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