【LIVEの余波】




 

「あーあ、やっぱり」

 

移動の合間、置かれてたライヴ記事が載ってるというアイドル誌をめくった俺は目当てのページを探し当て、写真を確認し思わずつぶやいた。 
今回は大丈夫だと思ったんだけどなぁ。

 

「また叱られんのかな、あのひと。ジャニーさんに」

 

『WE ARE TOKIO!!!!!』

ライヴラスト、さっきまでの挨拶と違い、マイクを通さずリィダァが叫んだ声が静まった武道館に響く。その一瞬を切り取った写真。
みんな満面の笑みで写ってる中あのひとだけは…。


弦やホーンそれにスタッフの渾身のサポート、メンバーみんなの息遣い、客席から降り注ぐ『ハッピーバースデー』、誕生日のケーキ、17…18年やってきて初めて迎えた記念すべきデビュー日当日、通算53度目の武道館ライヴ。

目を閉じるだけで鮮明に思い出せる。あの舞台は俺たちのためのもんだったんだから当たり前だけど。

けど。

「懲りないひとだねぇ…てか忘れちゃってんのか?去年社長にいわれたこと。もうおじいちゃんだから。去年のことだしな~」

運転席からのマネの視線にいつものように返しながら別のことを考える。





『茂!何、この写真。キミ、プロでしょ?ユー、何年この仕事やってんの!』

去年のツアー終わり。揃って事務所に顔を出したとき、苦笑まじりだけれど真剣なダメ出しを食らったリィダァ。

オーディションじゃなく直接の面接で選び、なんだかんだ目をかけてきた相手だからジャニーさんはリィダァに対して微塵も容赦がない。

『プロなら顔を撮られなさい。顎を見て誰が喜ぶって?』


感無量って笑顔の俺ら4人に対してリィダァは天を仰ぐように上を向いちゃって、どのメディアの写真も写ってるのはほぼ顎だけ、社長の言い分は理解できなくもない。

だけど、あのひとの気持ちもわかるんだよな。

ライヴ最中、どこでハケてどの曲でホーンが入って…そんな段取りだけは指示も出るし把握してる。けど、それ以外はすべて意識から遠くなる、あの強烈な光の下では。
それほど俺らの本拠地であるあの空間でのライヴはやはり特別だ。

たぶん、全部吹っ飛んじまうんだろうな。普段は誰よりも段取りカンペキなリィダァだからこそ『やりきった』って高揚感そして安堵感に。

あん時、しょんぼりとしたリィダァの肩をドンマイと兄ぃが包み込むように抱いて。だから俺も「次んときは声かけるよ、リィダァ。『アゴ、アゴ』って」苦笑しながらそう言って背中を叩いた。





「やべ、忘れてた!」

そこまで思い出して青くなる。声かけるよ、なんて言っときながら今の今までまったくすっかり忘れてたよ…今回ずっと立ち位置隣だったのに。

クルマが減速して地下駐に入る。ああ、もう着いたのか。
いきなり挙動不審になった俺をいつものこととスルーするスキルを身につけたマネに感謝しつつクルマを降りた。

これからしばらくぶりにメンバーが揃う収録だからどうせこの話も出るだろう。

「しょうがねぇなぁ、一緒に怒られてやるか」

そうごちながら俺は今日もがやがやうるさいに違いない楽屋の扉を目指してエレベーターのボタンをおした。

*****

見事にUP時期を外した小話。ライヴ後ひと月くらい設定(汗)
PLUSツアーも、1718もWE ARE TOKIO!!の時見事に上を向いてしまってましたね、茂さん。今回のアイドル誌、見かけたものはすべて上を向いてしまって顔の見えないものばかり(だと思う)でした。
普段人一倍プロ意識の強い方だけにほんとに、やりきった安堵感の発露なんだろうな…という思いを松さんに語っていただきました。
                                             20121121UP



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