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以下、「A birdcage~トリカゴノナカデ」完結後、拍手お礼SS 柊史編です。
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『la couverture 1』

柊史視点、パリで暮らし始めた二人の数ヵ月後です。









  

             「la couverture 1」



             休日のゆったりした朝の眠りを貪る僕は、腕の中にある彼女の温もりを確かめてから、
            眠い目をこすった。

             高い天井のすぐ下から伸びる大きな窓にかかった、白く長いカーテンの間から、明るい
            光が部屋へと入り込んでいた。
             ヘリンボーンに組まれた飴色の床板に視線を落とすと、彼女がお気に入りの色鮮やかな
            ルームシューズが置かれている。

             壁に取り付けた細長い棚の上には、少しずつ集めた写真立てに二人の姿が飾られている。
            以前友人からもらったカードと、彼女が花屋で買った小さなブーケも並んだ。
             白い壁は何度も塗り替えられたせいか、ところどころが剥げ落ち、このアパルトマンの長い
            歴史を感じさせていた。

             手を伸ばし、チェストの上に置いておいた小さな箱の蓋を開け、美しいリングを取り出す。
            眠る陶子の左手を取り、薬指にそっとはめた。

            「……柊、史?」
             瞼を閉じたまま僕の名を呼ぶ陶子の額に口付けた。
            「まだ寝てていいよ」
            「……ここにいて」

             伸ばした薬指には、僕の指にもはめられた同じものが光っている。その上には、今僕が重
            ね付けした、薔薇の施されたアンティークの銀細工。彼女の華奢な指によく似合っていた。
             上手く選べた自分を誇りに思いながら、陶子の手を取り身体ごと腕の中に収め、滑らかな
            長い髪を何度も撫でた。

             君が喜んでくれたら、ご褒美に何をねだろうか。

             目が覚めて気付いてくれた時の顔を思い浮かべ、毛布の中で瞼を閉じ、彼女と共に
            再び幸せな眠りへと落ちていった。









            
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