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「恋人達を見守る10題」より、『01:あ、まただ』です♪
――まただ。
突如襲ってきた感覚に、思わず反射的に舌を打つ。
「どうした、荷が重いか?」
俺の舌打ちを違う意味に捉えたのだろう、目の前に踏ん反り返る生臭坊主が聞いてくる。
けど、そいつはお門違いって奴だ。
だが原因をそのまま伝える気にもならず、冗談半分、本音半分で返す。
「いんや。扱う盗品の規模にしちゃ、ちょっとばかし報酬がケチだな、と思っただけだぜ?」
「元の持ち主は盗難の被害者だ。価値のある仏像・宝物を安置していても、大概は維持管理で手一杯の貧乏寺が殆どだからな、経費全額持たせるわけにいかねぇだろうが。
となると、必要経費以外は自ずと出す額に制限が掛かるんだよ」
ああいえばこう言う、というのがぴったりな、
その言葉の裏に『そんな事も解らんのか』と聞こえるような気がしてカチンときたものだから、ついこちらもムキになる。
「しゃーねーな。まあ普段の収入は俺様の黄金の指で稼げてるわけだし?破格の副収入ってことで我慢しといてやるよ。寺のお偉いさんでも、動かせる金は僅かだもんな?」
当てこするように言えば、予想通り、奴さんも俺の言葉に反応した。
デフォルトでもガンを飛ばしているかのような仏頂面が更に目を眇めると、これはもう喧嘩を売ってる以外の何ものでもない。
「ハ、黄金の指が聞いて呆れる。運と小手先のイカサマで相手の金をちょろまかす、不定収入の単なる博徒だろうが」
「何とでも言いやがれ。こちとら10年近くこれで食ってきたんだ、風呂屋の桶(湯ばっかり=言うばっかり)などっかのハゲに言われる筋合いはねぇな」
「何・・・」
「2人共、いい加減にして下さい!」
一触即発の状態に割って入ったのは、八戒。
その言葉に、目の前のクソ坊主は口から出かけていた罵詈雑言を引っ込める。
その様子に、またしても得体の知れない感覚が襲ってきたが、今度はどうにか舌打ちはこらえた。
ここのところ、この面子でいると、ふとした拍子に覚える違和感というか、言葉に出来ないような奇妙な感覚。
1人でいても何ともないので、悪意害意――流石に無茶していた頃は浴びる機会も多かったが、最近はめっきり少なくなった――の類ではないのだろう。
ただ、ヒトの割にはそこそこ修羅場を経験してきたらしい三蔵はもとより、制御装置が必要な身の八戒も何も感じていないというのが、腑に落ちないといえば腑に落ちない。
そんな俺の心の内も知らず、八戒は小学生を叱る教師のようにとうとうと俺たちを諭す。
「悟浄、僕はこの依頼だけでなく、悟空の家庭教師などで今後も三蔵にはお世話になる身なんです。事を荒立てると、僕の方にまで影響が及ぶんですから、その辺りを解って下さい」
「・・・あーはいはい」
「三蔵も。一応この人なりに、居候の僕の食い扶持まで稼ぐという気持ちでいてくれているんです。確かに褒められた職種とは言い難いですが、余りきつくは言わないで下さい」
「・・・・・・チッ」
不承不承と大書した面で舌を打つのを見て、またも苛立ちが募るが、本気で怒らせると怖いのはこのクソ坊主ではなく、隣に立つ線の細い同居人だ。
取り敢えず、休戦――というよりは冷戦状態ということにして、主とよく似て無駄なものの一切ない殺風景な執務室を後にした。
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お題配布サイト『追憶の苑』様より「恋人達を見守る10題」です。
といってもまだ恋人になっていないんですが(爆)。
時系列としては、ジープが八戒さんのペットになった直後くらいでしょうか。
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